【前編】未成年の息子がオレオレ詐欺で逮捕。早期に弁護士を選任すべき理由6つ

2019年06月25日
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【前編】未成年の息子がオレオレ詐欺で逮捕。早期に弁護士を選任すべき理由6つ

「オレオレ詐欺」の事件については、毎日のようにニュースで見聞きすることでしょう。立川警察署を含む東京都を管轄している警視庁の平成29年の資料によると、都内の未成年によるオレオレ詐欺などの振り込め詐欺は前年より増加し、低年齢化の傾向にあります。
また、最近では、「特殊詐欺」という呼び方もされています。

未成年の子どもがオレオレ詐欺に加担していたと知ったとき、家族はどうすればよいのでしょうか。今回は、未成年によるオレオレ詐欺の量刑や逮捕後の流れ、弁護士が担う6つの役割と適切な選任方法について立川オフィスの弁護士が詳しく解説します。

1、今も多発するオレオレ詐欺の実態と量刑

警視庁によると、「オレオレ詐欺」とは家族や親族、警察官などになりすまして被害者に電話をかけて現金の振り込みや郵送などを依頼する詐欺のことをいいます。

最近では、登場人物が複数登場する劇場型タイプが増え、振り込みだけでなく手渡しや郵送、宅配便を使ってお金をやり取りするなど、手口が複雑化しています。被害者の多くは高齢者ですが、芸能人ですらターゲットになることもあります。

  1. (1)オレオレ詐欺にかかわる各役割

    オレオレ詐欺は、被害者宅に電話をかける「かけ子」、金銭を受け取る「受け子」、金銭を金融機関から引き出す「出し子」と呼ばれる末端の役割があります。その他、携帯電話を用意する準備役、かけ子や受け子を紹介する紹介役もあります。

    冒頭の資料によると、オレオレ詐欺にかかわる未成年の約8割は受け子という結果も出ています。多くの場合、オレオレ詐欺と気付かずにこれらの仕事を請け、犯罪グループの幹部とは接触せずにアルバイト感覚で気軽に行っている……という実態があるようです。
    しかし、このような実態にもかかわらず、捜査機関がひとたび事件として把握すると、未成年者には厳しい末路が待っています。

  2. (2)一般的なオレオレ詐欺の量刑

    近時、オレオレ詐欺に対する量刑は非常に厳しいものです。成人している者がオレオレ詐欺の容疑で逮捕され、有罪となったときは、初犯や未遂に終わった場合でも懲役2年程度、末端の役割でも懲役1年6ヶ月から2年の実刑判決が出ることが少なくありません。
    裁判所も、近年の処罰感情の高まりの風潮を考慮し、たとえ初犯であっても厳罰に処することが多くなっています。

    一般的に、オレオレ詐欺で逮捕された場合以下の3つの罪に問われる可能性があります。

    ●詐欺罪
    オレオレ詐欺で被害者をだまし、金銭やキャッシュカードを受け取ったときには、被害者との関係で詐欺罪が成立します。刑法第246条では、詐欺の行為は10年以下の懲役に処すると規定されています。

    ●窃盗罪
    他人の口座から金銭を引き出したときには、ATMを管理する銀行等との関係で窃盗罪が成立します。刑法の第235条では、窃盗の行為は10年以下の懲役、または50万円以下の罰金を処すると定めています。

    ●組織的詐欺罪
    詐欺が組織的に計画され実行に至った場合、組織的な犯罪の処罰および犯罪収益の規制等に関する法律第3条によって組織的詐欺罪に問われるケースがあります。

2、未成年がオレオレ詐欺で逮捕された際の流れ

未成年の子どもの刑事事件の区分と、逮捕されたときの流れを解説します。

  1. (1)未成年による少年事件とは

    刑事事件の中でも、未成年が起こした犯罪は「少年事件」と呼ばれます。なお、法律上の「少年」とは、性別を問わず「家庭裁判所で審判が行われる時点で20歳未満の者」を指しています。逮捕された少年は少年法により下記の3つに分類されて処分を検討されることになります。

    ●犯罪少年
    法律上の犯罪行為をした14歳以上の少年を指し、成人と同様の刑事責任能力が生じます。オレオレ詐欺で逮捕された場合は、14歳以上であれば犯罪少年として処分を検討されることになります。

    ●触法(しょくほう)少年
    法律上の犯罪行為をした14歳未満の少年を指します。刑事責任は問われないために逮捕されません。オレオレ詐欺で14歳未満の子どもが捕まった場合は、逮捕されることはありません。ただし、保護を受けることはあるでしょう。

    ●虞犯(ぐはん)少年
    今後、犯罪行為が懸念される少年を指します。

  2. (2)未成年の逮捕から起訴までの流れ

    少年事件は、成人が刑法犯になったケースとは異なり、原則として刑罰を与えるのではなく更生して社会に復帰できるように処分が決められます。そのため、14歳以上の子どもによる少年事件が起きたときには、一部を除いて成人の場合とは異なる手続きが行われることになります。

    それでは、14歳以上の子どもがオレオレ詐欺などで逮捕されたときの流れを簡単に解説します。

    ●逮捕から起訴まで
    事件が発覚し、逮捕されたあとは48時間以内に警察署で取調べが行われます。警察の捜査が終了すると被疑者である子どもは検察へ送致され、送致から24時間、逮捕から78時間以内で取調べを受けます。

    この間、原則として家族や知人による面会はできません。留置所等に身柄を拘束されている子どもに会い、直接話を聞くことができるのは依頼を受けた弁護士だけです。弁護士は係官等の立会いなくして面会することができます。

    ●家庭裁判所へ
    少年事件の場合、「全件送致主義」といって、どの事件も家庭裁判所に引き継がれます。家庭裁判所に引き継がれたあと、「観護措置」といって少年鑑別所で基本は2週間、最大4週間身柄を拘束される可能性があります。

    少年鑑別所では、家庭裁判所の調査官が子どもについて心理テストや面談などを実施し、事件を起こした環境や心理、経緯などを分析して、更生するための方法が模索されます。

    ●少年審判成年の場合の刑事裁判に当たる「少年審判」は、対象となる少年が未成年であるため非公開で行われます。刑事裁判のように処罰を下すことを目的としているわけではなく、子どもが更生するために必要な処分を裁判官を交えて前向きに話し合います。

    ここで「不処分」となれば、子どもは釈放されます。他方、「保護観察処分」とは、子どもをいったん家庭に戻し、保護観察官などが生活指導を行いながら更生を図る方法等です。他にも、児童自立支援施設や少年院などの更生施設に送られ、社会復帰に向けて生活するケースもあります。

    審判によって「成人と同様の刑事処分が必要だ」と判断されると、家庭裁判所から検察官に事件が引き継がれます。その場合は、再度身柄が拘束される可能性が高いでしょう。なお、原則として、検察に引き継がれる可能性がある事件は、16歳以上の少年による殺人事件など凶悪な犯罪に限られます。かかわってしまった事件がオレオレ詐欺のみであり、非行性が高くないのであれば、検察へ逆送致されることはないでしょう。

  3. (3)身柄を拘束されない可能性もある

    子どもがオレオレ詐欺の事件に関与していても、逃亡や証拠隠滅の心配がなければ逮捕されずに済むこともあります。ここは弁護士の働きにも左右されるところです。弁護士が捜査機関を納得させられれば、逮捕を免れることも可能です。
    ただし、少年事件の場合は再犯の可能性なども含めて少年鑑別所での鑑定の必要性が判断されます。したがって、身柄が拘束される可能性が一般的には高いといえるでしょう。他方、弁護士が介入し、身柄拘束を回避するケースも多々あります。そのような場合には、裁判所が家庭の状況や事件の背景を調べ、在宅のまま捜査を進めます。

  4. (4)家族にできること

    万が一、オレオレ詐欺で子どもが逮捕されたときには、すぐに連絡のあった警察署や現場へ出向きましょう。状況にもよりますが、学校に連絡して正しい情報を伝え、今後について相談する必要が出る場合もあります。

    平行して少年事件の対応に経験豊富な弁護士を探しましょう。弁護士に依頼することで、学校や仕事への影響を最小限に抑え、今後の人生をまっすぐ進めるようになる可能性があるためです。弁護士が子どものオレオレ詐欺において、できることは次の項目で詳しく解説します。


    後編では、オレオレ詐欺で逮捕された子どもについた弁護士が担う役割や、弁護士の選任方法について、立川オフィスの弁護士が解説します。

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