別居中でも養育費の支払い義務はある? 婚姻費用との違いと減額要素

2024年12月23日
  • 養育費
  • 別居
  • 養育費
別居中でも養育費の支払い義務はある? 婚姻費用との違いと減額要素

立川市が公表している統計年報によると、令和4年度中に立川市で受理した離婚件数は379件でした。なお、厚生労働省が公表する「令和4年度 離婚に関する統計の概況」によると、令和2年における全国の離婚件数のうち、別居した年に離婚届を提出した割合は71.9%だったことがわかっています。

子どもがいる夫婦が離婚をする場合、親権を持たない親が養育親へ養育費を支払う義務があることはよく知られています。では、妻や子どもと別居しているときも養育費の支払い義務はあるのでしょうか?

本コラムでは、離婚問題についての知見が豊富なベリーベスト法律事務所 立川オフィスの弁護士が、別居中の養育費から離婚後の養育費についてと減額できる条件から、婚姻費用との違いについて解説します。


離婚・男女問題を立川の弁護士に相談 離婚・男女問題を立川の弁護士に相談

1、別居中に「養育費」を支払うことは義務か?

妻や子どもと別居することになった場合にも、養育費を支払う必要があるのでしょうか。以下では、別居してから離婚するまでの配偶者や子どもの生活費などの負担について説明します。

  1. (1)「婚姻費用」の支払い義務があり養育費が含まれる

    婚姻中の夫婦には、法律上、婚姻生活から生ずる費用を分担する義務があります(民法760条)。この費用のことを「婚姻費用」といいます。

    夫婦が同居している場合には、お互いの収入から家計のやり繰りをしていますので、婚姻費用の分担ということを明確に意識して生活はしていないでしょう。

    しかし、夫婦が別居をすることになった場合には、夫の収入で生活していた妻は、生活費の支払いをしてもらえなければ生活していくことが困難な状況に追い込まれてしまいます。そこで、婚姻費用として、別居中の生活費を請求することになるのです。

    婚姻費用には、配偶者の衣食住に関する費用のほかに、子どもがいる夫婦の場合には、子どもの養育費も含まれます

  2. (2)別居の経緯によっては婚姻費用の支払いを免れることもある

    別居をしたとしても夫婦であることには変わりありませんので、原則として、婚姻費用の支払い義務を免れることはできません。

    しかし、婚姻関係の破綻が主として有責配偶者に責任がある場合には、有責配偶者からの婚姻費用の請求は、権利の濫用であるとして制限されることがあります。ただし、婚姻費用には、子どもの養育費も含まれていますので、少なくとも子どもの養育費分については支払う必要があるといえます。

2、離婚した場合、養育費の扱いはどうなる?

離婚した場合には、妻や子どもの生活費などの負担はどのように変化するのでしょうか。以下では、離婚後の養育費の扱いについて説明します。

  1. (1)離婚後は婚姻費用から養育費に変わる

    養育費とは、子どもが社会人として独立して生活することができるまでに必要となる費用のことをいいます。夫婦が離婚をしたとしても、子どもの親であることには変わりませんので、離婚によって子どもと別々に暮らすことになった親は、監護親に対して子どもの養育費を支払う義務があります。

    離婚前は、婚姻費用の支払い義務がありますが、離婚によって配偶者を扶養する義務は消滅しますので、離婚後は、子どもの生活を支えるための養育費のみの支払いとなります。

  2. (2)養育費の支払い義務が終了または減額される場合

    養育費の支払いは、親としての当然の義務であり、また子どもの権利ですので、原則として、離婚時の取り決めどおり支払っていく必要があります。しかし、以下の場合には、例外的に養育費を支払わなくてもよくなる場合があります。

    ① 子どもが成年になった場合
    養育費の支払い義務は、子どもが成年になるまでとするのが一般的です。そのため、養育費の終期が到来すれば、養育費の支払い義務は消滅します。
    ただし、離婚時に養育費の終期を「大学を卒業する年の3月まで」など特別な取り決めをしている場合には、その時点まで養育費の支払い義務が継続することになります。

    ② 親権者が再婚をして子どもと再婚相手が養子縁組をした場合
    親権者が再婚をして、子どもが再婚相手と養子縁組をした場合には、子どもの第一次的な扶養義務者は、養親である再婚相手になります。そのため、再婚相手に子どもの養育する十分な資力がある場合には、実親の養育費支払い義務は免除される可能性があります。

    ③ 支払義務者に収入がなくなった場合
    支払義務者が解雇による失業や、病気による就労不能となった場合、従前どおりの額を支払う義務からは一時的に開放されます。このような場合、支払義務者の現況に鑑みて、養育費の減額が行われることになります。

    ④ 支払義務者に新たな扶養家族ができた場合
    支払義務者が再婚し、再婚相手が無職であるなど十分な収入がない場合や、再婚相手との間に子どもを授かり扶養家族が増えた場合には、そのことを考慮して養育費が減額される場合があります。

3、高額な養育費を請求されたり、支払えなくなったりした場合の対処法は?

