大麻所持で逮捕?! 初犯でも前科はつく? 逮捕後の流れや量刑を解説
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最近は、SNSなどの発展で、軽い気持ちで大麻に手を出してしまう、というケースは少なくありません。
令和3年4月に発表された「令和2年における組織犯罪の情勢」によると、令和2年の大麻事犯検挙人員は5034人で過去最多となりました。大麻事犯の検挙人数は平成26年以降上昇しており、特に若年層の検挙が増加しています。人口10万人当たりの検挙人員を見ても、20歳未満は12.9人、20~29歳が20.1人と、他の年齢層と比較して大きい数字になっています。
自分自身が犯罪に巻き込まれるおそれはもちろん、自分の知らないうちに家族が犯罪に関わっていたなどということがあっても不思議ではありません。
そこで、この記事では、大麻の所持等により逮捕された場合、どうなってしまうのか、どのような刑罰が科されるのか、ご家族には何ができるのかなど、解説していきます。
1、どのような行為が処罰の対象か
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(1)そもそも大麻とは何か
大麻取締法にいう「大麻」とは何を指すのでしょうか? 大麻草の種子は鳥の餌としてもよく使われており、これを所持していた場合にも犯罪になってしまうのでしょうか?
大麻に関する犯罪について規定しているのが、「大麻取締法」という法律です。
大麻取締法では、「この法律で『大麻』とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。」と定められています。
そのため、例えば、大麻草の茎や、大麻草の種子を持っていただけでは、同法により処罰されることはないということです。 -
(2)大麻取締法違反に該当する行為
それでは、大麻に関してどのような行為が犯罪として処罰の対象とされるのでしょうか。
大麻取締法では、大きく以下の行為が禁止されています。- 所持
- 譲り渡し・譲り受け
- 栽培
- 輸出入
大麻の使用自体は明文で禁じられていませんが、使用するためには所持することが前提となるため、使用した場合も事実上処罰の対象となります。
なお、犯罪として処罰するには、「大麻」であること(あるかもしれないこと)の認識が必要です。例えば、合法ハーブであると思って所持しており、大麻であるかもしれないとの認識さえ持ちようもない状況であった場合などは、犯罪(かもしれないこと)をしている認識がないため、刑罰に処すことはできません。
2、どのような刑罰が科されるのか
●栽培・輸出入
大麻取締法第24条は、
「大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、七年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金に処する。」
と定めています。
営利目的、すなわち、財産上の利益を得る目的で栽培や輸出入をした場合は、そうでない場合と比べて重い刑罰が定められています。
●所持・譲り受け・譲り渡し
大麻取締法第25条は、
「大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。」
と定めています。
こちらも営利目的の場合はそうでない場合と比べて重い刑罰が定められています。
なお、大麻は麻薬特例法(「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」)の規制対象ともなります。
3、大麻取締法違反で逮捕されてしまったらどうなるのか
上記に述べたように、大麻の所持などは犯罪行為です。これが発覚した場合、逮捕される可能性があります。
逮捕されると、基本的に3日間、警察の留置場に身体を拘束されて、警察や検察官の取調べを受けます。その後、さらに最大で20日間、身体を引き続き拘束されて(この引き続く拘束の手続きを「勾留」といいます)取り調べなどの捜査がされます。
大麻など薬物に関する事件は、大麻の入手ルートや裏組織を暴くため、また薬物仲間との接触、再犯、証拠隠滅を防ぐことを目的に身体拘束が長引くケースがあります。また、その間、家族や友人との面会も禁止されることが多いです。
「勾留」の期間終了までに、検察官が起訴するか、不起訴にするかを決定します。
大麻を所持していて、犯行を認めている場合でも、検察官が所持量や前科前歴の有無、更生の可能性等一切の事情を考慮して、不起訴処分、すなわち、裁判にかけることなく終了するというケースもあります。
他方で、起訴されると、裁判にかけられます。裁判員裁判になる場合もあります。
裁判で証拠調べや尋問を経て、判決が下されることになります。
どのくらいの刑になるかは、初犯か否か、使用頻度、所持量、依存の程度、再犯可能性などを考慮して判断されます。これらを考慮した上、社会生活を続けながらの更生が期待できると判断された場合、執行猶予がつけられます。
4、弁護士に相談したほうがよい理由
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(1)面会禁止解除や身柄解放
上記に述べたとおり、大麻の所持等で逮捕された場合、長い間身体を拘束されるおそれがあります。
そこで、できるだけ早く釈放されご自宅に帰り、普段通りの生活を送らせてあげることが重要になります。そのためには、法律の専門家である弁護士に一刻も早く相談することが大切です。
逮捕されると、その後最大23日間もの間身体を拘束される可能性があります、また、起訴後も身体拘束は続くことになります。
学校や職場を長期に渡り休むことになりかねません。最悪の場合、退学や解雇などにつながる影響が出てしまうことになりかねません。
弁護士に相談することにより、弁護士が早い段階で身柄解放のための活動を開始することが可能になります。
また、薬物犯罪は、組織犯罪であることも多く、身体拘束されると、その間に家族や友人との面会も禁止されることがあります。
他方で、弁護士との面会を禁止することはできませんので、弁護士が面会することで、家族に自分の状態を知らせて安心させることができます。また、学校や職場に対して必要な連絡を弁護士や弁護士から事情を知らされた家族を通じてすることができます。
さらに、家族との面会を禁止する必要性がないとの申し入れをすることにより、家族との面会禁止が解除されることもあります。 -
(2)不起訴処分のための活動
大麻所持等により取り調べられても、必ず起訴されるわけではありません。
大麻を所持していて、犯行を認めている場合でも、検察官が所持量や前科前歴の有無、更生の可能性等一切の事情を考慮して、不起訴処分、すなわち、裁判にかけることなく終了するというケースもあります。裁判にかけられることなく終了すれば、刑罰に処せられることはないため、「前科」がつくことはありません。
早い段階で弁護士に相談することにより、弁護士は不起訴処分に向けて活動することができます。 -
(3)情状弁護
もしも起訴されてしまった場合、弁護士は、再犯の可能性がないことや、社会内での更生が適切であること、及びそれを裏付ける事情や証拠を裁判において主張し、裁判官にアピールし、できる限り量刑を軽くし、執行猶予が付くように活動します。
5、まとめ
自分自身、又は家族が大麻所持等で逮捕された場合、焦らずに、早い段階で弁護士に相談するようにしましょう。身柄解放や家族との面会、不起訴処分、できる限り軽い量刑にすること等、様々な場面であなたの力になります。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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