保険金詐欺が発覚したらどうなる? 逮捕された場合の流れから量刑
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保険金詐欺とは、交通事故や盗難被害、火災・地震による建物被害などにあったと見せかけて保険会社から保険金をだまし取る詐欺の手口を指します。一般社団法人日本損害保険協会では、不審な保険金請求への対応は警察とも連携し、各社の保険調査員が調査を実施していることなどから、毎年、保険金詐欺行為による逮捕者が出ているのです。
それでは、保険金詐欺や不正請求がばれてしまったとき、逮捕されてしまうのか、どのような処罰を受けるのか、ご存じでしょうか。
本コラムではベリーベスト法律事務所 立川オフィスの弁護士が、保険金詐欺で逮捕されるケース、逮捕後の流れ、そして量刑などをわかりやすく解説します。
1、保険金詐欺とは? 詐欺罪が成立するための条件とは?
保険金詐欺罪という罪はありません。保険金詐欺は、刑法第246条に規定されている「詐欺罪」に該当します。
保険金詐欺として逮捕される可能性がある行為は以下の通りです。
自動車保険には、車両保険や人身傷害保険といった保険が用意されており、契約者が任意で加入することができます。車両保険に加入している場合は、自損事故で車が壊れた場合、修理をしなくても、保険会社から修理代相当額を受け取ることが可能です。
車が大破してしまった場合は、全損扱いとなり、保険会社から車両保険を契約する際に設定した車両保険金額全額を受け取ることができます。
車両保険を請求するために、警察の届け出を必須としていない保険会社は多いでしょう。しかし、古い車を購入して塀等に衝突させるといった事故を偽装した上で、保険会社に保険金を請求する行為は犯罪です。
また、車両保険は、車両が盗難された場合も保険会社から保険金が全額支払われます。したがって、保険会社に対して盗難を偽装して保険金を受け取ると、詐欺罪が成立する可能性があります。
●偽装の自損事故で人身傷害保険や搭乗者傷害保険を請求
前述した車両保険と同様に、人身傷害保険や搭乗者傷害保険に加入していると、自損事故でも運転者や同乗者がケガをした場合、保険会社に対して保険金を請求することができます。これらの保険を利用して、自損事故を偽装し、病院に通院して通院費用や通院交通費、慰謝料などを保険会社から受け取ると、詐欺罪が成立する可能性が高いです。
搭乗者傷害保険は、ケガの度合いや治療日数に応じて定額の保険金を受け取るものですが、人身傷害保険は、治療費の実費だけでなく慰謝料や休業損害も支払われるので、多額の保険金を受け取っているケースもあります。
●対物・対人事故を偽装して、多額の保険金を請求
自損事故としてではなく、車を2台用意して故意に衝突させ、事故を装った末、保険会社に対して対物賠償責任保険、対人賠償責任保険、車両保険、人身傷害保険などさまざまな保険金を請求する行為も詐欺罪が成立する可能性が高いです。
●本当はケガをしていないのにケガをしているふりをして対人や人身傷害保険を請求
実際に交通事故はあったものの、保険会社に対してケガをしたという報告し、保険金を受け取る行為も詐欺罪が成立する可能性が高いです。たとえば、「歩けない」として保険金を受け取ったにもかかわらず、歩けることが判明して逮捕されたケースもあるので注意が必要です。
これらの保険金詐欺の手口に共通するのが「保険金をだまし取るためにウソをついていること」です。
詐欺罪は未遂でも罪に問われます(刑法第250条)。保険金を受け取ることを目的に、事故を偽装する、症状を偽装する、通院実績を偽装するなどの行為があった場合、その時点で罪に問われる可能性があるということです。
保険金詐欺を行ってから逮捕されるまでは、数年かかる場合も少なくありません。保険会社や調査会社などが詳細の調査した上で、確証が持てた時点で警察に被害届を提出するためです。
2、詐欺罪の量刑は? 刑務所に入るのか?