高額な養育費を請求された場合や経済的な事情によって合意した養育費が支払えなくなったという場合には、以下のような対処をするとよいでしょう。

  1. (1)養育費の取り決めは養育費算定表を参考にする

    養育費の金額をいくらにするかについては、法律上の決まりはありませんので、夫婦の話し合いによって自由に決めることができます。

    しかし、相手から高額な養育費を請求されており、話し合いが進まないという場合には、裁判所や弁護士会が発行する「養育費算定表」を参考にして養育費の金額を決めるという方法も有効な手段になります

    「養育費算定表」は、裁判所においても養育費の金額を決める際に利用されているものであり、夫婦の収入と子どもの人数・年齢から簡単に養育費の相場を知ることができます。養育費の相場がわかれば、それをベースにして話し合いを進めることができますので、お互いに納得した金額を定めることができるといえるでしょう。

  2. (2)話し合いで解決できない場合には調停を利用する

    上記の方法によっても養育費の金額が決まらない場合には、家庭裁判所の養育費請求調停を利用するとよいでしょう。

    調停のメリットは以下のとおりです。

    • 調停員を介して話をするため、互いに冷静になることができる
    • 相手と顔を合わさず、声も聞かずに話し合いをすることができる
    • 調停で決めたことには公的な効力があり、決定事項が守られなければ強制執行ができる
    • 調停の話し合いで養育費が決まらなければ、裁判官にご判断を仰げる(審判移行)


    調停というと長引くイメージがある方もいるかもしれません。しかし、調停における話し合いを重ねたにもかかわらず、養育費額が決まらない場合には、審判という手続きによって、裁判官が養育費の金額を判断してくださることになります。

    審判によって決定されたことは、裁判官のご判断ですから、当然、公的な強制力があります。つまり、審判によって決定された養育費額が支払われなかった場合、義務者の預金や給与を差し押さえることが可能になります。

まずはお気軽に
お問い合わせください。
電話でのお問い合わせ
【通話無料】平日9:30~21:00/土日祝9:30~18:00
メールでのお問い合わせ
営業時間外はメールでお問い合わせください。

4、別居中の婚姻費用や離婚後の養育費の支払いに不安があるなら、弁護士に相談

不仲となった配偶者と冷静に話し合うことは難しいことです。婚姻費用や養育費の交渉は弁護士に任せることを検討しましょう。

また、子どもが私立学校に通っており、算定表上の養育費では明らかに不足するなどの特別な事情がある場合、弁護士に相談した方が合理的な結果が得られる可能性が高まります。
弁護士に交渉を依頼するメリットは以下のとおりです。

  1. (1)適切な婚姻費用・養育費の金額を算定してくれる

    婚姻費用や養育費の金額は、一度取り決めをしてしまうと、特別な事情がない限り、その金額を変更することは困難となります。そのため、養育費の金額を決める場合には、養育費の相場を踏まえて適切な金額にしておかなければなりません。

    養育費や婚姻費用の金額は、基本的には双方の収入を基準にして決めることになりますが、個々の家庭の特別な事情によっては、収入を基準にして算定した金額から修正していく必要もあります。どのような場合に修正が可能なのかについては、専門的な知識と経験がなければ正確に判断することができません

    このような場合には、弁護士に相談をすることによって、養育費・婚姻費用算定表だけでなく個別具体的な状況に応じた助言が得られます。

  2. (2)相手との交渉を任せることができる

    養育費や婚姻費用の金額を決める際には、相手との話し合いをして決めなければなりません。しかし、別居や離婚の経緯によっては、お互いに感情的になってしまい、冷静な話し合いをすることができないこともあります。

    このような場合には、弁護士に依頼をすることによって、相手との交渉をすべて任せることができます。弁護士が交渉の窓口となって、適切な養育費・婚姻費用の金額を交渉してくれますので、話し合いがスムーズに進むだけでなく、本人の精神的負担も軽減されるという効果が期待できます。

  3. (3)離婚問題についてもサポートを受けることができる

    養育費や婚姻費用に争いがある事案では、離婚についても争いがあることがあります。そのような場合には、離婚も含めたすべての問題について弁護士のサポートを受けながら進めていくことをおすすめします。

    離婚問題全般を弁護士に依頼することによって、個々の条件で譲歩をしたとしても全体的には有利な解決を図ることができるなど、総合的な解決を図ることが可能になります。

    離婚時には、婚姻費用や養育費だけでなく、親権、慰謝料、財産分与などさまざまな問題が生じますので、適切な条件で離婚をするためにも弁護士のサポートを受けることが有効だといえるでしょう

5、まとめ

別居時の婚姻費用や離婚時の養育費の支払いは、法律上の義務ですので、その支払いを免れることは原則としてできません。しかし、婚姻費用には子供を養育するための費用も含まれているため、婚姻費用とは別に養育費を払う必要はありません。また、さまざまな事情によって支払いが困難になったという場合には、その金額を減額することも可能です。

養育費や婚姻費用を高額請求され、お悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 立川オフィスまでお気軽にご相談ください。離婚問題についての知見が豊富な弁護士が、適切な金額を算出してアドバイスを行うだけでなく、あなたの代理人として交渉から対応します。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています