【後編】「AirDrop(エアドロップ)痴漢」で問われる罪とは? 逮捕される可能性はあるの?
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前編では、最近問題となっている「AirDrop痴漢」の概要や問われる可能性がある犯罪と刑罰などについて紹介しました。
後編は、「AirDrop痴漢」で逮捕されたり、書類送検されたケースを紹介するとともに、逮捕されたどうなるのか、被疑者の家族としてどのようなことができるのかについて、立川オフィスの弁護士が解説します。
3、「AirDrop痴漢」で逮捕されたケースはあるの?
「AirDrop痴漢」で逮捕されたケースは存在します。
平成30年には、兵庫県内において男性が、iPhoneの「AirDrop」機能で男性の局部画像を女性のiPhoneに送信したとして、同県迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されたという報道がありました。また、「AirDrop痴漢」で逮捕はされてはいないものの、電車内で近くにいた見ず知らずの人にわいせつな画像を何度も送りつけて閲覧させたとして、迷惑防止条例違反で書類送検されたというケースもあります。
「AirDrop痴漢」は、日本だけでなく欧米でも広がっており「サイバーフラッシング」と呼ばれています。平成30年12月にはニューヨークで、「AirDrop痴漢」に対して、1000ドルの罰金もしくは、最高1年の懲役を科すべきという法案が提出されています。「AirDrop痴漢」は、Twitter等でも多くの被害が報告されていますので、今後更に処罰される人が増える可能性もあるでしょう。
4、逮捕後の手続きの流れ
「AirDrop痴漢」に限らず、何らかの罪を犯し、逮捕された場合の逮捕後の流れを解説します。逮捕されたら、刑事訴訟法に定められた手続に沿って、処分が決まることになります。
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(1)逮捕後最大72時間の身柄拘束
逮捕されたら、被疑者として警察で身柄の拘束を受け、取調べを受けます。取調べを通じて警察は、被疑者を釈放するか、事件を検察へ送致するかを、逮捕から48時間以内に決定します。
検察に送致されると、今度は検察官による取調べが行われます。検察官は逮捕から72時間、送致から24時間以内に、引き続き被疑者の身柄を拘束し続けて取調べを行う勾留(こうりゅう)が必要かどうかを判断します。勾留が必要かどうかの判断基準は、証拠隠滅や逃亡の可能性の有無です。勾留が必要だと判断した検察官は、裁判所に勾留請求を行います。
検察官が被疑者の勾留の必要はないと判断すれば、被疑者は釈放されて在宅事件扱いとなります。この場合、被疑者は、後日取調べのために呼び出されることになります。勾留されなかったからといっても、処分が決まるまでは捜査に協力する必要があります。さらに、後日の取調べや捜査の結果次第では、起訴され、有罪となれば前科がつきます。 -
(2)最大20日間の勾留
裁判所が勾留を決定すると、被疑者は警察署内の留置所や拘置所に身柄を拘束され続けることになります。勾留期間は10日間ですが、さらなる捜査が必要であれば勾留期間が更に10日間追加されて、最長20日間勾留されることになります。
捜査を通じ、最終的に検察官が起訴又は不起訴という処分を決定します。勾留中であれば勾留期間中に処分が決まり、在宅事件扱いであれば、捜査が終わり次第、処分が決まりまることがほとんどです。
このとき、不起訴と決定されれば、刑事裁判を求めない処分がされたということになります。他方、起訴と決定されれば、刑事裁判を求める処分がされたということになります。 -
(3)裁判
起訴という処分には、略式請求と公判請求があります。勾留中に略式請求がなされた場合には、すぐに身柄は釈放され、書面上の手続きのみで刑罰が決まる略式裁判が行われます。 公判請求がなされた場合には、公開の法廷で審理され、判決が言い渡されることになります。勾留中に公判請求がなされた場合には、保釈が認められない限り、被疑者の身柄は拘束され続けることになります。
5、逮捕された場合にやるべきこと
「AirDrop痴漢」に限らず、身内の方が逮捕され、被疑者となった場合、ご家族としては、逮捕された被疑者が今、どんな状態にあるのか、どういった経緯で逮捕されてしまったのか、家族や職場に対する伝達事項はないのか、などといった点について不安に思うはずです。また、被疑者が逮捕されてから刑事裁判が終わるまでの長期間身柄が拘束されてしまうと、将来にわたる多大な影響を受けてしまう可能性がありますし、有罪判決となれば前科がつくことになります。
身内が逮捕されてしまった場合、ご家族がまずやるべきことは弁護士に被疑者と接見するよう依頼することです。
被疑者が逮捕され、身柄が拘束されてしまうと逮捕から勾留の必要性が判断される最長72時間の間は、家族ですら被疑者との面会が制限されます。警察官の立ち合いなく、被疑者と自由に接見を行えるのは、依頼を受けた弁護士のみに限られます。弁護士であれば、被疑者から事情を伺ったり、ご家族から被疑者に対する伝達事項があればお伝えすることも可能です。
さらに、被疑者が逮捕されてから、早い段階で弁護士にすると、弁護士は、検察官や裁判官に対し、勾留しないよう働きかけることが可能となります。
このように弁護士に依頼することで、まずは被疑者の逮捕後の勾留を免れるよう働きかけることができます。勾留されなければ、会社や学校に通うことも可能であり、今後は在宅事件として捜査が進められることになります。
被疑者が勾留されても、勾留されなくても、検察官が起訴又は不起訴の処分を決定するまでの間に弁護士は、不起訴処分を目指した弁護活動を行います。
「AirDrop痴漢」も、痴漢の場合と同様に、被害者との示談の有無や被害者の処罰感情の程度は、検察官が起訴又は不起訴を決定する際に重要視されます。したがって、弁護士は被害者との示談交渉に注力します。検察官が不起訴処分の判断をすれば、逮捕前と変わらない生活に戻ることができるでしょう。
また、仮に起訴されたとしても、示談の有無や被害者の処罰感情の程度は刑事裁判において、裁判官が刑罰を決めるにあたって、重要視されます。
このように「AirDrop痴漢」に限らず、何らかの犯罪で逮捕された場合に重要なのは、逮捕されてから起訴処分又は不起訴処分が決定されるまでの期間の弁護活動といえます。このような弁護活動を行うため、経験豊富な弁護士に依頼することが必要不可欠でしょう。
6、まとめ
「AirDrop痴漢」は、日本でもすでに逮捕されたケースのある、れっきとした犯罪行為です。 万が一、あなたの家族が「AirDrop痴漢」で逮捕されてしまったときや、「AirDrop痴漢」をしてしまい、逮捕されるかもしれないという不安があるときは、早急に弁護士に相談してください。ベリーベスト法律事務所・立川オフィスでも、今後の対応について適切なアドバイスを行うとともに、状況に応じた弁護活動を行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています