交通事故で頸椎(けいつい)捻挫と診断された場合に知っていきたい4つのこと

2021年07月05日
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交通事故で頸椎(けいつい)捻挫と診断された場合に知っていきたい4つのこと

立川市の交通事故件数は平成28年以降、連続して前年よりも増加していましたが、令和元年は682件と平成30年よりも減少しました。
交通事故件数が減少しているといっても、誰がいつ交通事故の被害に遭ってもおかしくないということには変わりありません。自分で車を運転する場合はもちろん、誰かの車に同乗している場合でも事故に遭ってしまうことがあります。

交通事故の被害に遭った場合に、もっとも多いケガとして頸椎(けいつい)捻挫があります。一般的には「むち打ち損傷」などとも呼ばれています。整形外科で頸椎捻挫と診断された場合、継続して整形外科に通院するのが基本ですが、整骨院や鍼灸(しんきゅう)院に行ってもいいのか、どのくらい慰謝料は請求できるのかなど、心配なことが多いでしょう。

そこで、今回は、交通事故の被害に遭って、頸椎捻挫と診断された方が知っておきたいことについて立川オフィスの弁護士が解説していきます。

1、頸椎捻挫とは?

頸椎捻挫とは、追突、衝突あるいは急停止などにより、頭が振り子のように前後に動き、頸椎の筋肉や靱帯(じんたい)、神経などが損傷を受けた状態をいいます。首がむちのようにしなることによって生じる症状であることから、「むちうち損傷」あるいは単に「むちうち」と呼ばれることもあります。

頸椎捻挫の代表的な症状としては、肩こり、頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気、目の疲れ、手のしびれ、集中力がなくなるなどがあります。症状は、数週間で改善するものから数か月あるいは数年経っても治らないというケースもあります。

2、治療で通院するとき知っておきたいこと

  1. (1)医療機関で検査を受ける

    交通事故によって頸椎捻挫(むちうち損傷)になってしまった方が適切な賠償金を受け取るためには、前提として、医師から頸椎捻挫である旨の診断を受け、診断書を作成してもらうことが大切です

    診断書を作成できるのは医師だけですので、整骨院・接骨院ではなく医療機関である整形外科に行く必要があります。

    この際、事故後できるだけすみやかに受診することが大切です。事故から長期間経過してからの受診をすると、保険会社などに本当に交通事故が原因の頸椎捻挫(むちうち損傷)なのかと疑われることがあります。場合によっては、交通事故と頸椎捻挫(むちうち損傷)との間の因果関係を否定され、治療費すら支払われないということもあります。

    そのため、事故後遅くとも1週間以内に整形外科を受診して、医師から頸椎捻挫(むちうち損傷)である旨の診断をしてもらうことが非常に重要です

  2. (2)整骨院・接骨院、鍼灸院

    医師による治療行為であれば、基本的には症状固定(これ以上治療を続けても、良くも悪くもならない状態)までの治療費が損害として認められることとなります

    他方で、整骨院・接骨院、鍼灸院の施術の場合、施術費が損害として認められるかどうかは交通事故が原因の症状に対して必要かつ相当な治療といえるか否かによって判断されることとなります。

    そのため、医師の指示による整骨院・接骨院、鍼灸院の施術であれば、必要性・相当性の裏付けがあるものとして、施術費を損害として認めてもらいやすくなります。

    具体的には、医師に「整骨院での治療を有効と認める」というような許可書あるいは指示書をもらうとよいでしょう。最低限、医師に整骨院・接骨院、鍼灸院での治療をしてよいかどうかの確認はとるべきです。

3、頸椎捻挫(むちうち損傷)に関する慰謝料は主に2種類

慰謝料とは、精神的苦痛に対する金銭的賠償のことです。

交通事故で頸椎捻挫(むちうち損傷)となったとき、加害者に請求できるお金としては、治療費、通院費、休業損害、入通院慰謝料、(後遺障害等級が認定された場合には)後遺障害慰謝料及び逸失利益などがありますが、そのうちの慰謝料について説明します。

