死亡保険金の相続は課税対象? 受取人が支払う税金の仕組みと節税方法

2020年09月04日
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死亡保険金の相続は課税対象? 受取人が支払う税金の仕組みと節税方法

平成31年の立川市「年齢(各歳)別男女別人口」によると、60歳以上の割合が約30%を占めています。立川市では、高齢者がいきいきと生活ができるよう、さまざまなサービスを積極的に行っているようです。

さて、年齢を重ねるにつれ、自分がいなくなった後の家族の生活について考え始める方もいるでしょう。多くの方が、万が一のときに備えて生命保険に加入していると思います。残された家族が死亡保険金を受け取れば、生活資金として活用することができます。しかしながら、契約によっては、相続税や所得税、贈与税などが課せられることもあるため、注意が必要です。

今回の記事では、残される家族の負担を少しでも減らすために知っておきたい、生命保険金への課税の仕組みや種類などのポイントを、立川オフィスの弁護士が解説します。

1、死亡保険金にかかる税金の種類

死亡保険金とは、生命保険の被保険者が死亡したときの保障として、保険会社から保険料受取人に対して支払われるお金のことです。死亡保険金は、契約内容によって支払う税金が異なります。

ポイントとなるのは、「被保険者」「保険料支払人」「保険料受取人」それぞれの関係性です。

  • 被保険者……保険の対象となる人
  • 保険料支払人……保険料を支払っている人
  • 保険料受取人……死亡保険金を受け取る人


この章では、祖父・父親・息子の3者をモデルケースとして、発生する税金の種類を見ていきましょう。

  1. (1)相続税

    相続税とは、人が亡くなったときに、その財産を相続する人に対して課される税金のことです。以下のように、被保険者と保険料支払人が同一である場合は、「相続税」が発生します。

    • 被保険者……祖父
    • 保険料支払人……祖父
    • 保険金受取人……父親または息子


    「民法」の規定と照らし合わせると、相続税は、故人が生前保有していた財産を相続する際に課せられることになります。具体的には、現金などの金融資産や不動産など、金銭に見積もることができる経済的価値があるもの(これを「積極財産」と呼ばれています)に対して課されると考えておいてよいでしょう。

    他方、死亡保険金は、故人の死後に発生する財産です。「相続税法」で死亡保険金は、相続などにより取得した財産と同様の価値であるものとして扱われます。

    このような財産を「みなし相続財産」と呼び、相続税の課税対象とされています。

    ※なお、本コラムではこの「相続税」をメインとして解説していきます。

  2. (2)所得税

    所得税とは、個人の収入から、必要経費を除いて残った金額(所得)に対して課せられる税金のことです。

    以下のように、保険料支払人と保険料受取人が同一人物である場合は、所得税が課せられます。

    • 被保険者……祖父
    • 保険料支払人……父親
    • 保険料受取人……父親


    このように、保険料を支払った父親本人が保険料を受け取る場合、死亡保険金は「所得税」の対象となります。

  3. (3)贈与税

    贈与税とは、人から財産などを受け取った際に課される税金のことです。

    以下のように、被保険者と保険料支払人、保険料受取人、すべての人物が異なる場合、「贈与税」が課せられます。

    • 被保険者……祖父
    • 保険料支払人……父親
    • 保険料受取人……息子


    祖父が死亡し、保険料支払人である父親が存命である場合、保険料受取人である息子は、保険料支払人(父親)から保険料を譲り受けることになります。このように、お金を支払った者から存命中に財産を譲り受けた場合は、贈与税が課せられるのです。

2、死亡保険金を受け取る場合、非課税枠はいくら?

相続税が発生するケースでは、非課税枠を利用できます。詳しく見ていきましょう。

  1. (1)非課税枠とは

    非課税枠とは、課税を免除される金額のことです。
    死亡保険金を受け取っても、非課税枠の範囲内であれば税金を支払う必要はありません。非課税枠の範囲であれば、遺産から控除することができるからです。
    非課税枠を適切に活用すれば、税金を支払わずに死亡保険金を受け取ることができます。

  2. (2)相続税の非課税枠

    相続税の非課税枠は、「500万円×法定相続人の人数」で計算します。

    法定相続人とは、故人と以下のような関係性にある人のことです。

    • 故人の配偶者
    • 故人の子ども。その子どもがすでに死亡している場合は、その子どもの子ども、孫……と、続く(直系卑属)
    • 直系卑属がいない場合は、故人の父母や祖父母(直系尊属)
    • 直系卑属や直系尊属がいない場合は、故人の兄弟姉妹。兄弟姉妹がすでに死亡している場合は、その兄弟姉妹の子ども


    たとえば、死亡保険金として2300万円が発生したとしましょう。

    • 故人の配偶者は存命である
    • 故人の子どもは3人(A・B・C)。うちひとり(A)がすでに亡くなっている
    • Aには子どもがふたり(D・E)いる


    このケースで考えると、法定相続人は、配偶者・B・C・D・Eの5名で、非課税枠は2500万円(500万円×5人)となります。死亡保険金(2300万円)は非課税枠の範囲に収まるため、相続税を課税されることはありません。

    しかし、もしもAに子ども(D・E)がいなかった場合はどうなるのでしょうか。

    この場合、法定相続人は、配偶者・B・Cの3名で、非課税枠は1500万円(500万円×3人)です。死亡保険金(2300万円)が非課税枠よりも多いと、その超過分に課税をされるため、超過した800万円が課税対象となります。

    なお、相続放棄をした方は法定相続人ではなくなるため、非課税枠の法定相続人としてカウントすることはできません。先の例(法定相続人が配偶者・B・C・D・Eの5名のケース)でいえば、故人の子ども(B)が相続放棄をした場合、本来(B)の子どもが法定相続人になります。しかしながら、Bに子どもがいない場合は、法定相続人は4人(配偶者・C・D・E)となるため、非課税枠は2000万円(500万円×4人)となります。

    また、法定相続人ではない人が死亡保険金を受け取った場合は、非課税枠は利用できません。死亡保険金の受取人を設定する際には注意が必要です。

3、非課税枠を超えても相続税がかからないケースとは

死亡保険金が非課税枠を超えると、超過部分については、相続税を支払うのが原則です。しかし、非課税枠を超過しても、「基礎控除」を併用すれば課税されないケースがあります。

そもそも相続税は、一定額以上の遺産がある場合、申告が必要となるものです。その基準となる金額の境目が「基礎控除額」であり、基礎控除額を超えなければ、申告をする必要はありません。

相続税の基礎控除額は「3000万+600万円×法定相続人の数」と計算します。「故人の財産+死亡保険金-非課税枠」の合額が、基礎控除額を超えなければ、相続税を支払う必要はない、ということになります。

たとえば、以下のようなケースを考えてみましょう。

  • 故人の財産……3000万円
  • 死亡保険金……2300万円
  • 法定相続人……3名
  • 死亡保険金の非課税枠……500万円×3名=1500万円
  • 基礎控除額……3000+600万円×3人=4800万円


この場合、次のように考えられます。

①3000万円(故人の財産)+2300万円(死亡保険金)-1800万円(非課税枠)=3500万円
②「故人の財産+死亡保険金-非課税枠」の合額は、基礎控除額4800万円(3000万+600万円×3人)よりも低い

つまり、受け取った財産や死亡保険金は基礎控除額の範囲内に収まるため、相続税を支払わなくてもよいことになります。計算が難しい状況のときは税理士に相談したほうがよいでしょう。

4、相続税対策になる理由や保険料を自分で支払うメリットは?

一般的に、生命保険は受取人の相続税対策になるといわれています。実際のところ、死亡保険金はどのような点が相続税対策になるのでしょうか。保険料を支払うメリットも併せて解説していきます。

  1. (1)なぜ相続税対策となるのか

    これまで見てきたとおり、死亡保険金は、非課税枠や基礎控除の制度を活用できるものです。そのため、現金で資産を残す場合よりも、相続税を抑えることができるといえるでしょう。

    ただし、死亡保険金が「相続税」の対象となるためには、前述のとおり被保険者と保険料支払人が同一人物であることが条件のため、注意が必要です。契約形態によっては、所得税や贈与税の対象となり、思うような節税メリットを得られない可能性が考えられます。まずは契約内容を確認してみてください。

  2. (2)自分自身の節税対策にも

    生命保険の保険料を支払っている方は、一定の金額をご自身の所得から控除することが可能です。この控除を「生命保険料控除」といい、確定申告を行うことで、所得税と住民税を軽減できるのです。

    また、保険を解約したときに払い戻される「解約返戻金」や、保険期間終了時に受け取ることができる「満期保険金」は、「一時所得」として扱われます。「一時所得」は、課税対象となる額が低くなるように計算されるため、支払う税金を抑えることも可能です。

5、まとめ

本コラムでは相続が発生する際、死亡保険金にかかる税金について解説しました。死亡保険金は生命保険の契約により受け取れるものですが、契約形態によって相続税、贈与税、所得税などの税金が課税されます。残される家族のためを思って、せっかく契約した保険なのに、多大な税金がかかり、家族の受け取り分が減ってしまっては本末転倒です。

子どもたちに負担をかけない相続にしたい、死亡保険金などの保険内容と相続についてお悩みの方はベリーベスト法律事務所・立川オフィスへご相談ください。弁護士は法律的な見解から、ベリーベストグループに所属する税理士からは税金の面から、適切なアドバイスを行います。

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