遺留分侵害額請求調停はどのように進める? 調停の流れとポイント
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東京都立川市の令和3年(2021年)の出生者数は1199名、死亡者数は1801名でした。被相続人が亡くなると相続が開始されますが、遺言書の内容によっては、遺留分についてもめるなどの、いわゆる「争続」になってしまうケースがあります。
遺留分問題について相続人間の話し合いがまとまらない場合は、「遺留分侵害額請求調停」を、管轄の家庭裁判所へ申し立てることも検討しましょう。
今回は遺留分の概要・遺留分侵害額請求調停の手続きや、遺留分侵害額請求を行う際のポイントなどをベリーベスト法律事務所 立川オフィスの弁護士が解説します。
出典:「統計年報~数字で見るたちかわ~2021(令和4)年版・第58号」(立川市)
1、遺留分とは?
「遺留分」とは、民法で定められている、法定相続人に保障される遺産の最低取得額です。
兄弟姉妹以外の相続人に認められており、自分の取り分を侵害された場合は、「遺留分侵害額請求」によって金銭の支払いを受けることができます。
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(1)遺留分=相続できる遺産の最低保障額
自分が所有している財産については、誰に、いくら贈与するかを自由に決められます。相続の際も同様で、誰に、いくら遺贈(遺言による贈与)するかは自由に決められます。
その一方で、相続権を有する法定相続人には、遺産の取得に関する合理的な期待が認められます。
そのため、財産を自由に処分する本人(被相続人)の権利と、法定相続人の相続に向けた合理的期待のバランスを図る必要が生じてきます。このバランスを図るための制度が、「遺留分」です。
遺留分を有する相続人が、遺留分を下回る財産しか取得できなかった場合には、「遺留分侵害額請求」を行うことで、他の相続人などから不足額に相当する金銭の支払いを受けられます(民法第1046条第1項)。
なお、以前は現物返還を原則とする「遺留分減殺請求」が定められていましたが、民法改正(2019年7月1日施行)によって、「遺留分侵害額請求」と改められ、金銭請求に一本化されました。 -
(2)遺留分が認められる相続人の範囲
遺留分が認められるのは、兄弟姉妹以外の法定相続人です(民法第1042条第1項)。代襲相続人にも、被代襲者と同等の遺留分が認められます。
具体的には、以下の者が相続人となる場合には遺留分が認められます。- ① 被相続人の配偶者
- ② 被相続人の子
- ③ 被相続人の孫以降の直系卑属
※代襲相続 - ④ 被相続人の直系尊属(父母、祖父母など)
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(3)遺留分割合の計算方法
遺留分割合は、以下の要領によって計算します(民法第1042条第1項)。
① 直系尊属のみが相続人である場合
遺留分割合=法定相続分×3分の1
② ①以外の場合
遺留分割合=法定相続分×2分の1
(例)- 相続人が被相続人の父・母の場合
→父・母の遺留分割合は各6分の1
※父・母の法定相続分は各2分の1 - 相続人が被相続人の配偶者・父・母の場合
→配偶者の遺留分割合は3分の1、父・母の遺留分割合は各12分の1
※配偶者の法定相続分は3分の2、父・母の法定相続分は各6分の1 - 相続人が被相続人の配偶者・子2人の場合
→配偶者の遺留分割合は4分の1、子2人の遺留分割合は各8分の1
※配偶者の法定相続分は2分の1、子2人の法定相続分は各4分の1
- 相続人が被相続人の父・母の場合
2、遺留分侵害額請求調停とは?
遺留分侵害額請求は、請求する側・される側の協議によることも可能ですが、激しい対立が生じて協議が成立しないケースも多いです。
その場合は、家庭裁判所に「遺留分侵害額請求調停」を申し立てることになります。
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(1)遺留分侵害額請求調停の流れ
遺留分侵害額請求調停の手続きの流れは、おおまかに以下のとおりです。
① 調停の申立て
請求される側の住所地の家庭裁判所、または請求する側・される側が合意で定めた家庭裁判所に、遺留分侵害額請求調停の申立書などを提出します。
必要書類や費用については、裁判所ウェブサイトをご参照ください。
(参考:「遺留分侵害額の請求調停」(裁判所))
② 調停期日
調停の申立てが受理された後、家庭裁判所によって調停期日が指定されます。
当事者は調停期日に出席し、調停委員との面談を行いながら調停(合意)の成立を目指します。調停委員は民間の有識者から選任され、中立的な立場から当事者間の協議を仲介します。
当事者は交互に調停室へ入室し、調停委員に対して主張や希望を伝えます。相手方に伝えてもよい、伝えてほしくないといった要望を行うことも可能です。
調停委員は、当事者から聞いた話を踏まえて、調停(合意)の成立を目指して双方の説得を試みます。当事者は、訴訟に発展した場合の見通しや、早期解決のメリットなどを踏まえつつ、調停委員の説得を受け入れるかどうかをその都度判断します。
③ 調停成立or不成立
遺留分問題の解決内容について、当事者間で合意に達すれば調停は成立となり、調停調書が作成されます。調停調書は法的拘束力を有し、強制執行の申立てに用いることも可能です(民事執行法第22条第7号)。
これに対して、当事者間で解決の合意に至る見込みがなければ、調停不成立となります。 -
(2)遺留分侵害額請求調停にかかる期間
遺留分侵害額請求の調停期日の開催頻度は、おおむね1か月から2か月に1回程度です。当事者間で合意が成立する見込みがあるうちは、調停期日が繰り返されます。
スムーズに合意に至るケースでも、少なくとも3回前後は調停期日が開催されることが多いです。したがって、調停が成立するまでには、早くとも3~4か月以上の期間が必要となると考えたほうがよいでしょう。
遺留分の基礎となる財産が多額または多数に及ぶ場合には、さらに調停が長引くケースが多くなります。また1年以上経過した後、調停不成立となるケースも珍しくありません。 -
(3)調停不成立なら訴訟で争う
遺留分侵害額請求調停が不成立となった場合、引き続き遺留分侵害額請求を行うには、裁判所に訴訟を提起します。
遺留分侵害額請求訴訟の提起先は、以下のいずれかの地方裁判所です(請求額が140万円以下であれば、簡易裁判所も可)。- ① 被告の普通裁判籍の所在地(民事訴訟法第4条第1項)
- ② 原告の所在地(同法第5条第1項)
- ③ 相続開始時における被相続人の普通裁判籍の所在地(同条第14号)
訴訟では、遺留分侵害額請求権の存在を証拠に基づいて立証できるかどうかが焦点となります。
立証する具体的な内容は、
- 遺留分の基礎となる財産の存在
- 金額や被相続人と請求者の続柄
などになります。
3、遺留分侵害額請求を行う際のポイント
遺留分侵害額請求を行う際には、以下の各点に十分留意した上で対応することが大切です。
- ① 対象財産を漏れなく調査・把握する
- ② 対象財産の価値を適切に評価する
- ③ 時効期間に注意する|早めの対応を
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(1)対象財産を漏れなく調査・把握する
遺留分の基礎となるのは、以下の財産の総額です(民法第1043条~第1045条)。
<プラスの財産>- ① 相続財産(被相続人が死亡時に有した一切の財産・権利)
- ② 遺贈
- ③ 相続開始前の一定期間内※に行われた贈与
- ※相続人に対する贈与の場合は10年間(婚姻もしくは養子縁組のため、または生計の資本として受けたものに限る)、相続人以外の者に対する贈与の場合は1年間
<マイナスの財産>- ① 相続債務(被相続人が死亡時に有した一切の債務)
- ② 負担付贈与の負担の価額
相続財産や贈与された財産に把握漏れがあると、請求できる遺留分侵害額が減ってしまいます。そのため、遺留分の基礎となる財産を漏れなく調査・把握することが非常に重要です。
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(2)対象財産の価値を適切に評価する
不動産や未公開株式については複数の評価方法が存在し、どの方法を選択するかによって評価額が大きく変わる可能性があります。
遺留分の基礎となる財産に不動産や未公開株式が含まれている場合には、適切な評価方法を用いて価値評価を行うことが大切です。
弁護士に相談すれば、複数の評価方法を比較検討し、どの方法で主張すればベストであるか把握することができます。 -
(3)時効期間に注意する|早めの対応を
遺留分侵害額請求権は、相続の開始および遺留分を侵害する遺贈・贈与を知った時から1年が経過すると時効消滅します(民法第1048条)。
消滅時効の完成後、相手方に時効を援用されると、遺留分侵害額請求ができなくなってしまいます。
内容証明郵便の送付や調停申立てなどによって時効完成を阻止できます。遺留分侵害の可能性がある場合には、早めに弁護士へ相談するなどして対応に着手しましょう。
4、遺留分侵害額請求は弁護士にご相談を
遺留分侵害額請求によって適正額の遺留分を確保するためには、基礎となる財産の適切な把握と評価が重要になります。また、比較的短い時効期間にも注意しなければなりません。
弁護士は、さまざまな観点から相続財産の調査を尽くし、不動産や未公開株式については複数の評価方法を検討した上で、最大限の遺留分を確保できるようにサポートします。
時効期間の経過が迫っている場合には、時効完成を阻止するため、迅速に内容証明郵便の送付や調停申立てを行います。
遺言書や生前贈与の結果に納得できない方は、遺留分侵害額請求についてお早めに弁護士までご相談ください。
5、まとめ
遺言書や生前贈与によって侵害された遺留分の回復は、協議・調停・訴訟の手続きによります。特に調停・訴訟によって遺留分を回収するためには、法的根拠に基づく主張を展開できるかどうかがポイントになりますので、弁護士へのご相談をおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、遺産相続に関するご相談を随時受け付けております。遺留分問題についてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 立川オフィスにご相談ください。
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