再審と控訴の違いとは? 必要な要件について
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警視庁のデータによると、令和2年中の東京都内における刑法犯の認知件数は8万2764件で、そのうち検挙件数は3万3521件でした。
刑事裁判の判決に対して納得がいかない場合、被告人と検察官には「控訴」をする権利が認められています。その一方で、「再審」という手続きもあります。ふたつの語句から似たような行為をイメージされる方もいるでしょう。
では具体的に、再審と控訴ではどのような違いがあるのでしょうか? 今回は、再審と控訴の違いや、それぞれの要件などについて、ベリーベスト法律事務所 立川オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「刑法犯の認知・検挙状況(年次別)」(警視庁))
1、再審請求と控訴の違いは?
再審請求と控訴は、いずれも裁判の判決に対する異議申立てである点で共通しています。
一方、再審請求と控訴は、判決がすでに確定しているか、それとも未確定かという点で異なります。
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(1)再審請求|確定判決に対する異議申立て
再審請求とは、確定判決に対する異議申立てのことです。
刑事裁判の場合は、有罪の確定判決に対してのみ、再審請求が認められています(刑事訴訟法第435条、第436条)。
確定判決の結論を覆そうとするわけですから、再審請求の要件は非常に厳しく設定されています(後述)。再審請求が受理された場合、原判決をした裁判所が再度審理を行うことになります(同法第438条)。 -
(2)控訴|未確定の一審判決に対する異議申立て
控訴とは、地方裁判所または簡易裁判所がした第一審の判決に対する異議申立てのことです(刑事訴訟法第372条)。
控訴には控訴期間(後述)が設定されており、この期間内に適法な控訴が行われなければ、第一審の判決が確定します。
つまり、判決内容に不服があれば期間内に申立てをする必要があります。適法な控訴を行えば、刑事裁判の判決はまだ確定せず、再び審理が行われます。
なお、刑事裁判の場合、第一審が地方裁判所でも簡易裁判所でも、控訴審は常に高等裁判所で行われることになります(裁判所法第16条第1項)。
2、再審や控訴と似ているその他の制度|上告・抗告・上訴
再審や控訴と混同しやすい、似たような内容の用語として「上告」「抗告」「上訴」などがあります。これらはいずれも、裁判所の判断に対する不服申立てである点は共通していますが、意味する内容は互いに異なっています。
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(1)裁判所の判断の形式
上告や抗告などを詳しく知る前に、裁判所の判断の形式について改めて確認しておきましょう。
裁判所の判断は、以下の3種類の形式があります。- 判決……弁護人と検事の口頭弁論の後、裁判所がおこなう裁判。
- 決定……口頭弁論は必要なく、裁判所が行う判決以外の裁判。
- 命令……裁判官が行う裁判。令状の発布や起訴前の勾留などの処分が主
上記を踏まえ、各用語が法的にどのような意味を有するのか、整理・確認していきましょう。
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(2)上告|未確定の高裁判決に対する異議申立て
刑事裁判における上告とは、高等裁判所がした第一審または第二審の「判決」について最高裁判所に対して行う不服申し立てのことです(刑事訴訟法第405条)。
上告は、最高裁判所に対して行います(裁判所法第7条第1号)。通常の刑事事件であれば、高等裁判所は第二審となりますので、上告審は第三審となります。
ただし、一部の刑事事件については、法律の規定により高等裁判所が第一審とされており、この場合は上告審が第二審となります。
刑事裁判のうち、第一審が高等裁判所となるのは、内乱・内乱予備・内乱陰謀・内乱等幇助の罪が問題になる場合です(裁判所法第16条第4号)。 -
(3)抗告|決定に対する異議申立て
刑事裁判における抗告とは、裁判所のした「決定」について、より上級の裁判所に対してする不服申し立てのことです(刑事訴訟法第419条参照)。
刑事裁判において認められている抗告は、「通常抗告」「即時抗告」「特別抗告」の3種類です。高等裁判所の決定に対しては抗告ができませんが(同法第428条第1項)、同一の高等裁判所に異議申立てを行うことができる場合もあります(同法第428条2項)。① 通常抗告
抗告の原則的な形態です。即時抗告をすることができる旨の規定がある場合は、行うことができません(同法419条)。
通常抗告の期限は特に設けられておらず、原則としていつでも行うことができます(同法第421条)。抗告裁判所となるのは、高等裁判所です(裁判所法第16条第2号)。
通常抗告には、裁判の執行を停止する効力はありません(同法第424条第1項)裁判所の決定で裁判の執行を停止することはできます。
② 即時抗告
刑事訴訟法等に規定がある場合に限り行うことができます。
即時抗告の提起期間は、裁判所による決定がなされてから3日間です(同法第422条)。
即時抗告についても、高等裁判所が抗告裁判所となります。
即時抗告期間が経過するまでの間、または適法な即時抗告の申立てがあった場合には、裁判の執行が停止されます(同法第425条)。
③ 特別抗告
刑事訴訟法の規定により不服申立てができない決定・命令に対しても、上告事由があることを理由とする場合には、最高裁判所に対する特別抗告が認められます(同法第433条第1項)。
特別抗告の提起期間は、裁判所による決定・命令がなされてから5日間です(同条第2項)。
なお、裁判所の決定に対して行う抗告に対して、裁判官の命令(起訴前勾留など)に対する異議申立ては「準抗告」と呼ばれています(同法第429条第1項)。
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(4)上訴|控訴・上告・抗告の総称
「上訴」とは、控訴・上告・抗告を総称して意味します。
刑事訴訟法では、第三編の表題が「上訴」とされており、その下に「第一章 通則」「第二章 控訴」「第三章 上告」「第四章 抗告」と章立てが行われています。
このように、上訴は控訴・上告・抗告の上位概念に当たりますが、実務上は、控訴・上告・抗告のそれぞれの要件・手続きを踏まえて対応することが必要です。
3、再審請求・控訴を行うための要件は?
刑事訴訟法上、再審請求と控訴は、以下の要件を満たす場合に行うことができます。
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(1)再審請求の要件
再審は、確定判決の効力を覆すものであるため、再審請求の要件は厳しく設定されています。
具体的な再審請求の要件は、以下のとおりです(刑事訴訟法第435条、第436条)。<有罪の言渡しをした確定判決に対する再審請求の要件>
以下のいずれかを満たすこと- ① 原判決の証拠となった証拠書類または証拠物が、確定判決により偽造または変造であったことが証明されたとき
- ② 原判決の証拠となった証言・鑑定・通訳・翻訳が、確定判決により虚偽であったことが証明されたとき
- ③ 有罪の言渡しを受けた者に対する虚偽告訴について、犯人の有罪が確定したとき
- ④ 原判決の証拠となった裁判が、確定裁判により変更されたとき
- ⑤ 特許権・実用新案権・意匠権・商標権の侵害により有罪の言渡しをした事件について、当該権利の無効審決が確定したとき、または無効判決があったとき
- ⑥ 無罪・免訴・刑の免除・より軽い罪を認めるべき明らかな証拠を新たに発見したとき
- ⑦ 原判決または証拠書類の作成等に関与した裁判官・検察官・検察事務官・司法警察職員が、被告事件について汚職を犯したことが確定判決により証明されたとき
<控訴または上告を棄却した確定判決に対する再審請求の要件>
以下のいずれかを満たすこと- ① 原判決の証拠となった証拠書類または証拠物が、確定判決により偽造または変造であったことが証明されたとき
- ② 原判決の証拠となった証言・鑑定・通訳・翻訳が、確定判決により虚偽であったことが証明されたとき
- ③ 原判決または証拠書類の作成に関与した裁判官が、被告事件について汚職を犯したことが確定判決により証明されたとき
(2)控訴の要件
刑事裁判における控訴は、以下のいずれかの事由があることを理由とする場合に限り行うことができます(刑事訴訟法第384条)。
- ① 法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと
- ② 法令により判決に関与できない裁判官が判決に関与したこと
- ③ 審判の公開に関する規定に違反したこと
- ④ 不法に管轄または管轄違いを認めたこと
- ⑤ 不法に公訴を受理し、または公訴を棄却したこと
- ⑥ 審判の請求を受けた事件について判決をせず、または審判の請求を受けない事件について判決をしたこと
- ⑦ 判決に理由を付さず、または理由に食い違いがあること
- ⑧ 訴訟手続きに法令の違反があって、その違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであること
- ⑨ 法令の適用に誤りがあって、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであること
- ⑩ 刑の量定が不当であること
- ⑪ 事実の誤認があって、その誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであること
- ⑫ 再審事由があること
- ⑬ 判決があった後に、刑の廃止・変更・大赦があったこと
さらに、控訴を行うためには、判決の言渡ししから14日以内に、第一審の裁判所に対して控訴申立書を提出しなければなりません(同法第373条、第374条)。
4、刑事事件の弁護活動は弁護士にご依頼を
刑事事件を起こした疑いをかけられると、捜査機関によって身柄を拘束されたり、刑事裁判によって有罪判決を受けたりするリスクを負います。
困難な状況下において、刑事手続きからの早期解放を目指すためには、早めに弁護士へ依頼することが肝要です。
弁護士は、不起訴に向けた弁護活動や公判手続きへの準備を通じて、依頼者やご家族を1日も早く、刑事手続きから解放することを目指します。ご自身やご家族が刑事事件の被疑者・被告人となった場合には、速やかに弁護士までご相談ください。
5、まとめ
再審請求は確定判決、控訴は未確定の第一審判決に対する異議申立てである点が異なります。再審請求の要件は厳しいため、刑事裁判の判決に不服がある場合には、判決の言渡しし後速やかに控訴を行いましょう。
刑事事件の弁護活動は一刻を争うケースがほとんどです。ベリーベスト法律事務所 立川オフィスでは、依頼者やご家族を1日も早く、刑事手続きから解放できるように尽力いたします。まずは、お早めに当事務所までご連絡ください。
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