露出行為はどのような罪に問われる? 逮捕後の勾留期間と対応を解説
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身体を露出する行為をやめられない……という方がまれにいます。立川市内はもちろん、八王子市など、近隣の市区町村でもたびたび目撃情報が寄せられ、各警察署が注意喚起しているので、ご存じの方も多いでしょう。
令和3年7月には、東京都豊島区の職員が公然わいせつ容疑で現行犯逮捕された、との報道がありました。
露出行為は、人に対して身体的な危害を加えるわけではありません。しかし、多くの方を不快な気持ちにさせ、迷惑をかけるものです。警察が認知すれば法律に違反する行為として、事件として取り扱われ、捜査の対象となる可能性があります。その後、起訴等がされ、有罪となった場合には、刑罰に処されて前科がつくことになります。
では、「露出」という行為が具体的にどの法令に抵触することになり、それぞれどのような罰を受けることになるののでしょうか。ベリーベスト法律事務所 立川オフィスの弁護士がくわしく解説します。
1、露出行為の罪と罰する法令
スーパーマーケットや公園など、誰にとっても身近な場所で、他人に下半身を見せてくるといった事例があります。当然ながらこのような行為は、周囲へ不快感を与えることに、異論を唱える方はいないでしょう。
では具体的に、どのような法律に違反することになるのかを解説します。
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(1)迷惑防止条例
迷惑防止条例は「公衆へ迷惑をかける行為」を防止することを目的として制定された条例です。「条例」とは、国ではなく地方公共団体が制定しているため、都道府県によって、詳細な内容に関しては多少の違いがあります。
東京都における迷惑防止条例の正式名称は「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」で、これを略するかたちで「迷惑防止条例」と呼ぶことが一般的です。
迷惑防止条例によって規制対象となっている行為は、痴漢や盗撮などの性犯罪をはじめ、つきまといなどの迷惑行為、ダフヤや押し売りなど違法な販売行為、粗暴行為など、非常に幅広く規定されています。
迷惑防止条例違反として逮捕される可能性があるのは、性器などを露出したわけではないが、下着等の露出や、卑わいな言動が伴う露出行為です。同条例第5条1項「何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為」及び第5条第3項「人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること」に該当する可能性があります。
なお、違反があった場合については第8条で「50万円以下の罰金または拘留もしくは科料」と定められています。 -
(2)軽犯罪法
下半身を露出するという行為は、迷惑防止条例のほかに、軽犯罪法違反に該当するケースもあります。
軽犯罪法の対象は、「軽微な秩序を乱す」などの行為を取り締まるための法律です。34もの項目が挙げられていて、20項目目に「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」として、「露出行為」が明記されています。
軽犯罪法違反で有罪となった際の処罰は、「拘留ないし科料」と冒頭に規定されています。つまり、「公衆の目に触れる可能性がある場所で、臀部(でんぶ)や太ももなどを、他人が嫌悪するような方法で露出する」と、軽犯罪法違反で処罰を受ける可能性があるといえるでしょう。
ただし、軽犯罪法違反の場合は、身柄を拘束する「逮捕」されることは例外的です(刑事訴訟法第199条1条但書)。
軽犯罪法違反にかかる露出事件を警察が認知して、犯人であることが疑われる「被疑者」を特定したとしても、すぐに逮捕手続とはならず、事情聴取のため出頭するよう要請がされることがほとんどです。その後も、基本的には「在宅事件扱い」として捜査が進むことになるケースがほとんどと考えてよいでしょう。
ただし、被疑者が住所不定であるか、出頭を求められたとき、正当な理由なく応じない場合であれば、逮捕される可能性があるため、注意が必要です。 -
(3)公然わいせつ罪
下半身などを露出する行為は、刑法第174条が規定している「公然わいせつ罪」に該当します。条文では「公然とわいせつな行為をした者」とありますが、性器を露出する行為が代表的でしょう。
ただ、「公然わいせつ」という行為の判断基準は意外と幅広いものです。公園や路上で、まったく知らない相手に性器を見せる行為だけでなく、次のような行為も、公然わいせつ罪に問われる可能性があります。- 公園や路上で性器を露出した
- ライブなどで全裸になった
