被害届と告訴状の違いとは? それぞれの書き方や提出方法を解説

2021年02月22日
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被害届と告訴状の違いとは? それぞれの書き方や提出方法を解説

誰でも犯罪の被害には遭いたくないものですが、不幸なことに犯罪に巻き込まれてしまった場合には、警察等に助けを求めたり、処罰を求めたりすることになります。その際に取り扱われる書類に「被害届」や「告訴状」があります。

「被害届」と「告訴状」はどのように違うのかなどは、あまり周知されていません。

そこで今回は、「被害届」と「告訴状」の違いや、なぜ2種類存在しているのかなどについて、ベリーベスト法律事務所 立川オフィスの弁護士が解説します。

1、被害届と告訴状の違いとは?

まずは、被害届と告訴状、それぞれがどのようなものなのか確認したうえで、違いを見ていきましょう。

  1. (1)被害届

    被害届とは、警察などの捜査機関に対して犯罪の被害に遭った事実を申告する届け出のことです。あくまでも、被害に遭ったという事実を届け出て知らせる報告で、捜査の実施や加害者への処罰を求める意思表示は含まれていません。
    被害届が提出されると、警察は受理をしなければなりません(犯罪捜査規範61条)。また、被害届の提出によって、事件が把握され、捜査を開始する端緒になります。

    しかしながら、実際は、後述のように、さまざまな理由をつけて、被害届を受け取らない警察官もいます。

  2. (2)告訴状

    告訴とは、犯罪被害者などの告訴権者が、捜査機関に対し犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示です。告訴状は、その意思表示を書面化したものをいいます。

    被害届も告訴状も、犯罪被害を申告するもので、捜査の端緒となるものであるものに違いはありません。被害届との重要な違いは、「犯人の処罰を求める意思表示である」という点です。

    捜査機関は告訴状を提出されると、検察官に書類を送付したり、起訴をしたかどうかの結論を通知する義務が生じます。(刑事訴訟法242条、260条)。

    告訴権者は、犯罪被害者が原則ですが、未成年の場合にはその法定代理人が告訴権者になります。その他、被害者が死亡している場合には、その配偶者や一定の親族なども告訴することが可能です。

    また、告訴を行うときは、口頭での告訴も認められます。しかし、実務上は、事実関係を明確にするため、書面で告訴状を提出することがほとんどです。

  3. (3)告発状

    告訴と似た言葉として、「告発」という言葉を見聞きしたことがある方もいるでしょう。

    告発とは、告訴権者以外の第三者が、捜査機関に対して犯罪事実を申告し、犯罪者の処罰を求めるものです。告訴は「当事者」が申告しますが、告発の場合、「第三者」が申告します。

    そして、告発を書面化したものが「告訴状」です。告発をするのが「第三者」という点を除くと、法的効果は告訴と同様となります。

2、被害届と告訴状、どのような場合に提出?

「被害届」と「告訴状」の違いがわかったところで、これらはどのようなときに提出するものでしょうか。

  1. (1)すみやかに行動する場合

    実際上、告訴状は、被害届と比べて、警察官等が受理をするハードルが高く、個人で提出しようとしても、断られる可能性は高いといえるでしょう。

    被害届でも、警察署において事件が認識されることになりますので、まずは被害届を提出して、示談交渉等を通して事件の解決を検討したり、告訴状の提出に向けて行動するという方法も考えられます。

  2. (2)処罰を強く求める場合

    そして、処罰を強く求めるのであれば告訴状を提出すべきです。告訴状には、刑事処罰を求めることが内容として含まれており、その扱いも、被害届と異なるため、捜査の進行と起訴を促進する効果が期待できるからです。

    特に、被害者の告訴が要件になっている親告罪の場合、告訴がなければ起訴できないので注意が必要です。具体的には、過失傷害罪、未成年者略取誘拐罪、名誉毀損罪、侮辱罪、器物損壊罪などが親告罪にあたります。

    いずれの場合でも、捜査機関は事件を知ることになり、適宜の方法で事件の処理がされることになります。

    示談の話になった際等は、被害届や告訴状の取り下げと被害回復を条件とされることも多いでしょう。

    被害届の場合、取り下げに期間制限はありません。告訴については、公訴の提起があるまでは取り消すことが可能です。しかしながら、
    同内容の被害届は、重複していること等から、実際上再び受理してもらえる可能性は低いでしょう。また、親告罪の場合、一度告訴を取り下げてしまうと再度の告訴はできません。

    そのため、示談成立により被害届や告訴状を取り下げるときは、再度の届け出や提出ができない可能性を十分に意識してすることが大切です。

3、被害届・告訴状の書き方や提出方法

それでは、具体的に、被害届や告訴状はどのように記載すればいいのでしょうか。

  1. (1)被害届の書き方と手続の流れ

    犯罪の被害に遭った場合、通常は、被害届の提出の前に110番に電話するか、最寄りの警察署や派出所に助けを求めることになります。このとき、被害に遭ってからすぐに行動することが大切です。

    刑事事件では初動の捜査が重要なので、犯行日より数日経ってからでは証拠がなくなっている可能性があります。たとえば、防犯カメラなどは、常に上書きされていきますので、犯行日より時間が経過するとデータがなくなってしまうこともあるのです。その他、時間が経つと目撃者の記憶が曖昧になり、証言が得られにくくなるという問題もあります。

    そのため、できるだけ早く、行動を起こしましょう。

    被害届の提出先は警察署でも派出所でも構いません。届出人の住居と氏名を記入して押印します。記載内容としては、犯罪の日時、場所、態様、被害の内容等をできる限り具体的かつ詳細に記載します。記載にあたっては、たとえば、以下の事情などを含める必要があるでしょう。

    • 被害者の住居、職業、氏名、年齢
    • 被害の年月日時
    • 被害の場所
    • 被害の模様
    • 被害金品
    • 犯人の特徴
    • 遺留品その他参考になるべき事項


    被害届は、法令上、提出されたら必ず受理しなければならないものです(犯罪捜査規範61条1項)。しかし、実際上、理由をつけて、警察が受け取らないことがあります。

    警察に被害状況を理解してもらい、きちんと処理をしてもらうためには、犯行状況などについて、整理して記載することが重要です。また、被害状況については、具体的な金品の詳細を記載したり、身体的に被害を受けた場合には、医師の診断書を取ったりするなどの対応が求められるでしょう。

    その他、近所で同じような被害がある場合には、被害者が連携して複数の被害届を出すことも有効的です。

  2. (2)告訴状の書き方と手続の流れ

    告訴状を提出する予定の場合も、まずは被害に遭ったらできるだけ早く110番に電話するか、最寄りの警察署や派出所に助けを求めてください。初動捜査が重要なことはすでに説明したとおりです。

    告訴状は、親告罪でない限り警察から提出を求められることはなく、様式があるわけではないので、自分で作るか、弁護士等の代理人に作成してもらう必要があります。

    告訴状に記載する内容は、「告訴状」と冒頭にタイトルを付し、提出日を記入します。宛先は警察署長宛で、告訴人が氏名を記入し押印します。主な記載内容は、以下のとおりです。

    • 告訴人の住所・氏名・生年月日・電話番号
    • 被告訴人(犯人が特定されている場合)の住所・氏名・職業・電話番号
    • 告訴人代理人(いる場合)の事務所所在地・事務所名・氏名・電話番号・FAX番号


    その上で、「告訴の趣旨」として、被害届の場合と同様に、犯罪の日時、場所、態様、被害の内容等をできる限り具体的かつ詳細に記載し、それに加えて成立する犯罪名および処罰してほしい旨を記載することが通例です。さらに、告訴に至る経緯と証拠資料の一覧と添付資料の一覧を記載し、警察署に提出しましょう。

    告訴をすることは被害者の権利であり、法令上、受理する義務がありますので、警察官等が告訴状を受理しない、ということは本来違法です。要件を具備した告訴状が受理されない場合には、記載の内容について再度確認するのとともに、警察本部の監察官室や公安委員会に苦情を申し立てることを検討することもやむを得ない場合もあるでしょう。

    その他、警察官に受け取りを拒否されても、告訴状を検察庁へ提出することによって、解決する場合もあります。

4、トラブルの相談は弁護士へ

犯罪被害に遭った場合には、すぐに警察に連絡することが非常に重要ですが、処罰のみならず、被害回復のための損害賠償請求なども視野に入れて行動する必要があります。

しかしながら直接、加害者と交渉すると、トラブルが生じることも心配でしょう。

告訴状の作成や受理させることについてのご相談や、加害者との示談交渉や話し合いに応じない場合の訴訟の提起などをご検討されている場合は、弁護士へご相談されるとアドバイスや助力を得ることができるかもしれません。

5、まとめ

今回は、被害届と告訴状の違いや、警察が告訴状を受理してくれない場合の対応方法などについて解説してきました。

犯罪被害にあった場合に、事件として扱われるためには、何より証拠を保全することが重要です。遺留物や防犯カメラの映像などは時間が経過するとどんどん失われていきます。そのため、できるだけすみやかに警察に連絡することが重要です。

また、警察への連絡だけでなく、被害回復のために行動を起こすことも大切です。お困りごとがございましたらば、ベリーベスト法律事務所 立川オフィスの弁護士へお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています