ネットで見かけた文章を引用・転載したらNG? 著作権について解説

2019年12月24日
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ネットで見かけた文章を引用・転載したらNG? 著作権について解説

2019年1月4日より、立川市図書館がインターネット音楽配信サービスを導入していることをご存じでしょうか。このサービスについて、立川市は、著作権に配慮してサービスを導入したものと報道されています。

著作権という言葉は知っていても、どのような場合に著作権を侵害するか等のルールについてはあまり知らないという方は多いのではないでしょうか。近年は個人や会社のWebサイト作成において、知らず知らずのうちに著作権侵害などの著作権法違反をしてしまい、著作権者とのトラブルなど思わぬ落とし穴に陥ってしまったという事例もあるようです。

そのような事態に陥らないために、著作権のルールについてベリーベスト法律事務所 立川オフィスの弁護士が解説します。

1、著作権法の基本と、著作権法に触れる行為とは?

  1. (1)著作権とは?

    一般的に著作物とは、著作者の思想や感情を創作的に表現したものであり、さらに美術・音楽・文芸・学術などの範囲に属するものをいいます。そして、著作権とは著作物に対する著作者の権利であり、知的財産法第2条に定める「人間の創造的活動により生み出される」知的財産権のひとつです。

    著作権には、様々な側面があります。細かく分類すると、「著作者人格権」(公表権、氏名表示権、同一性保持権)と、「著作財産権」(複製権、上演権および演奏権、上映権、公衆送信権、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳権および翻案権など、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)があります。

    著作権は、著作物が制作された時点でなにもせずにも認められます。この点は、特許権とは異なります。なお、著作権は有償・無償に関係なく第三者へ譲渡することが認められていますので、実際に著作物を表現した者(著作者)と、権利を持っている者(著作権者)が異なることもあります。
    この著作権は、永遠に保護されるものではありません。日本では、実名の著作者による著作権の保護期間について、著作者が死亡してから50年が経過した時点までと定められています。

  2. (2)著作権法とは?

    著作権法とは、著作権に関するさまざまなルールを定めた法律のことです。

    著作権法の大きな目的は、著作物に対して著作権者がもつ正当な権利を第三者から守り、ひいては日本の文化の発展に寄与することにあります。著作物を作り出すためには、著作者にとって相応の努力や苦労があるものです。生み出された著作物によって利用者から得られた収入、たとえば本や音楽の印税などは、当然の権利として著作者に帰属してしかるべきです。

    ところが、作成した著作物を第三者がそっくりそのまま勝手に模倣し、あたかも当該第三者の著作物として利用者から収入を得るような「著作権侵害」があれば、著作者は報われません。また、第三者の模倣行為すなわち著作権侵害により自己の著作物に対する正当な収入を得られない著作者は、新たな著作物を作ることすら困難になってしまいます。このような事態が広く生じてしまうと、日本の文化の発展そのものが阻害されることになりかねません。

    このようなことを防ぐために、著作権法では著作権者の権利を明確化しており、それを侵害した第三者に対する損害賠償請求や罰則などについても規定しているのです。

2、著作権法違反等でのペナルティー

他人の著作物を無断で利用することは、著作権侵害となります。そして、著作権法違反に科されるペナルティーは決して軽いものではありません。

著作権侵害に対するペナルティーには、民事上のものと刑事上のものがあります。

  1. (1)民事上のペナルティー

    著作者は、その著作権を侵害した第三者に対して以下の4点を請求することで、著作権侵害に対抗することができます。

    • 著作権を侵害している人またはその可能性がある第三者に対し、著作権侵害の停止または予防を請求する「差止請求」(著作権法第112条)。
    • 著作権を侵害されたことにより生じた損害について、具体的な金額が立証できなくても推定により賠償を請求できる「損害賠償請求」(民法709条および著作権法第114条)
    • 著作権を侵害した第三者が、その行為により受けた利益について著作権者に返還することを請求する「不当利得返還請求」(民法第703条および第704条)
    • 著作権を侵害した第三者に対し、謝罪広告の掲載など著作権者の名誉を回復する措置を請求する「名誉回復等の措置請求」(著作権法第115条および第116条)
  2. (2)刑事上のペナルティー

    著作権者がいるとの認識のもと行われた著作権の侵害は、れっきとした犯罪行為です。捜査機関による捜査や裁判などを経て最終的に著作権侵害に科される罰則は、著作権法第119条の規定により「10年以下の懲役」「1000万円以下の罰金」の一方または両方です。

    仮に会社ぐるみで著作権を侵害したとしても、著作権法124条1項および3項の規定により、会社には会社に対して・それに加担した従業員には従業員に対して、それぞれ罰則が科されます。そのため、会社が行った著作権侵害については、会社だけでなく加担した従業員も罰せられるおそれがあります。

    なお、著作権侵害に対する法人つまり会社への罰則は「3億円以下の罰金」です(著作権法第124条1項1号)。

3、正しい引用のルールとは?

「他人の著作物を使うときは必ず著作権者の許可を得なくてはいけない、場合によっては使用料などのお金がかかるかもしれない」と思うかもしれません。しかし、そのようなことはなく、著作権法では、著作権者の許可を得なくても著作物を利用できる例外的規定を設けています。

そのひとつが、「引用」です。

著作権法第32条および過去の判例によりますと、以下の要件の全てを満たす場合には、引用として、無断で他人の著作物を用いたとしても著作権侵害や著作権法違反になりません。なお、引用の対象は文章・画像・動画など、種類を問いません。

  1. (1)公表された著作物からの引用であること

    ここでいう「公表された」とは、書籍として出版されていたりインターネット(ブログ・Webサイト)で公開されていたりなど世間に発表されており、不特定多数の人が目にすることのできる著作物をいいます。

  2. (2)引用する必要性があること

    たとえば、すでに公表されている文章や画像に対するコメントをテーマにしたコンテンツを作成する場合、その文章や画像のオリジナルがないと読み手には伝わりにくいものです。この場合は作成するコンテンツの目標を達成するためは、引用の必要性があるということになります。

    言い換えると、コンテンツの内容に何も関係のない文章や画像の引用は、そもそも引用する必要性がないわけですから、基本的に認められません。

  3. (3)明瞭区別性があること

    明瞭区別性とは、引用した部分がはっきりと示されており、引用した人が作成した部分と客観的に区別できることをいいます。たとえば引用してきた部分をカギカッコで括る、blockquoeタグやCSSを用いるなどして、引用した部分どこなのか誰が見てもはっきりと分かるようにしておくことです。

  4. (4)主従関係が明確であること

    たとえ他の著作物から引用してきたとしても、あくまで自分が作成したものが「主」、引用したものは「従」でなければなりません。引用したものが「主」であるようなコンテンツは認められないのです。引用したものの活用は、自分が作成したものの参考や根拠を示す程度にとどめておきましょう。

  5. (5)出どころが明示されていること

    他人の著作物を引用した場合は、それをどこから引用したのかを明示しておくことです。これは著作権法第48条にも規定されています。

  6. (6)引用したものを改変していないこと

    著作者の意に反した著作物の改変は認められていません。これは著作物を引用する場合も同様です。これは、著作権法第20条に規定されています。

    ただし、文章の要約のように「その利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる」改変は例外とされていますが、著作権者による原文の趣旨や意味そのものに対する改変は、基本的に認められないと考えられます。

4、フリー素材についてもご注意を

これまでご説明したように、著作権に対する権利の保護は厳しいものがあり、たとえ引用する場合においても方法を誤れば著作権侵害になります。したがって、引用だからといってむやみに他人の著作物を引用することには慎重になったほうが無難でしょう。

そうなれば、Webサイトを作る際はフリー素材の活用をご検討されるかと思います。フリー素材とは無料で使用できるイラストや写真などのことであり、一度ダウンロードすれば複数のコンテンツに手軽に用いることができます。

ただし、フリー素材だからといっても著作権が完全に放棄されていないものも多く、商用利用禁止なのにもかかわらず商用利用をした場合などのように、利用規約を逸脱した利用に対しては、損害賠償請求などがされる可能性もあります。安易なフリー素材の利用が原因で、トラブルになることがあるのです。

これを防ぐために、フリー素材については事前に利用規約などを熟読し、その内容を把握したうえで利用する必要があります。

5、まとめ

もし他の著作物を引用することで、その引用が著作権法違反にならないかどうか迷ったとき、あるいはフリー素材の利用規約の解釈について迷ったときは、今後の無用なトラブルを避けるために弁護士へ相談することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所では、ワンストップで対応可能な顧問弁護士サービスを提供しています。もちろん、著作権にかぎらず幅広い範囲で対応可能です。著作権などに関するお悩みは、ぜひベリーベスト法律事務所 立川オフィスにご相談ください。

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