- 公共の駐車場に停車させた自家用車の中で下半身を露出した
- 全裸になる様子や性交、自慰行為などを、インターネット上でリアルタイム配信した
- 大通りに面したベランダに出て、全裸で日光浴した
- 性器まで見せるストリップショーを開催した
公然わいせつ罪として起訴され、有罪となれば、「6ヶ月以下の懲役ないし30万円以下の罰金、あるいは拘留か科料」の罰則が科せられます。
2、露出行為によって逮捕され身柄を拘束される期間
露出行為を理由として「逮捕」された場合には、その他刑法犯などと同様、刑事訴訟法で定められたとおりの手順で捜査されることになります。
捜査に必要不可欠となることも少なくない「逮捕」や「勾留」は、一種の強制処分であり、憲法が保障している人の自由を制限するものでもあります。よって、捜査に必要な身柄の拘束についても、期間や許可を得る方法などが法律によって定められているのです。
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(1)逮捕の期間
公然わいせつ罪に該当する露出行為をした疑いがある「被疑者」は、現行犯逮捕されるケースが多い傾向があります。近年は、多くの目撃情報や防犯カメラの映像が残っていることも多々あり、特に常習犯として扱われれば、逮捕状が発行され、通常逮捕される可能性もあるでしょう。
逮捕状を発行する前に、警察から連絡が来て、「事情聴取を任意で行うため出頭してほしい」などと依頼されるケースもあります。任意なので、もちろん断ることもできますが、身に覚えがある場合は、素直に応じたほうがよいことが多いでしょう。出頭を断った場合、逃亡のおそれがある等として、突然逮捕されてしまう可能性があるためです。ひとりで出頭することに不安があるときは、弁護士に同行を依頼することを検討してください。
警察は、被疑者を逮捕したら48時間以内に、検察に事件や被疑者の身柄を送るか判断します。事件が検察に送られたあとは、24時間以内に、さらに身柄を拘束したまま捜査を続ける「勾留(こうりゅう)」の必要があるかどうかを判断することになります。 -
(2)勾留期間
検察官は罪証の隠滅や逃亡のおそれがあると判断した場合、裁判所に対して勾留請求します。勾留が認められると10日間、勾留延長が認められると合計最長20日間もの間、拘置所や留置場などで身柄が拘束され、捜査が進められることになります。
ただし、公然わいせつ罪に関しては、取り調べに対して協力的に対応していれば勾留期間が長引くケースはあまり多くありません。身元を保証している人物がいる、罪を認めて反省している、被害者となる目撃者との示談が成立しているなどの要素があれば、「在宅事件扱い」へ切り替えられる可能性もあります。自宅へ帰ることができますが、再逮捕を避けるためには、その後も捜査への協力は必要的と考えたほうがよいでしょう。 -
(3)起訴後
検察官は、捜査を通じて、今回の事件を起訴して裁判官に有罪か無罪か、また、どのような刑罰が適切かを判断してもらう必要があるかどうか検討します。検察官に「今回は示談も成立させていて本人も深く反省しているため、再び同じ罪を犯すことがなさそうだ」と判断されたり、証拠が不十分だったりしたケースは、「不起訴」となります。不起訴となれば、勾留中であればただちに身柄の拘束も解かれますし、前科もつきません。
検察が「起訴」を決めたときは、裁判所で罪を裁く手続き方法も指定されます。「略式起訴」となったときは、書類のみのやり取りで罪が裁かれることになり、自宅へ帰ることができます。一方、「公判請求」となったときは、裁判で罪を裁かれることになります。保釈手続を行い、保釈が認められない限り、裁判が終わるまで引き続き身柄が拘束されることになるでしょう。
3、露出行為の疑いで逮捕された際の弁護士によるサポート
露出行為に関して警察からの取り調べを受けるにあたっては、罪状を認める姿勢が刑罰を軽くすることになるでしょう。ただ、もしも、身に覚えのない疑いをかけられて冤罪(えんざい)であるとなれば、罪を認めるわけにはいかないでしょう。
いずれにしても、逮捕となれば、勾留が決まるまでの最大72時間は、家族や友人知人とは、連絡を取ることすらできません。その間、自由に「接見」と呼ばれる面会を行い、取り調べ対応のアドバイスをしたり、家族からのメッセージを橋渡ししたりできるのは、弁護士だけです。
刑事事件において、弁護士へ相談することは、メリットが大きく、非常に重要なことだといえるでしょう。被疑者となった方が不当に不利な状況に追い込まれることを防ぐこともできます。
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(1)被疑者が罪を認める場合
被疑者が罪を認めているとき、弁護士はまず、逮捕・勾留中であれば、不当な扱いを受けていないか、接見を通じて確認します。被疑者やその家族へも、今後のアドバイスを行うとともに、警察に対しても早期の身柄釈放を求め、弁護活動を行います。
特に重要なポイントは、やはり十分に反省し、それからどのように行動するかということです。その反省を形に示す方法として、被害者との「示談」交渉を進めることをおすすめします。警察や検察も、被害者がいる事件の場合は、示談が成立しているかどうかを非常に重視するためです。
一般的に刑事事件の「示談」では、加害者に被害者に対して謝罪と賠償を行うと同時に、被害者が「加害者を許した」という意味である「宥恕(ゆうじょ)」の文言を示談書に含めるケースが多いです。
加害者はすでに許されている場合には、警察や検察は、不起訴となる可能性が非常に高まります。ただし、常習で何度も逮捕された履歴があったり、悪質な犯行だったりすると、示談が成立しても起訴されることもあるでしょう。その場合でも、宥恕がされている場合には、処罰が軽くなる傾向があります。
示談は当事者同士の話し合いを通じて行われるため、被疑者本人や家族が交渉することも可能です。しかし、一般的には被害者となる目撃者は被疑者とは他人であり、加害者と連絡を直接とることは避けられ、警察も連絡先を教えてくれることはないでしょう。
そこで、刑事事件においては、弁護士を介して話し合うことが一般的です。専門家である弁護士が示談交渉を担当することで、合意する内容が条件としてより良いものとなる可能性は高まります。
●反省を促す・現場に近づかないよう促す
露出行為に関しては、誰も見ていなかったなど「被害者不在」という例もあります。その場合は、示談ができません。そのような場合などには、反省の意を示す目的で、「贖罪(しょくざい)寄付」という寄付金を弁護士会へ納めるケースもあります。
そのほか、弁護士が露出行為をした現場に近づかないよう促すことや、カウンセリングをすすめる例もあります。被害者にとって、最寄りの場所で露出行為の被害に遭う例は少なくありません。また、性犯罪は常習となるケースが多いことから、カウンセリングを中心に精神科領域の治療を用いて認知のゆがみを矯正することによって、再犯を防ごうとするものです。治療に対して真摯に向き合うことは、それ自体、反省をしている態度として考慮されうるものです。 -
(2)無罪を主張する場合
露出事件については現行犯逮捕でない限りは、冤罪事件が発生することもあり得るでしょう。もし本当に冤罪であるならば、無罪を主張するべき場合も多いでしょう。
無実でありながら露出行為の疑いで取り調べを受けることになった場合は、早急に弁護士へ相談することをおすすめします。
●自白しないようサポート
早く帰りたいという思いや、取り調べの厳しさから、精神的に追い込まれてしまった被疑者が、やってもいないことを「やった」と証言してしまうケースもあるようです。事実ではない自白をしてしまうと、裁判の場で無罪を証明することは極めて困難な状況となります。
無実であるならばなおさら、黙秘権を行使することも重要です。しかし、前述のとおり、取り調べに臨んでいる間の被疑者は、孤独な状況に身を置かれることになります。そこで弁護士は被疑者を支え、対応の仕方についてアドバイスするなど、全面的なバックアップにあたり、事実と異なる内容の自白をすることがないようサポートします。
●証拠の信用性調査
弁護士は、捜査時の対応や法律知識のレクチャーに加え、逮捕・勾留期間中にも依頼者の無実を証明できる証拠の収集を行います。
被害者の供述があるときは、再びその内容を精査することもあります。事件当時の精神状況から必ずしも確定的なものであるとは限らないためです。警察や検察が集めた証拠の信用性について調査し「穴」を見つけることで、被疑者となってしまった方の冤罪を晴らすことができます。
弁護士は、接見を通じて被疑者自身をサポートするとともに、警察や検察などに対してもアプローチをすることによって、事件の早期解決を目指すことができる、唯一の専門家なのです。
4、まとめ
露出行為はテレビニュースなどでも、よく取り上げられています。当然ですが、そのような行為へ及んではいけません。露出行為は迷惑防止条例や軽犯罪法でも規制されているものであり、公然わいせつ罪に該当するものです。
残念ながら露出行為へ至ってしまった場合には、心から反省し、目撃者などの実質上の被害者がいるときは示談交渉を試みるべきでしょう。示談が成立すれば、起訴されて有罪が確定するなど最悪の事態は回避できる可能性が高まります。
もしも無実の罪である場合は、安易に事実と異なる自白をせず、無実を主張するべき場合も多いです。まずはベリーベスト法律事務所立川オフィスへ相談してください。刑事事件対応の経験が豊富な弁護士が、早期解決を目指して力を尽くします。
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