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遺言書の効力・有効性とは|遺言の種類や無効になるケースを解説

2022年07月28日
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遺言書の効力・有効性とは|遺言の種類や無効になるケースを解説

裁判所が公表している司法統計によると、令和2年に東京家庭裁判所に申立てのあった遺言書の検認は、2995件でした。「遺言書の検認」とは、遺言書の偽造等を防ぐために、裁判官が遺言書を開封し内容を明らかにする手続きです。

生前の相続対策として、遺言書を作成している方も多いでしょう。しかし、遺言書の内容が不平等なものであったり、作成の経緯に疑義があったりする場合には、遺言書の有効性をめぐって、相続人同士でトラブルになる可能性があります。

今回は、
・ 遺言書の効力・有効性
・ 遺言書が無効になるケース
・ 3種類の遺言書とそれぞれの効力
・ 遺留分を侵害している遺言の効力
などについて、ベリーベスト法律事務所 立川オフィスの弁護士が解説します。

1、遺言の効力・有効性

遺言とは、ある者(遺言者)が死亡した後に、財産の処分や一定に身分行為を行う手段です。遺言者(=被相続人)が遺産分割の方法等について遺言書を作成していた場合には、原則、遺言書に従って遺産分割が行われます。

遺言制度は、遺言者の最終意思を尊重し、実現することを目的としています。しかし、遺言は、遺言者の死後に効力を発生させるものですから、遺言の内容に不明確なところがあっても、本人に確認することはできませんし、訂正することもできません。そのため、遺言は、法律によって方式や要件が厳格に定められています。

また、遺言でなんでも自由にできるとすると、他の人の利害関係に影響を与えかねませんので、遺言でできることも法律で定められています(法定遺言事項)。遺言事項以外の事項についての遺言は、法的な効力を持ちませんし、方式や要件を欠いた遺言は無効です

そのため、遺言書の作成経緯や内容について疑いがある場合は、遺言書の効力・有効性を争うことによって、遺言書の内容を覆すことができる可能性があります。

2、遺言の内容に必ずしも従う必要はない

遺言書が残されていたとしても、以下のような遺言については、必ずしもその内容に従う必要はありません。

  1. (1)無効な遺言書であった場合

    遺言書が法定の方式や要件を満たしていない場合には、当該遺言書は無効な遺言書となります。無効な遺言書については、遺言としての効力がありませんので、そのような遺言には従う必要はありません。

    どのような場合に遺言が無効になるかについては、「4、遺言が無効になるケース」で詳しく説明します。

  2. (2)法定の遺言事項以外の内容が含まれている場合

    上述のとおり、法律は、「遺言でできる行為」(=遺言書に記載された場合に、法的効果が生じるもの)を定めており、これを「法定遺言事項」といいます。そして、法定遺言事項以外のもの(葬儀方法の希望、遺留分侵害額請求の自粛など)を「付言事項」といいます。

    付言事項を遺言書に記載をしても、遺言書そのものが無効になるわけではありませんが、付言事項は法的効果を持ちません。そのため、付言事項については、必ずしも従う必要はありません

    法定遺言事項には、以下のものがあります。

    ① 身分に関する遺言
    • 遺言認知(民法781条2項)
    • 未成年者後見人の指定(民法839条1項)
    • 未成年者後見監督人の指定(民法848条)

    ② 相続に関する遺言
    • 推定相続人の廃除及び取消(民法893条、894条2項)
    • 相続分の指定及び指定の委託(民法902条)
    • 遺産分割方法の指定及び指定の委託、遺産分割の禁止(民法908条)
    • 特別受益の持ち戻しの免除(民法903条3項)
    • 相続人相互の担保責任の指定(民法914条)
    • 遺留分侵害請求権の行使対象に関する別段の意思表示(民法1047条1項2号但書)
    • 遺贈(民法964条、配偶者居住権の遺贈については民法1028条1項2号)
    • 特定財産承継遺言(民法1014条2項)
    • 一般財産法人設立のための定款作成(一般社団・財団法人法152条2項)
    • 信託法上の信託設定(信託法3条2号)

    ③ 遺言執行に関する遺言
    • 遺言執行者の指定(民法1006条1項)
    • 遺言執行者の復任に関する別段の意思表示(民法1006条1項但書)
    • 遺言執行者の職務権限を制限する別段の意思表示(民法1014条4項)
    • 遺言執行者の報酬に関する遺言(民法1018条1項但書)

    ④ その他の遺言
    • 祭祀承継者の指定(民法897条1項)
    • 遺言の撤回(民法1022条)
    • 生命保険の受取人の指定・変更(保険法44条1項)
  3. (3)相続人全員の同意がある場合

    遺言書の内容が納得いかないものであったとしても、法定遺言事項であれば遺言者の意思を尊重して従わなければならないのが原則です。

    しかし、遺言書が存在したとしても、相続人全員と受遺者との間で合意ができており、かつ遺言執行者の同意がある場合には、遺言書と異なる遺産分割協議書を作成することが可能です(東京地裁昭和63年5月31日)。

    なお、遺産分割を禁止する遺言(民法908条1項)が存在する場合であっても、共同相続人全員の合意があれば、分割を実行することができます(片岡=菅野眞一編著『家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務〈第4版〉』日本加除出版(2021)425頁)。※否定説も存在します

3、3つの遺言の種類とそれぞれの効力

普通の方式による遺言には、以下の3つの種類が存在しています(民法967条)。それぞれの遺言の概要とその効力について説明します。

  1. (1)自筆証書遺言(民法968条)

    自筆証書遺言とは、遺言者が全文を自筆で書く形式の遺言書です。なお、封印は必須ではありません。

    全文、日付、氏名を「全て」自書し、これに印を押す必要があります。遺言者の筆跡を残す必要がありますので、パソコンを利用したり、代筆を利用したりして作成することはできません。

    遺言書に財産目録を添付する場合には、その目録については自書する必要はありません。もっとも、自書によらない財産目録を自筆証書に添付する場合には、目録の各頁(自書によらない記載が両面にある場合にはその両面)に署名・押印をする必要があります。

    ただし、遺言書には法律上厳格な要件が定められていますので、正確な知識がない場合、要件を欠いた無効な遺言になってしまうというリスクがあります。

  2. (2)公正証書遺言(民法969条、969条の2)

    公正証書遺言とは、公証役場の公証人が作成する形式の遺言書です。

    作成の方法は以下のとおりです。

    • ① 公証役場に行き、証人2人以上の立会のもと、遺言者が遺言の趣旨を口頭で公証人に直接伝えます。
    • ② 公証人が聞きとった内容を筆記し、遺言者及び証人に閲覧ないし読み聞かせします。
    • ③ 遺言者及び証人は、公証人の筆記が正確なことを確認して、それぞれ署名・押印をします。
    • ④ 最後に公証人が、方式に従って作成したことを付記して、署名・押印します。


    公正証書遺言は、証人2人の立ち会いが必要で、遺言書の作成に費用がかかるなど自筆証書遺言に比べて、ハードルが高い方法だといえます。

    しかし、公証人という専門家が作成する遺言であることから、形式や内容の不備によって遺言書が無効になるというリスクは大幅に軽減することができます

  3. (3)秘密証書遺言(民法970条)

    秘密証書遺言とは、遺言者が作成した遺言書を公証人と2人の証人にその存在を証明してもらう形式の遺言書です。

    作成の方法は以下のとおりです。

    • ① 遺言者が遺言書に署名・押印します。
    • ② 遺言者がその遺言書を封じ、遺言書に用いた印章を用いて封印します。
    • ③ 遺言書の入った封書を公証役場にもっていき、公証人1人及び証人2人以上の前に提出して自分の遺言書であること、その「筆者」の氏名・住所を申述します。
    • ④ 公証人が遺言書提出日と上記申述内容を封紙に記載した後、遺言者・公証人・証人が署名・押印します。


    秘密証書遺言は、本人以外は遺言書の内容を見ることができませんので、遺言内容を秘密にしたいという場合に用いられる方法です。

    自筆証書遺言のように遺言者が全文を自筆で書く必要はなく、パソコンを利用して作成することも可能です。パソコンを利用して作成した場合、基本的には、パソコンを操作した人物が「筆者」になります。

    しかし、秘密証書遺言は、他の方法に比べて手間がかかる上に、遺言書の内容に不備があった場合には無効になるリスクがあるため、自筆証書遺言や公正証書遺言に比べると利用件数は非常に少なくなっています。

4、遺言が無効になるケース

遺言書の有効性が争われる代表的なケースとしては、以下のケースが挙げられます。

  1. (1)認知症で遺言能力がない人が作成した遺言

    高齢で認知症になっている方が作成した遺言の場合には、遺言書作成時点で遺言能力がないと判断される可能性があります。

    遺言能力とは、遺言の内容とその結果を理解して行動できる能力のことをいいます。遺言書の作成は、法律行為にあたりますので、遺言者に遺言能力があることが必要になります。

    そのため、認知症高齢者が作成した遺言については、遺言の有効性が争われ裁判になるケースも少なくありません

  2. (2)遺言書が複数あった場合

    遺言者が、遺言書を作成した後に、気が変わって別の遺言書を作成するということもあります。前の遺言を破棄していればよいですが、そのまま残しておくと、遺言者が死亡した時点で複数の遺言書が存在することになります。