  1. (1)入通院慰謝料

    交通事故による頸椎捻挫(むちうち損傷)で医療機関に通院や入院をした場合には、入通院慰謝料の請求ができます。金額は、入通院期間を基礎に算定されます。入通院期間は、原則として交通事故日から症状固定までの期間になります。

    入通院慰謝料は、入通院の期間や日数によって決まり、基本的には、入通院期間に比例して慰謝料は高額になります

  2. (2)後遺障害慰謝料

    治療を続けても事故前の状態に完全に回復することがなく症状が残ってしまう場合があります。その症状のことを後遺障害・後遺症といいます。

    後遺障害が残ってしまったものと認定された場合には、後遺障害が残ってしまったことによる苦痛などに対して慰謝料が支払われます。この慰謝料のことを後遺障害慰謝料といいます。

    後遺障害は、その状態や程度によって14段階の等級に分けられ、その等級に応じて、支払われるべき後遺障害慰謝料額が算定されます

4、慰謝料算定の3つの基準と弁護士に依頼すべき理由

入通院慰謝料については実務上、3つの算定基準で計算されています。どの算定基準で計算するかによって慰謝料の額が大きく異なってきます。

  1. (1)自賠責基準

    自賠責基準とは、強制保険である自賠責保険による算定基準です。自賠責保険は、交通事故被害者が最低限の補償を受けとれることを目的とした保険です。したがって、自賠責基準により算定された金額は3つの基準の中でもっとも低いものとなります

    入通院慰謝料は基本的に1日あたり4300円(2020年4月1日以降の事故の場合)で計算されます。

    ①実治療日数×2、②治療期間、①②の内少ない方に4300円をかけた金額、が入通院慰謝料額となります。しかも、治療費を含めて支払限度額は120万円までとなっています。

  2. (2)任意保険基準

    次に任意保険基準があります。加害者が任意保険に加入している場合、各保険会社の基準によって算定されるものが任意保険基準です。その基準は一般に公開されていないので、慰謝料額がいくらになるかはっきりわかりませんが、自賠責基準よりは高く、次に説明する裁判所基準(弁護士基準)よりは、はるかに低いのが一般的です。

  3. (3)裁判所基準(弁護士基準)

    裁判所基準(弁護士基準)は、過去の交通事故の裁判で認められてきた金額をベースとして算定された基準です。3つの算定基準のなかではもっとも高額となる算定基準です。弁護士に依頼すれば、この算定基準で計算をして請求することになります

    このように、慰謝料の算定方法には3種類あり、裁判所基準(弁護士基準)で請求するのがもっとも高額になります。

    もっとも、被害者自身で裁判所基準(弁護士基準)での金額交渉をしても、最終的に自身で裁判を起こすことが難しいため、保険会社は取り合ってくれないのが通常です。他方で、弁護士であれば、示談ができなければ最終的に裁判を起こせるということが前提にあるため、保険会社も裁判所基準(弁護士基準)を前提とした交渉に応じます

    この点が、弁護士に依頼する大きなメリットの一つといえるでしょう。

5、まとめ

今回は、交通事故で頸椎捻挫と診断された場合、被害者が知っておきたいことや慰謝料の種類と3つの算定基準について解説いたしました。

交通事故は、身体的にも精神的にも大きなダメージを受けます。そのようなとき、加害者(保険会社)と交渉するのは、非常につらいものでしょう。だからといって交渉しなければ、最低限の自賠責保険あるいは本来支払われるべき金額よりもはるかに低い任意保険基準で慰謝料額が算定されてしまいます。

ベリーベスト法律事務所 立川オフィスでは、交通事故処理について経験豊富な弁護士が在籍しております。親身になって対応いたしますので、お困りの際はお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています