SNSでの名誉毀損は逮捕される? 成立の条件や侮辱との違いを弁護士が解説

2021年09月02日
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SNSでの名誉毀損は逮捕される? 成立の条件や侮辱との違いを弁護士が解説

近年はSNSが活発に利用され、誰でも気軽に自分のコメントを発信できるようになりました。そうした中、インターネットの匿名性から、他者に対して攻撃的なコメントをしてしまう方もいるようです。

その後、「加害者として責任を問われるかもしれない」と不安に思う方も少なくないようですが、たしかに、インターネット上で誹謗中傷を行うと、身元を特定され、名誉毀損罪や侮辱罪にあたるとして警察に逮捕されるかもしれません。

このコラムでは、自分が加害者になってしまうかもしれないと不安に感じられている方に向けて、SNSやインターネット上での名誉毀損について解説しながら、誹謗中傷の書き込みで逮捕される可能性があるのかをベリーベスト法律事務所 立川オフィスの弁護士が解説します。

1、名誉毀損罪とは?成立の条件や侮辱罪との違い

名誉毀損が成立するためには、単に「私の名誉心が傷つけられた」というだけでは足りません。

テレビドラマなどでは、都合の悪い事実を指摘されると「名誉毀損で訴えるぞ」と反論するようなシーンがよく描かれています。しかし、このようなケースで名誉毀損罪が成立することは、ほとんどありません。

  1. (1)名誉毀損罪の根拠・罰則

    名誉毀損罪は、刑法第230条1項に規定されています。

    【刑法第230条1項】
    公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処する。


    最長で3年の懲役が科せられるため、決して罪の軽い犯罪ではありません。

  2. (2)名誉毀損罪が成立する条件と具体例

    名誉毀損罪は、次の条件を満たした場合に成立します。

    • 公然の場で
    • 事実を摘示し
    • 人の名誉を毀損したこと

    まず、「公然の場である」とは、不特定または多数の人に知れ渡る、または知れ渡る可能性がある状況を指します。衆人環視の前はもちろんですが、インターネットのように不特定多数がアクセス・閲覧できる場は公然性が認められます。

    「事実の摘示」とは、 人の社会的評価を低下させるに足りる具体的な危険のある事実という意味です。事実なので、たとえば「バカ」「貧乏人」といった抽象的な発言をしても事実の摘示にはあたりません。また、摘示した事実の内容が真実であっても、それが人の社会的評価を低下させるような事実であれば、「事実の摘示」があったと評価されます。

    「社会的評価をおとしめる」とは、人の社会的評価を低下させる危険を生じさせたことです。
    実際に社会的評価が下がったことを必要としません。社会的評価をおとしめる危険があればよいとされています。

    これら3つの条件がすべてそろうケースとして、たとえば次のような状況が考えられるでしょう。

    • SNSで「Aさんは会社でセクハラばかりしている」と投稿した
    • インターネット掲示板に「Bさんは前科がある」と投稿した

    一方で、同じ状況でも「Aさんはいやらしい人だ」「Bさんは悪いことをしそうな顔だ」といった摘示は、具体的な事実を指していないので名誉毀損罪は成立しません。

    また、事実を摘示する行為が、公共の利害に関することで、もっぱら公益を図る目的であり、内容が真実である場合、名誉毀損罪の成立が否定されます。

    たとえば、政治家の汚職情報をマスコミが公表する行為などは、たとえ対象者の社会的評価が下がる結果になったとしても、それが真実である場合には、名誉毀損罪は成立しません。

    これは、政治家が汚職したという事実は、公衆によって批判されるべきものであること(公共の事実)、このような情報を公表することは、公益に資するものであり、通常はそのような目的でされたと認められる(公共を図る目的)からです。

  3. (3)侮辱罪などとの違い

    名誉毀損罪と似た状況で成立する犯罪として、刑法第231条の「侮辱罪」や同233条の「信用毀損罪・業務妨害罪」があります。

    ●侮辱罪
    侮辱罪は「公然と人を侮辱すること」で成立する犯罪です。名誉毀損罪とは違って、具体的な事実を摘示しなくても成立します。
    罰則は、拘留または科料です。拘留なら30日未満の刑事施設における身体拘束、科料なら1万円未満の金銭徴収を受けます。

    ●信用毀損罪・業務妨害罪
    虚偽の風説を流布することで相手の経済的信用を毀損させた場合は「信用毀損罪」が、相手の業務を妨害すれば「業務妨害罪」が成立します。

    名誉毀損罪との大きな違いは、内容が虚偽であることです。

    簡単にいえば「うそのウワサを流してやろう」という故意が必要なので、内容が真実であれば信用毀損罪・業務妨害罪は成立しません。

2、SNSでの誹謗中傷は名誉毀損になるのか?

近年では名誉毀損罪という犯罪がごく一般的に知られるようになりました。少し以前までは、新聞や出版社などマスコミと芸能人・政治家といった有名人との間で生じるもので、一般個人が問題とするケースはまれだったようです。

ところが、インターネットが広く普及し、多くの人がSNSを利用している現代では、名誉毀損罪が非常に身近な犯罪になりました。

SNSにおける誹謗中傷でも、名誉毀損罪が成立する可能性は十分にあります。

インターネットは不特定・多数のユーザーが自由に閲覧できる場なので、「公然」の場であることは、明らかです。そのため、事実を摘示し、相手の社会的評価を低下させる危険を生じさせた場合には、名誉毀損罪に問われるでしょう。

また、具体的な事実の摘示がなくても人の社会的評価を低下させる危険を生じさせれば侮辱罪が、経済的な信用を傷つければ信用毀損罪が、業務を妨げれば業務妨害罪がそれぞれ成立します。

3、名誉毀損で逮捕される可能性はあるのか?

SNSで誹謗中傷の書き込み・投稿をしてしまい、相手から「警察に訴える」といわれてしまうと、誰でも「警察に逮捕されるのだろうか?」と不安になるでしょう。

誹謗中傷の書き込み・投稿が名誉毀損罪にあたるとすれば、加害者として警察に逮捕されてしまうのでしょうか?

  1. (1)逃亡・証拠隠滅のおそれがあれば逮捕される

    罪を犯すと警察に逮捕される、という印象があるかもしれません。しかし、実際には、罪を犯したとしても、必ずしも逮捕されるというわけではありません。


    逮捕されるかどうかは、逃亡または証拠隠滅のおそれがあるかという点が重要になります。名誉毀損罪にあたる行為があったとしても、逃亡・証拠隠滅のおそれがない場合、警察は逮捕をすることができません。

  2. (2)起訴には被害者の告訴が必要

    名誉毀損罪は、検察官が起訴するためには被害者の告訴を要する「親告罪」と呼ばれる犯罪です。たとえ検察官が「起訴するべきだ」と判断する悪質な内容でも、被害者が告訴の意思を示さない限り起訴されません。

    起訴されないということは、刑事裁判にかからないということです。刑事裁判にかからないと、有罪になり前科がつくことはありません。

  3. (3)逮捕される可能性

    誹謗中傷で問題となる名誉毀損罪で逮捕になる可能性は、一般的には高いものではありません。刑事事件として扱われる段階であれば、証拠として保全されている可能性が高いため、証拠を隠したりすることは一般的には困難です。

    また、書き込みが自分では削除できなかったり、記録として残ってしまっている場合もあるので、証拠を隠すことはできないこともあります。そして、逃亡のおそれについても、重い刑罰が科される可能性が低いときには、逃亡のおそれも低いものと判断されることが多いです。

    もしも、突然の逮捕が心配だというときには、出来る限り逮捕されることを避けられるよう、早めに弁護士と相談をされてもよいでしょう。

4、名誉毀損にあたる行為をしてしまった場合にやるべきこと

SNSで誰かを誹謗中傷してしまった場合、刑事上・民事上の責任を追及されるおそれがあります。これらを回避するには、被害者との示談がもっとも有効です。

被害者との示談交渉を進めるためには、法律問題の専門家である弁護士に一任することをおすすめします。

  1. (1)被害者との示談交渉

    名誉毀損罪は親告罪なので、被害者が告訴しない限り起訴されることも刑罰を受けることもありません。被害者との示談交渉の場をもち、謝罪のうえで示談金を支払うことで許しを得られれば、告訴が取り下げられる可能性があります。

    また、示談金を支払うことで、被害者が被った精神的苦痛に対する慰謝料と、実際に生じた損害に対する賠償金の支払い義務も果たしたことになります。

    刑事責任を回避できるだけでなく、民事責任も法廷外で解決できるので、示談交渉による解決は非常にスマートな方法だといえます。

  2. (2)弁護士への相談

    被害者との示談を進めるには、弁護士に相談してサポートを得るのがおすすめです。

    まず、被害者との示談の場をもつためには相手が「どこの誰なのか」をはっきりとさせる必要があります。ところが、SNSでの名誉毀損では、相手のアカウント情報がわかるだけで、氏名・住所・連絡先といった詳しい情報はわかりません。

    弁護士のサポートを得られれば、アカウント情報から個人を特定し、被害者とのコンタクトが可能な場合があります

    また、被害者のなかには「許せない」という強い気持ちから、示談交渉をかたくなに拒否する人もいます。第三者である弁護士が間に入って交渉することで、被害者の警戒心や感情が和らぎ、冷静に示談交渉を進められるケースも少なくありません。

    さらに、一部の被害者には、自分が被害者であるという立場を逆手にとって、高額の示談金を提示してくる者もいます。数多くの事例を解決してきた弁護士なら、状況に応じた適正な示談金の額を熟知しているので、不当に高額な示談金を提示されても、適正な相場の範囲内で決着できる可能性が高くなります。

5、まとめ

SNSは、誰もが自由に意見や考え方を発信できる場です。ただし、他人への誹謗中傷と捉えられる書き込みや投稿は、名誉毀損をはじめとしてさまざまな犯罪に該当するおそれがあります。

しかし、仮に犯罪に該当するようなことをしてしまったからといって、過剰な責任を負う必要はありません。

もし、あなたがSNSにおいて名誉毀損などにあたる書き込み・投稿をしてしまい「相手に訴えられるのでは」と不安を感じているなら、ベリーベスト法律事務所 立川オフィスにご相談ください。

ITトラブル・刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が、被害者との示談交渉を進めてトラブルを解決へと導きます。また実際にあなたの発言が名誉毀損などの犯罪にあたるのかを専門的視点から判断する必要もあります。まずはお気軽にベリーベスト法律事務所 立川オフィスまでご一報ください。

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