    このような場合には、日付を確認し、日付が新しい方の遺言書が有効となります。ただし、過去の遺言と最新の遺言を比較して、内容が抵触しない部分については、過去の遺言についても効力が認められることがあります。

  3. (3)遺言書が法定の形式を満たしていない場合

    自筆証書遺言の場合には、遺言書の要件を満たしていないことを理由として無効になることが少なくありません。

    たとえば、

    • パソコンで遺言書を作成した
    • 日付が「令和〇年〇月吉日」と記載されていた
    • 押印がなかった場合

    など、一部の要件を欠いた場合には遺言書の全体が無効となります。

    その他にも自筆証書遺言の作成の際にやってはいけないこともあり、

    • 夫婦で共同して遺言書を作成した(共同遺言は、民法975条で禁止されています。)

    場合にも遺言書全体が無効となる可能性があります。

    自筆遺言書正しい書き方については、法務省のホームページ「遺言書の様式等についての注意事項」で確認することができます。

  4. (4)加除訂正の方法に誤りがあった場合

    自筆証書遺言を作成する際に、記載内容を誤り、一部を削除したり、修正したりする場合には、民法で定められている以下のような厳格な方式に従って行う必要があります(民法968条3項)。

    • 訂正場所を指示
    • 変更した旨を付記
    • 付記部分に署名
    • 変更場所に押印


    加除訂正の方法に誤りがあった場合には、その変更のみが無効となり、遺言は変更のない遺言として効力を有するのが原則ですが、場合によっては、遺言全体ないし該当条項全体が無効になることもあります

5、遺留分を侵害する遺言はトラブルのおそれがある

遺言自体が有効であったとしても、遺言書の内容によっては遺留分をめぐるトラブルが生じるおそれがあります。

  1. (1)遺留分を侵害する内容の遺言も可能

    遺留分とは、相続人が最低限の遺産を確保することができるように設けられた制度です。遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に対して認められており、以下の割合が法律上保障されています。

    • 父母などの直系尊属のみが相続人である場合……法定相続分×3分の1
    • それ以外の場合……法定相続分×2分の1


    もっとも、遺言者が相続人の遺留分を侵害する内容の遺言書を作成することも可能であり、遺留分を侵害したからといって遺言が無効になることはありません。

    そのため、特定の相続人に対してすべての遺産を相続させる旨の遺言書を作成することも可能です。

  2. (2)遺留分を侵害された相続人による遺留分侵害額請求を受けるリスク

    遺留分を侵害する内容の遺言書も有効となりますが、遺留分を侵害するような不平等な内容の遺言書だと相続人間で不満が出てくることがあります。

    遺言書の内容に納得ができない相続人は、遺留分侵害額請求権を行使することによって、法律上保障されている遺留分に相当する金銭を請求することが可能になります

    将来の相続トラブルを回避することを目的として遺言書を作成しておきながら、遺留分に関する争いを招いてしまうというのは本末転倒です。遺言書を作成する場合には、できる限り相続人の遺留分にも配慮した内容にすることが大切です。

6、遺言の作成は弁護士に相談しよう

遺言書の作成を検討されている方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)トラブルの少ない有効な遺言書が作れる

    自筆証書遺言をする場合には、形式面と内容面から不備がないように作成する必要があります。また、公正証書遺言の場合には、形式面の不備で無効になるリスクは少ないですが、内容によっては相続開始後にトラブルが生じる可能性があります。

    このようにトラブルのない遺言書の作成をするためには、弁護士に相談しながら進めるのが安心です。

  2. (2)遺言執行者を指定することでスムーズな遺産分割が可能

    遺言書では、遺言内容を実現するために遺言執行者を指定することがあります。遺言内容によっては、複雑な内容が含まれていることもありますので、法律の知識のないまま進めてしまうと適切な執行ができない可能性があります。

    遺言書の作成を弁護士に依頼した場合には、遺言執行者についても弁護士に依頼することができます。スムーズな遺産分割を実現するためにも、遺言執行者は弁護士を指定しておくことをおすすめします

7、まとめ

相続対策として有効な遺言書ですが、形式や内容に不備があった場合には、遺言書自体が無効になってしまうリスクがあります。また、作成時の健康状態や経緯などによっては遺言書の有効性をめぐって相続人同士で争いになるリスクもあります。

トラブルの少ない有効な遺言書を作成するためには、遺言書の作成は弁護士に依頼をするようにしましょう。遺言書の作成をお考えの方は、ベリーベスト法律事務所 立川オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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