前述の通り、保険金詐欺で逮捕されると「詐欺罪」に問われ、有罪になれば10年以下の懲役に処されます。詐欺罪には、罰金刑がありません。有罪となり、執行猶予がつかなければすぐに刑務所で服役することになります。ただし、執行猶予付き判決であれば、執行猶予期間に犯罪行為をしなければ服役する必要はありません。
詐欺罪の量刑は、初犯かどうか、被害額、悪質性、被害者との示談の成立などを考慮して決定されます。初犯で被害額が小さく、悪質性が低いとみなされ、示談が成立している場合には、不起訴となったり、執行猶予付き判決になったりすることもあります。
3、保険金詐欺で逮捕された後の流れとは?
保険金詐欺を行い、詐欺罪で逮捕された場合、最大23日間身柄を拘束されたのちに、起訴されると刑事裁判が開かれることになります。以下、逮捕後の流れを詳しく解説していきます。
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(1)48時間プラス24時間の孤独な身柄拘束
詐欺罪で逮捕されたら、48時間は留置所に身柄を拘束されて警察官による取り調べを受けます。容疑を否認している場合などは、厳しい取り調べが行われることもあるでしょう。なお、逮捕されてから72時間は家族も面会できません。
警察官は48時間以内に検察官に事件を送致し、送致を受けた検察官はその後24時間以内に「勾留するかどうか」を判断し、裁判官に「勾留請求」を行い、裁判官が認めれば勾留されてしまいます。
勾留とは、起訴不起訴を判断するまでの間、犯人の逃亡や証拠隠滅を防止するために拘置所などに身柄を拘束する処分のことです。
勾留が不要と判断されれば、身柄は解放されて自宅に戻ることができます。もっとも、事実上捜査への協力や取り調べに応じる必要があります。 -
(2)最大20日間の留置所生活
勾留が決定したら、留置所などで生活をすることになります。勾留期間は原則10日間ですが、捜査のために必要と判断されればさらに10日間延長されます。
検察官は、勾留期間が満了となるまでに「起訴・不起訴」を判断します。起訴と判断されれば、刑事裁判が開かれ、不起訴と判断されれば身柄は解放され、前科もつきません。 -
(3)刑事裁判
刑事裁判では、検察官が捜査によって得られた証拠をもとに有罪であることを主張した上で、「求刑」を行います。裁判官は、検察、加害者双方の主張を確認した上で、量刑を決定します。
4、詐欺罪で逮捕された家族のためにできることとは?
ご家族が自動車保険の保険金詐欺で逮捕された場合、家族でできることは「なるべく早く保険金詐欺事件の取り扱い実績が豊富な弁護士に弁護を依頼すること」です。
万が一、あなたのご家族が逮捕されてしまったときは、早急に弁護士に弁護活動を依頼する必要が高いです。保険金詐欺の場合は、逮捕直後に弁護活動をスタートすることで、被害者と示談するなどして、勾留を避けられる可能性もあります。
5、弁護士に依頼することで何が変わるのか?
保険金詐欺で逮捕された場合、弁護士に依頼することで「今後の社会生活への影響」を最小限に抑えられる可能性があります。また、逮捕後72時間に弁護士が対応できれば、20日間の勾留を避けられるかもしれません。もちろん、取り調べの対応についてアドバイスするなど、あなたの力強いサポーターとなります。弁護士は、被害者との示談交渉も行います。
起訴されて刑事裁判が開かれた場合も、弁護士を依頼することで将来に及ぶ可能性がある影響を最小限に抑えることができます。さらに、被害者との示談が成立していれば、執行猶予付き判決を勝ち取れる可能性も高まります。
保険金詐欺で逮捕された方が早く社会復帰をするためには、身柄を拘束されることを避けることが重要になります。身柄拘束が長引けば長引くほど、職場との関係では無断欠勤が続き、解雇となる可能性があります。また、学生の場合、欠席が続くと、単位を落としたり、退学となったりする場合もあります。
このように対応が遅れれば遅れるほど、社会生活に多大な影響が出てしまいますので、早く弁護士に相談して適切な対応をとりましょう。
6、まとめ
保険金詐欺で逮捕された場合は、早急に弁護活動をスタートすることが大切です。ご家族が逮捕されると動揺してしまうかもしれません。しかし、まずは詐欺事件に対応した実績が豊富な弁護士に最適な対処法を相談してください。
ベリーベスト法律事務所 立川オフィスには保険金詐欺事件に関する知見豊かな弁護士が在籍していますので、迅速に対応し、親身になってアドバイスします。
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