再婚禁止期間とは何? その間に妊娠したらどうなる? 弁護士が解説

2021年03月22日
  • その他
  • 再婚禁止期間
再婚禁止期間とは何? その間に妊娠したらどうなる? 弁護士が解説

立川市が公表している令和元年の統計年表によると、平成30年度の立川市での離婚件数は、423件でした。平成26年度の離婚件数が466件でしたので、減少傾向にあるようにも思えますが、婚姻件数も平成26年度が1652件であったのに対し、平成30年度が1563件と減少していることを考えると、離婚をする夫婦の割合は現在も高い水準であるといえます。

離婚をした女性が再婚をする際に問題となるのが「再婚禁止期間」です。平成27年に最高裁判所が違憲判決を出したこともあり、言葉自体は聞いたこともあるという方もいるかもしれません。

今回は、再婚禁止期間とは何か、それに違反した場合どうすればよいのかということについて、ベリーベスト法律事務所 立川オフィスの弁護士が解説します。

1、再婚禁止期間がある理由

「女性のみに再婚禁止期間が定められているなんて不平等だ」と思う方もいるかもしれません。しかし、女性のみに再婚禁止期間の制度が定められたのにはある理由があります。

以下では、再婚禁止期間とは何か、再婚禁止期間が定められた理由などについて説明します

  1. (1)再婚禁止期間とは?

    再婚禁止期間とは、離婚後に再度結婚するまで、空けておかなくてはならない期間のことです。つまり、その期間中は結婚をすることができません。

    民法733条1項は、「女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができない」と規定し、女性が再婚をする場合における再婚禁止の期間を定めています。

    100日も再婚を禁止されるなんて長すぎると思うかもしれませんが、実は、以前は、もっと長い再婚禁止期間が定められていたのです。

    現在の100日の禁止期間となる前は、6か月も再婚が禁止されていました。しかし、平成27年12月16日、最高裁判所は、100日を超える再婚禁止期間を定める民法の規定は違憲である旨の判断をしました。

    これによって、法改正が行われ、平成28年6月から再婚禁止期間が100日に短縮されたのです。

  2. (2)女性のみに再婚禁止期間がある理由

    女性のみに再婚禁止期間が定められているのには、合理的な理由があります。それは、父親の推定の重複を回避するという理由です

    民法772条1項は、「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」と規定し、同条2項は、「婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。」と規定しています。

    すなわち、婚姻してから200日経過後または婚姻解消から300日以内に生まれた子どもについては、婚姻関係にある夫の子どもと推定されることになるのです

    もし再婚禁止期間がなかったとすると、離婚後にすぐに再婚をし、再婚後200日以降かつ離婚後300日以内に子どもが生まれた場合、現在、婚姻関係にある夫の子どもと推定されるだけでなく、離婚した元夫の子どもとも推定されてしまうという不都合な事態が生じてしまいます。

    このような不利益を回避するために、女性にだけ再婚禁止期間が設けられているのです。

  3. (3)再婚禁止期間の例外

    再婚禁止期間を定めた目的は、父親の推定の重複を回避することにありますから、再婚禁止期間には例外があります。以下の場合には、100日の経過を待たなくても再婚をすることが可能です

    ①離婚時に妊娠していない場合
    民法733条2項では、以下のとおり再婚禁止期間の例外を規定しています。

    • 「女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合」(733条2項1号)
    • 「女が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合」(733条2項2号)


    1号の規定は、離婚時に妊娠していなかった場合、2号の規定は、離婚後再婚までの間に出産した場合で、いずれも父親の推定が重複するおそれのない場合を規定しています。

    この場合には、医師の発行する証明書を提出することによって、再婚禁止期間の経過を待たずに再婚をすることが可能です

    また、法律には明記されていませんが、次の場合も、戸籍実務上、再婚禁止期間の適用が否定されています。

    ②同じ相手と再婚する場合
    離婚した元夫と再婚をするという場合にも、父親の推定が重複するおそれがないため再婚禁止期間は適用されません。

    ③夫が行方不明の場合
    夫が失踪宣告を受けた場合や夫の生死が3年以上不明であるため裁判離婚をした場合には、元夫の子どもを妊娠するという可能性はないので、再婚禁止期間は適用されません。

    ④妊娠の可能性がない場合
    妊娠の可能性がない高齢者である、子宮の全摘出の手術をした女性であるなど、妊娠する可能性がない場合も再婚禁止期間は適用されません。

2、再婚禁止期間に再婚をし、妊娠が分かった場合はどうすべき?

再婚禁止期間に違反した場合にはどうなるのでしょうか。また再婚禁止期間に違反して再婚をした結果、妊娠してしまった場合、子どもの父親はどうなるのでしょうか。

  1. (1)再婚禁止期間に違反した場合はどうなるのか

    離婚した女性が再婚禁止期間中に再婚しようとしても、市区町村役場では婚姻届を受理することはありませんので、基本的には、再婚禁止期間に違反して再婚をするという事態が生じません

    しかし、市区町村役場で何らかの手違いがあり、再婚禁止期間であるにもかかわらず、誤って届出を受理してしまったということもなくはありません。極めてまれなケースですが、このような場合には、再婚禁止期間に違反して再婚をするという事態が生じることになります。

    再婚禁止期間に違反して再婚したとしても、罰則を科せられることはありませんが、すでに説明したとおり、子どもを妊娠した時期によっては、父親の推定の重複が生じる場合があります

  2. (2)父を定めることを目的とする調停・訴訟

    もし上記のケースで父親の推定の重複が生じた場合には、父を定めることを目的とする調停や訴えを起こさなくてはなりません

    民法773条では、「再婚禁止期間に違反して再婚をした女性が出産した場合に、父親の推定の重複が生じるときは裁判所が定める」として、「父を定めることを目的とする訴え」を規定しています。

    ただし、訴えを起こす前提として、調停を申し立てなければなりませんので、実際には以下のような流れで進みます。

    • 家庭裁判所に「父を定めることを目的とする調停」を申し立てる
    • 調停で合意が成立した場合には、裁判所が事実の調査をし、合意に相当する審判によって父を定める
    • 調停が不成立となった場合には、父を定めることを目的とする訴えを起こして、解決を図る


    このように、再婚禁止期間を守らない場合には、前夫と現在の夫を巻き込んで争わなければならなくなりますので、再婚禁止期間を守って再婚しましょう

3、元夫との親子関係を否定する手続きとは?

離婚後300日以内に出産した場合には、その子どもは元夫の子どもと推定されます。しかし、実際の父親は、元夫ではなく、別の男性であった場合には、このような推定が及んだままでは不都合な事態が生じます。

そこで、このようなケースでは、以下の手続きをとることで、元夫との親子関係を否定することが可能です。

  1. (1)嫡出否認の手続き(嫡出否認調停)

    嫡出否認調停は、夫から、妻から生まれた子どもが自分の子どもではない、として嫡出の推定を否定するものです

    すでに説明したとおり、婚姻してから200日経過後または婚姻解消から300日以内に生まれた子どもについては、夫の子どもと推定されることになります。そうすると、妻が婚姻中に不倫をし、不倫相手の子どもを妊娠してしまったときでも、嫡出の推定がおよび、夫の子どもと推定されてしまうのです。

    このような場合に、夫が、自分の子どもであるとの推定を否定するためには、子どもが生まれたことを知ってから1年以内に嫡出否認の訴えを提起する必要があります

    ただし、嫡出否認の訴えを提起できるのは、夫だけとなっていますから、夫が訴えを提起しない場合は、嫡出否認を行うことはできなくなります。

  2. (2)親子関係不存在確認の手続き(親子関係不存在確認調停)

    婚姻成立の日から200日以内に生まれた子どもは、戸籍上は夫婦の実子として記載されますが、民法772条の嫡出推定は及びません。このような子どもを「推定されない嫡出子」といいます。

    推定されない嫡出子であっても、夫との間に父子関係が成立します。ただし、推定されない嫡出子の場合において夫が父子関係を否定するときには、嫡出否認の訴えではなく、親子関係不存在の訴えを起こせば足りることになります

    なお、民法772条の嫡出推定が及ぶ場合であっても、以下の場合には、生まれた子が夫の子である可能性がなく、推定の及ばない子として扱われることになります。

    • 夫が行方不明の場合
    • 夫が海外に滞在している、在監中である場合
    • 夫婦関係が断絶し、事実上の離婚状態である場合

4、離婚や再婚の相談は、弁護士へ

女性には、離婚や再婚の際には特有の法的な問題があるため、離婚や再婚をする際には、さまざまな配慮が必要になってきます。

もしかしたら、以下のような事態が起こり得るかもしれません。

  • 夫との婚姻関係が長期間破綻しており、夫とは別の男性と交際をしていたため、離婚をする時点では夫以外の男性との間の子どもを妊娠している
  • 誤って再婚禁止期間中に婚姻届を提出し、受理されてしまった


上記のケースでは、子どもの父親の推定をめぐって複雑な問題が生じることになります。再婚後の生活や子どものことを考えると、このような問題はできる限り避けて通りたいものです。

そのため、離婚後の再婚や夫以外の男性の子どもを妊娠している可能性に気付いた場合には、早めに弁護士に相談するようにしましょう

5、まとめ

女性の場合には、離婚後100日の再婚禁止期間を経過した場合には、法律上は再婚が可能になるとはいっても、夫と離婚をし、別の男性とすぐに入籍をしたいと考えている女性にとっては、100日という再婚禁止期間がネックになる場合もあります。

そのような場合には、例外的に再婚禁止期間の適用がない事案かどうかを確認することで、場合によっては、再婚禁止期間の経過を待たずに再婚ができることもあるかもしれません。

離婚後の再婚のことでお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 立川オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています