共同著作権となる場合や注意点、類似権利を解説

2022年11月28日
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共同著作権となる場合や注意点、類似権利を解説

著作権という言葉は日常的にもよく耳にすることがあるかと思います。著作権は、個人はもちろん企業の制作物も対象となります。

もし企業の制作物に複数人が関与した場合、著作権は共有になるのか、共同著作権となる場合には、どのような対応をするべきなのか、紛争のリスクはないのかなど、知っておきたいポイントがあります。

この記事では、共同著作権の概念や運用方法などについてベリーベスト法律事務所 立川オフィスの弁護士が解説いたします。

1、共同著作権とは

  1. (1)共同著作物となる場合

    共同著作物とは、
    ① 二人以上の者が共同して創作したもので
    ② 各人の寄与を分離して個別的に利用できない
    ものをいいます(著作権法2条1項12号)。

    以下、詳しく解説していきましょう。

    ① 二人以上の者が共同して創作すること
    複数人が関与してできた著作物がすべて共同著作物となるわけではありません。

    著作物の具体的な表現を作り出した行為が必要です。たとえば、助言をしただけの者、企画だけを行った者、校閲をしただけの者は、共同著作者にはあたりません。一般的には、共同著作者となるためには、表現の創作に実質的に関与していること、すなわち、単独の著作者と同等の創作をしている必要があると考えられています

    次に「共同して」とはどのような意味でしょうか。さまざまな考え方がありますが、多数説では、複数の者の間で、双方向的な共同で創作するという意思があれば「共同して」の要件を満たすと考えてられています。

    この要件が問題になるケースとしては、師の死後にその著作物を弟子が補訂する場合や共同作業者が亡くなった場合の遺稿が共同著作物といえるかというものがあり得ます。
    裁判例(大阪地判平成21年10月22日)には、死者との間における共同製作の意思の共通を認める事情は見あたらないとして、共同著作は成立しないとするものがあります。

    ② 各人の寄与を分離して個別的に利用できないこと
    かつては、結合著作物(たとえば歌詞と曲という分離利用ができる著作物。詳細は2章で後述)や集合著作物(1つのテーマのもとに作成されているが章ごとに著作者が別であるなど分離して個別利用できる著作物)なども共同著作物とされていました。

    現在の著作権法では、各人の分離利用が不可能であることを要件とすることで、このような結合著作物や集合著作物を共同著作物から除外しています。
  2. (2)共同著作物となった場合にはどうなる?

    共同著作物となった場合に、共同著作権者はどのような権利関係となるかは、著作権法65条と64条で定められています。

    ① 著作権法65条のルール
    共同著作物の共同著作者は、自分の持分を譲渡するなど処分したいときには、他の共同著作者全員の同意を得ることが必要になります。また、著作権を行使するためにも全員の同意が必要です。

    ② 著作権法64条のルール
    共同著作物の著作者人格権を行使するためには、他の共同著作者全員の同意を得ることが必要になります。

    ③ 著作権法117条のルール
    著作権に基づく差止請求・損害賠償請求等については、著作者がそれぞれ単独で行うことができます。

2、共同著作物に類似する著作物

ここでは、複数人が創作に関与するという意味で共同著作物に類似または関連する、結合著作物、職務著作、二次的著作物についてご説明いたします。

  1. (1)結合著作物とは?

    結合著作物は、実は著作権法では定められていない講学上の概念です。

    結合著作物とは、その著作物が本来は一体的なものとして創作されながら、分離して利用することが可能なものとされています。

    したがって、共同著作物との違いは、要件が分離利用不可能(共同著作権)か否かという点です。

    たとえば、歌詞がついている楽曲の歌詞または曲の一方を利用する場合に、当該一方の著作者の許諾を得ればよいのか、それとも双方の許諾が必要なのか、という点で結論が異なることになります。

    歌詞がついている楽曲は、結合著作物であると考える見解が主流ですので、歌詞または曲の一方を利用する場合には、それぞれの著作者から同意を取る必要はなく、歌詞なら歌詞の著作者に、曲なら曲の著作者に、それぞれ一方の著作者のみから同意を取って利用することが可能です。

  2. (2)職務著作とは?

    著作権は著作者であるその著作物を創作した者に帰属するので、実際にその創作活動を行った個人が著作権を有することが原則です。

    ただし例外として、会社の商品を販売するためのプレゼンテーション資料などの著作権は実際に手を動かした個人に帰属するわけではなく、例外的に会社に帰属することになります

    このような個人ではなく、法人などが著作者となることを職務著作といいます。職務著作によって、法人などが著作者になる要件は、著作権15条に定められています。

    具体的には、

    • ① 法人等の発意に基づくものであること
    • ② 法人等の業務に従事する者が
    • ③ 職務上作成するものであること
    • ④ 法人等が自己の著作の名義の下に公表するものであること(プログラムの著作物の場合はこの要件は不要)
    • ⑤ 著作物の作成時に、契約、勤務規則その他に別段の定めがないこと

    が要件になります。

    これらの要件は、各要件は相互に密接な関連を有しているので、各要件を総合的に勘案して適用が検討されることになります。

    なお、要件①の「発意」という文言からすると、単に創作のイニシアチブをとった、企画したということだけではなく、完成に至るまで指揮・監督(コントロール)が行われていることも必要になると考えられているので注意が必要です。

    また、要件②の「法人等の業務に従事」というのも、雇用契約であることが基本としつつも、雇用契約の場合だけに限定されるものではなく、委任契約や請負契約の場合も含まれると考えられています。

  3. (3)二次的著作物とは?

    二次的著作物とは、著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物と定義されます(著作権法2条11号)。

    「翻案」について、判例は、

    • ① 既存の著作物に依拠し
    • ② その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ
    • ③ 具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、
    • ④ 新たに思想または感情を創作的に表現することにより
    • ⑤ これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作すること

    としています(最高裁判決平成13年6月28日)。

    そのため、これらの要件、特に③④⑤を満たす著作物が、二次的著作物と解されています。

    著作物が、二次的著作物にあたった場合、第三者が二次的著作物を利用するためには、著作物の著作者と二次的著作物の著作者の双方の許諾が必要となります

    この点で、二次的著作物と共同著作物は類似した権利であるといえます。

3、共同著作権が発生した場合の運用に関する注意点

共同著作権が発生した場合には、著作権法65条により、自分の持分を処分したいとき、著作権を行使したいときには、他の共同著作者全員の同意を得ることが必要となります。

著作者人格権についても、著作権法64条により著作者全員の合意によらなければ、行使することができないものです。

このように共同著作権が生じた場合には、他の共同著作者の同意が必要となるなど、非常に大きな制約が課せられます

この問題を解消するためには、目的となった著作物について、他の共同著作者全員から著作権の譲渡を受け、単独の著作権者となる契約を締結するという方法があります。

なお、著作権の譲渡を受けた場合でも、著作者人格権の譲渡はされませんので、不行使条項を設ける必要があることにはご注意ください。

4、著作権について悩まれたら弁護士に相談を

複数人が関与して創作物を作成した場合には、共同著作物に該当するのか、それとも類似する結合著作物なのか、または職務著作なのか、といったそもそもどのような著作権に該当するのかという判断自体が難しいところがあります。

さらに、共同著作物となるとその運用にあたっても注意を要します。後のトラブルを防ぐためにも、創作の企画段階から弁護士へ相談し、著作権について整理をしておくことをおすすめします。

5、まとめ

複数人で創作物を作成することで生じる著作権の帰属については、複雑な問題を生じます。共同著作物の著作者間で紛争に至る場合や会社と従業員間での紛争が生じてしまう場合も少なくありません。

共同著作権では紛争に至る前の、企画段階から弁護士への相談をおすすめします。まずは、ベリーベスト法律事務所 立川オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています