就活セクハラは犯罪? 会社バレのリスクや対処法を立川の弁護士が解説
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立川市は、東京都や大手転職サイトによる就職セミナーが開催されるスポットのひとつです。学生は、これらのセミナー参加に加えて、就活マッチングアプリなどを利用して社員訪問を行うなど、内定獲得に向けて積極的に行動を起こしています。
しかし、希望の企業に就職したいという学生の心理を逆手にとった、「就活セクハラ」が横行しているようです。OB・OG訪問やインターンシップ、面接など、学生と社員が接触するタイミングで行われ、社会問題となっていることはご存じのとおりでしょう。とはいえ、具体的な行為内容だけでなく、もしも、気づかぬうちにあなた自身がセクハラ加害者となっていた場合どのような罪に問われるのか、などを知らない方が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、就活セクハラとはどのような行為なのか、また、該当する犯罪や示談の必要性などについて、立川オフィスの弁護士が解説します。
1、就活セクハラとは
一般的に「セクハラ」とは、「セクシュアルハラスメント」の略称であり、性的嫌がらせとも表現される言動全般を指します。具体的には、相手が望まない性的な言動により、相手や周囲の人々を不快な気持ちにさせることなどを広く示す言葉です。
厚生労働省の指針において、セクハラは以下2つのタイプに分類されています。
職務上の地位などを利用し、性的な関係を強要するもの。拒否した場合、不利益を受けると感じさせたり、実際に不利益を与えたりする行為。
●環境型セクシュアルハラスメント
性的な関係の要求はしないが、職場内で性的な言動を行い、本人だけではなく周囲の人々も不快にさせる行為。
「就活セクハラ」は、上記における「対価型セクシュアルハラスメント」の一種です。具体的には、企業の社員や関連スタッフが、就職活動中の学生が持つ「就職したい」という気持ちを悪用し、採用や情報提供をちらつかせながら、わいせつな行為・言動をする、性的行為を求めるなどのことをいいます。セクシュアルハラスメントが就活生に対して行われたとき、「就活セクハラ」と呼ばれることになります。
被害者となる就活生は、内定が欲しいという気持ちが強くあるため、簡単には抵抗できせん。また、もし被害を訴えたとしても、世間の好奇の目にさらされたり、批判の対象になったりすることをおそれ、誰にも相談できずにいる被害者は少なくないでしょう。
2、就活セクハラは犯罪にあたることがある
就活セクハラは、言動の程度によっては犯罪行為にあたる可能性があります。
代表的な犯罪には、強制わいせつ罪や強制性交等罪がありますが、それ以外の犯罪に該当するケースも存在しているので、それぞれみていきましょう。
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(1)強制わいせつ罪
強制わいせつ罪は、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をすると問われる罪で、違反者には罰則として、6か月以上10年以下の懲役が科せられます(刑法第176条)。わいせつな行為とは、たとえば体に直接触れる、キスをする、服を脱がせるなどの行為を指します。
「拒否したら、内定は出さないよ」などと脅迫してわいせつな行為をすれば、強制わいせつ罪にあたる可能性があります。
また、学生に酒を飲ませ泥酔させたり、薬を飲ませたりして、抵抗不能な状態に陥らせ、またはその状態に乗じて、わいせつな行為をした場合、「準強制わいせつ罪」(刑法第178条1項)に科せられるかもしれません。
「準」とつくと、「強制わいせつ罪」よりも軽い罪であると思う方もいるかもしれませんが、これは「強制わいせつ罪に準じて処罰する」という意味にすぎず、同じく第176条により罰せられることになります。 -
(2)強制性交等罪
強制性交等罪(刑法第177条)は、暴行または脅迫を用いて、性交、肛門性交、口腔性交をすると問われる罪で、5年以上20年以下の懲役が罰則として定められています。
執行猶予は、懲役3年以下でなければつくことはありません。したがって、情状酌量の余地がないまま有罪になれば、すぐ刑務所で服役することになるでしょう。強制性交等罪は、かつて「強姦(ごうかん)罪」として定められていました。しかし、平成29年の刑法改正により、名称だけでなく対象行為の拡大、厳罰化などの変更が行われています。
また、学生に酒を飲ませるなどして抵抗不能な状態にさせ、またはその状態に乗じて無理やり性交等をした場合は、「準強制性交等罪」(刑法第178条2項)に問われ、同じ罰則で裁かれることになります。 -
(3)そのほかに該当し得る犯罪や民事上の責任について
上記の罪に該当しない場合でも、行動やその手口によっては、刑事事件に発展する可能性は否定できません。具体的には、公然わいせつ罪、傷害罪、暴行罪などのほか、都道府県が定める迷惑防止条例違反や軽犯罪法違反などの罪に問われることがあります。
たとえ身体的な接触がなかったとしても、性的冗談などを繰り返せば、名誉毀損(きそん)罪や侮辱罪などにあたる可能性もあるでしょう。
また、刑事事件に発展しなかったとしても、セクハラは人格権を侵害する行為であるため、加害者は被害者から、民事訴訟で慰謝料その他損害賠償請求される可能性があります。
3、就活セクハラに該当する可能性がある行為
報道などで「就活セクハラ」と呼ばれる事件を見聞きすると、ご自身の言動や行為が就活セクハラにあたるのか、不安や疑問に思う方がいるかもしれません。
セクハラそのものは法律で明確に定義づけされているわけではありませんが、次のような言動はセクハラ(就活セクハラ)と指摘されかねない行為です。
- 恋人はいるのか、結婚や出産の予定はあるのかなどと尋ねる
- 性的な冗談を言う
- カラオケ店の個室に誘う
- 夜遅い時間に呼び出す
- 内定に結びつく重要な資料があると言って部屋に連れ込む
自分ではセクハラではないと思っていた、あるいは、そもそもセクハラをするつもりはなかったと思う方もいるでしょう。しかし、相手が嫌だと思えば、たとえ逮捕や刑事罰には至らなくてもセクハラにあたる可能性があることは否定できません。
4、就活セクハラで逮捕されるとどうなる?
もしも就活セクハラによって警察に逮捕されると、刑事事件と同様の流れで手続が進みます。
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(1)刑事事件の基本の流れ
刑事事件を起こして逮捕された後の基本的な流れは以下のとおりです。
- 警察および検察から最大72時間の取調べ等の捜査を受ける
- 引き続き捜査の必要があれば、最長20日間勾留される
- 起訴・不起訴の判断をされる
昨今は就活セクハラが社会問題となっていることから、学生が自衛手段として録音などを行っていることもあり、証拠がそろえば起訴される可能性は否定できないでしょう。日本における刑事裁判では、検察官が確実に犯罪の証明ができると判断した事件のみが起訴される傾向があります。もしも起訴されると、非常に高い確率で有罪となり得るでしょう。
起訴されると刑事裁判へと移行し、約1か月後、刑事裁判(公判)を受けることになります。 -
(2)会社には知られてしまうのか
逮捕された事実について、捜査機関から直接、会社に連絡がいくことは通常は少ないのですが、就活セクハラの場合は、会社に知られる可能性が十分にあると考えるべきです。なぜなら、就活セクハラは、会社の採用業務と関連して起きている事件であるため、会社が無関係とはいえないからです。
警察は、会社に対して捜査の必要があると判断すれば、会社へ連絡する可能性が高いと考えられます。場合によっては、会社に対する捜索など会社に捜査の手が伸びる可能性もあります。また、警察・検察による取調べを受けている最長72時間は、基本的には弁護士以外の外部への連絡ができません。無断欠勤が長期化すると、自然と逮捕の事実が知られてしまうことも考えられるでしょう。
さらに、悪質なケースや有名企業における事件では実名報道も行われるため、テレビや新聞などで報道され、会社や家族に知られてしまう可能性は飛躍的に高まります。 -
(3)会社に知られるとどうなるのか
採用活動に乗じて行われる就活セクハラは、その性質上、会社の業務と密接に関わっているため、会社の責任問題・信用問題にも発展しかねない行為です。事件が会社に知られると、懲戒解雇などの厳しい処分が下されることも想定されます。
懲戒解雇は通常よほどの事情がなければ認められませんが、コンプライアンスの観点から、セクハラに厳しい態度をとる企業が増えており、セクハラ禁止規定などを整備している場合も多いため、これらの規定をもとに、解雇されるかもしれません。
5、就活セクハラには示談の成立が重要
「就活セクハラをした」と警察や会社から連絡が来ている状態であれば、まずは弁護士に相談しましょう。言動や行動が犯罪にあたるのか、慰謝料請求の対象になるのか、逮捕や解雇されないためにはどのような行動をとればよいのかなど、弁護士が法的なアドバイスを行います。
もしも弁護士から、セクハラにあたるとの見解を得た場合は、速やかに被害者との示談を進めましょう。示談には当事者同士の賠償金トラブルを法的に清算する意味合いがあります。したがって、示談により清算を終えれば、今後起こり得る民事的な損害賠償請求問題を回避できるため、紛争をまとめて解決することができます。
また、示談が成立すると、どのような条件で示談を行ったのかを記した「示談書」を作成することが一般的です。示談書には、今回の事態を口外しない取り決めである「守秘義務条項」や、寛大な心で加害者を許すという意思表示である「宥恕文言(ゆうじょもんごん)」などを盛り込むことで、以下の効果が見込めます。
- 守秘義務条項……会社や周囲への事態の発覚を防ぐ
- 宥恕文言……不起訴処分や減刑となる可能性が高まる
ただし、セクハラをした本人が学生に直接コンタクトをとったとしても、応じてもらえないことがほとんどでしょう。それどころか、余計に恐怖心をあおり、事態が悪化してしまう可能性が高いものです。捜査機関からも、直接の接触を禁じられるのが通例です。したがって、示談交渉は弁護士に一任することを強くおすすめします。
6、まとめ
今回は就活セクハラとなる行為や問われる罪、示談の重要性について解説しました。
セクハラは、人の体や尊厳を傷つけ、犯罪にも該当し得る大きな問題です。できるだけ早い段階で弁護士を選任し、最善の手を尽くしましょう。就活セクハラとして訴えられた、警察から出頭の要請が来たときは、ベリーベスト法律事務所・立川オフィスへご相談ください。適切な対応についてアドバイスをするとともに、早期解決に向けたサポートを行います。
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