あおり運転は暴行罪で逮捕! 罰則と逮捕後の影響、運転免許はどうなる?

2018年12月20日
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あおり運転は暴行罪で逮捕! 罰則と逮捕後の影響、運転免許はどうなる?

平成29年10月、東京都八王子市から昭島市までおよそ4kmもの区間、特定のバイクに対してあおるような運転を行い、道路交通法違反として逮捕されていた18歳の少年が、平成30年2月、あおり運転が明らかになったことから、危険運転致傷容疑で再逮捕されています。

あおり運転は交通事故を誘発しかねないとして、かねて危険性が指摘されていましたが、あおり運転によって発生した重大な死傷事故を受けて、社会的な関心がいっそう高まっています。そこで平成30年1月に行われた警察庁の通達により、全国的に警察による取り締まりが強化されました。あおり運転で事故を起こした場合は、道路交通法だけではなく、暴行罪などの刑法犯として罪に問われる可能性もあるでしょう。

この記事では、あおり運転をしてしまった方が、問われる可能性がある罪や罰則、事故後の影響について、立川オフィスの弁護士が解説します。

1、あおり運転の概要

「あおり運転」は法律用語ではありません。したがって、実際に行った運転やそれまでの経緯・状況によって、犯罪かどうかが判断されることになります。

具体的には、他の車両の走行を妨害する目的で、以下のような行為をした場合に、あおり運転とみなされるケースがあります。

  • みだりに車線変更を行う
  • 前方車両との距離を極端につめる
  • クラクションをしつこく鳴らす
  • 不必要なハイビームやパッシングを行う

あおり運転は、ドライブレコーダーの画像や音声のほか、被害者や走行中の別車両など、目撃情報が証拠となるケースがあります。証拠があれば、逮捕される可能性が高まると言えます。
※令和2年6月より、あおり運転は厳罰化されています。詳しくは以下のコラムをご覧ください。
>あおり運転が厳罰化! 令和2年創設の妨害運転罪について詳しく解説

2、あおり運転と暴行罪の関係

悪質なあおり運転は、たとえ事故を起こしていなかったとしても、暴行罪をはじめとした刑法犯として罪が問われることになります。あおり運転はあくまでも運転中の出来事であり、相手を直接殴ったり蹴ったりなどの暴力を加えたわけではないのに、なぜ暴行罪が成立するのか、不思議に思うかもしれません。その理由を解説します。

  1. (1)暴行罪とは

    そもそも暴行罪は、刑法第208条で定められた犯罪で、「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」に問われる罪です。

    暴行とは、「人の身体に対する不法な有形力の行使」とされており、典型例は殴る、蹴る、突くなどの行為ですが、相手が負傷する可能性がある行為全般が広く該当します。たとえば、相手にぶつからないように石を投げる、棒を振り回す、水をかけるなどの行為でも、暴行罪が問われる可能性があることを覚えておく必要があるでしょう。

    暴行罪で有罪になれば、「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に処されます。道路交通法違反で罰則を受けることになったとしても、懲役刑にならなければ前科がつくことはありません。しかし、暴行罪など刑法犯として有罪になれば、たとえ罰金刑や科料であっても、前科がつくことになります。

  2. (2)あおり運転で暴行罪が適用されるのはなぜ?

    前述のとおり、暴行にあたる「不法な有形力の行使」は、必ずしも身体への直接的な接触を求めていません。裁判所では、あおり運転について以前よりその危険性を認めており、嫌がらせ目的の幅寄せや車間距離をつめる行為が暴行罪にあたるとした判例があります。つまり、最近になって新たにあおり運転に暴行罪が適用されるようになったというわけではないのです。

    また、あおり運転は、取り締まりを受ければ、たとえ事故を起こしていなかったとしても、運転免許の点数制度にも当然、影響します。さらには、著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがある「危険性帯有者」とみなされれば、特典制度の内容にかかわらず、免許の取り消し処分や、免許停止処分が行われることもあるでしょう。

    危険性帯有による処分は過去の累積点数が関係ありませんので、一発で免許取り消しや停止になる可能性があります。

3、あおり運転によるそのほかの罰則

あおり運転の様態や結果によっては、そのほかの罪に問われることもあります。あおり運転と関連して問われ得る罪と罰則を紹介します。

  1. (1)そのほかの刑法犯

    あおり運転の結果、相手が事故を起こして負傷したとき、もしくは、あおり運転直後に相手の車を止め、暴行を加えて負傷させたときは、傷害罪に問われることがあります。また、平成30年7月に起きたあおり運転による死亡事故では、加害者自身のドライブレコーダーなどに残った録音などを証拠として「明確な殺意があった」と判断し、殺人罪として起訴した例も登場しています。

    なお、傷害罪として有罪となったときの罰則は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。そして、殺人罪は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」に処されます。

  2. (2)器物損壊罪

    あおり運転によって相手の車体や車の部品を壊した場合には、故意が認められ、器物損壊罪が成立します。罰則は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」です。

  3. (3)危険運転致死傷罪

    危険運転致死傷罪は、一定の危険な状態で車の運転を行い、人を死傷させると問われる罪です。人を負傷させると「15年以下の懲役」、人を死亡させると「1年以上20年以下の懲役」に処されます。

    冒頭の事件では、まずは共同危険行為として逮捕しましたが、ドライブレコーダーの映像からあおり運転を確認。被害者の運転手が負傷していたため、「自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致傷)」の容疑で再逮捕という結果となりました。

4、あおり運転で事故を起こしたあとの影響

悪質なあおり運転をして事故を起こした場合は、日常生活に多大な影響をおよぼすリスクは否定できません。考えられる影響を知っておきましょう。

  1. (1)長期間身柄を拘束される

    あおり運転で逮捕されると、刑事事件として扱われ、起訴前の段階ですら、最長で23日ものあいだ、身柄を拘束される可能性があります。これは、冒頭の事件のように運転手が未成年者でも、14歳以上であれば捜査を行われ、重大事件と判断されれば、刑事罰を処されることもあります。よって、14歳以上であれば、逮捕されてから取り調べを受けるあいだは、基本的に身柄の拘束を受けることになります。

    また、起訴された後も身柄拘束が延々と続く可能性も否定できません。さらに、裁判の内容次第では一度も釈放されることがなく、そのまま刑務所に移送されるおそれすらあります。

    なお、身柄拘束期間中は家に帰ることも、会社や学校に行くこともできません。しかも、逮捕後72時間は、外部と自由に連絡を取ることも、家族との面会も叶わない可能性が高いです。会社や学校への連絡や状況を家族に知らせたいときは、自由な接見を許されている弁護士を通じて行う必要があるでしょう。

  2. (2)解雇や退学

    解雇や退学になるか否かは会社や学校の判断によります。しかし、悪質なあおり運転を行い、重大な事故を起こしてしまったと判断されたり、長期の身柄拘束を受けることになったりすれば、解雇や退学されてしまう可能性は、十分に想定できます。

    たとえば、トラック運転手やタクシードライバーなど、車の運転を行う仕事をしていた場合には、会社側があおり運転を重く受け止めることでしょう。さらに運転免許の取り消し処分などを受ければ仕事をすることもできなくなるので、厳しい処分をくだす可能性は否定できません。

    弁護士に依頼していれば、会社や学校に寛大な対応を求めるなどの交渉を行うことや、そもそも事故を起こした事実が会社や学校に知られないように対応できる可能性が高まります

  3. (3)被害者や遺族からの損害賠償請求

    あおり運転で死傷事故を起こした場合、被害者本人や被害者遺族から多額の損害賠償を請求される可能性があります。ケガの治療費やリハビリ費、治療中の生活費、精神的苦痛まで、被害者側が被った損害は計り知れないことでしょう。

    損害の一部は自賠責保険や任意保険によって賄われますが、損害の対象範囲や額は加入している保険によって異なります。自身が加入する保険で不足する分は、別途支払わなければなりません。

    また、刑法犯として逮捕されているケースでは、被害者との示談を行い、許しを得るとともに示談金を支払うことによって、刑罰の軽減や長期拘束・起訴の回避ができる可能性もあるでしょう。交渉は、加害者や加害者の家族が個人的に行うことは、被害者の感情を顧みると、非常に難しいものです。示談交渉のプロである第三者の弁護士に依頼して、適切な交渉を行ってもらう必要があるでしょう。

  4. (4)実名報道

    実名報道に法律上の基準はありません。さすがに未成年者による事故では、実名報道はされませんが、あおり運転への社会的関心や警察の取り締まりが強化されている背景を考慮すると、実名報道される可能性は大いにあると言えます。

    インターネット上のニュースなどで名前が掲載されると、半永久的に情報が残ってしまう可能性があります。さらには、報道の影響により本人のみならず、家族、親戚、友人などにも辛い思いをさせてしまうかもしれません。社会的地位や周囲からの信用を失うリスクは非常に大きいということができます。

5、まとめ

あおり運転で問われる罪や罰則、事故後の影響を解説しました。

あおり運転をすると、厳しい処分を受ける可能性が考えられます。被害者との示談や捜査機関への働きかけによって、不起訴処分の獲得や減刑につながることもあります。

しかし、被害者は加害者との接触を嫌がる傾向がありますし、捜査機関も直接の接触を禁止するケースが多いため、加害者である本人や家族が動くことには限界があります。さらに、加害者が事実を否定するほどに、捜査機関の心証が悪くなるリスクが上がる可能性が高いものです。

そこで、第三者的な立場であり、法律に詳しい弁護士を頼ることが、現実的かつ有効な手段となります。

ベリーベスト法律事務所 立川オフィスの弁護士も尽力します。あおり運転によって逮捕される可能性がある、警察に呼び出しを受けている、身内が逮捕されたなど、ひとりで悩まず、まずは相談してください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています