少年が銃刀法違反で逮捕されたら? 成人の罰則との違いなど解説
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令和3年6月、立川市内のホテルにおいて派遣型風俗店で働いている男女2名が殺傷される事件が発生しました。警視庁は、無職の19歳の少年を殺人未遂の容疑で逮捕しましたが、その後に殺人と銃刀法違反の疑いで再逮捕しています。
事件を起こした少年は、ホテル内で女性の胸など約70か所を包丁で刺して殺害しましたが、包丁のようなどこの家庭にでもあるような刃物でも銃刀法違反に問われるのでしょうか?また、この事件の容疑者は19歳の少年ですが、未成年の少年が銃刀法違反で逮捕された場合はどのような処分を受けるのかも気になるところです。
本コラムでは、少年が銃刀法違反で逮捕された場合の流れや処分の内容などをベリーベスト法律事務所 立川オフィスの弁護士が解説していきます。
1、銃刀法とは? 規制の内容と違反の典型例
銃刀法とは、正確には「銃砲刀剣類所持等取締法」といいます。その名のとおり「銃砲」と「刀剣類」の所持や使用などに関して危害予防のうえで必要な規制を定める法律です。
まずは銃刀法が定める規制の内容や違反の典型例を確認しておきましょう。
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(1)銃砲に関する規制
銃刀法における「銃砲」とは、けん銃・小銃・機関銃・砲・猟銃など、金属製の弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲および空気銃と定義されています(銃刀法2条1項)。銃砲については、銃刀法第3条の規定に従い、法令に基づいて職務のために所持する場合や検定に合格したうえで狩猟などのために特別に所持する場合などを除いて、原則、所持禁止です。
主に暴力団同士による抗争や無許可での猟銃所持などに適用されることが多い規制ですが、少年に無関係だとはいえません。
たとえば、ネットオークションやフリマアプリなどで殺傷能力を有する改造モデルガンを手にしてしまい、銃刀法違反に問われるおそれもあります。
なお、令和4年3月15日に施行される改正銃刀法では、ボーガン・クロスボウも銃砲のひとつとして規制対象となります。同年9月までに許可を得るか、あるいは警察に引き渡さないと、不法所持として処罰の対象となるので注意が必要です。 -
(2)刀剣類に関する規制
「刀剣類」とは、「刃物」のうち、次に挙げるものが該当します。
なお、「刀」「やり」「なぎなた」「剣」「あいくち」は、社会通念上、各々の類型に当てはまる形態・実質を備える刃物と解されています(大阪高裁平成2年9月14日、最高裁昭和31年4月10日判決参照)。- 刃渡り15センチメートル以上の刀
- やり・なぎなた
- 刃渡り5.5センチメートル以上の剣
- あいくち
- 45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛び出しナイフ
これらも銃砲と同じく、法令に基づいて職務のために所持する場合や研究・祭礼・演劇・舞踊などの目的で特別に許可を受けない限り、所持は禁止です。
また、銃刀法第22条には「刃物の携帯禁止」の定めがあります。
業務そのほか正当な理由による場合を除き、刃体の長さが6センチメートルを超える刃物を携帯することは禁止です。ここでいう「携帯」とは、自宅や居室以外の場所で刃物を手に持ち、あるいは身体に帯びるなどして、これをただちに使用できる状態で身辺に置くことをいい、かつ、その状態が多少継続することと定義されています。
たとえば、販売店で包丁を購入して自宅へと持ち帰る最中であったり、調理師が勤務先に向かう際に包丁をバッグに入れて持ち運んだりといった状況は「業務」や「正当な理由」となるでしょう。
一方で「護身用として」「相手を驚かせようとして」などの理由による携帯は違法です。
冒頭で紹介した事例のように、トラブルの相手を攻撃するために自宅から包丁を持ち出したといったケースは、業務にも正当な理由にも該当しないため、当然、違法になります。
2、少年が銃刀法に違反した場合の処分
銃刀法による規制には、未成年の少年や成人の区別がありません。ただし、違反行為に対する処分には違いがあります。
ここでは、とくに刀剣類に関する規制に注目して少年・成人の処分の違いを確認していきましょう。
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(1)成人の場合の処分
20歳以上の成人が銃刀法第22条に違反して刃体の長さ6センチメートルを超える刃物を携帯した場合は、刑事事件手続を経て、同法第31条の18第3号の規定に従い、2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
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(2)少年の種類
少年が銃刀法違反を犯した場合は、年齢等に応じて手続及び処分が異なります。なお、「少年」とは、20歳に満たない者をいいます(少年法2条1項、改正少年法2条1項)。
- 14歳未満の場合
14歳未満の者による行為は、刑法第41条に従って「罰しない」と定められています。
少年事件において14歳未満の者は「触法少年」(少年法3条1項2号)に分類され、たとえ銃刀法に違反しても、原則、少年審判の対象にもなりません(少年法6条の6第1項・同法6条の7第1項非該当及び児童福祉法27条1項4号非該当並びに少年法3条2項等)。そのため、誓約書を提出させるなどの児童福祉法上の措置が取られます。 - 14歳以上の場合
14歳以上で罪を犯した者は「犯罪少年」に分類されます。
犯罪少年は、成人のような刑事事件手続ではなく更生を目指した少年審判手続を経て、保護処分等最終的な処分が決定されます。 - 18歳・19歳の場合
令和4年4月に施行される改正少年法では、民法の成年年齢の引き下げを受けて18歳・19歳の少年を「特定少年」(改正少年法62条柱書)に分類することになっています。
犯罪少年と同じく、刑事手続ではなく少年審判手続の対象になるものの、一定の重罪を犯したときは原則刑事手続に移行します(改正少年法62条2項)。また、起訴されれば実名報道も解禁されてしまいます(改正少年法68条)。
- 14歳未満の場合
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(3)少年に対する保護処分等
少年に対する保護処分等は次のとおりです。
〈保護処分〉
● 保護観察処分
日常生活を送りながら更生を目指す処分です。
定期的に保護司と面接するなどの義務も課せられます。
● 更生施設への送致
児童自立支援施設・児童養護施設・少年院といった施設に収容されて教育的な更生教育を受ける処分です。
なお、収容対象者は、18歳未満の「児童」です(児童福祉法4条1項)。
● 少年院送致
少年を強制的に閉鎖施設に収容し、規律ある生活を行わせ、矯正教育を行わせる処分です。
〈その他の処分〉
● 検察官送致
家庭裁判所の裁判官が「成人と同じく刑罰を受けるのが適当」と判断した場合は、さらに検察官へと送致されます。
検察官から家庭裁判所へと送致された事件について、さらに家庭裁判所から検察官へと送致することから「逆送」と呼ばれます。
● 都道府県知事・児童相談所長への送致
児童福祉法上の措置が相当であると家庭裁判所が認めたときに決定されます(少年法18条1項)。
不良行為を犯した、またはそのおそれのある児童などを入所させて必要な指導をおこなう児童自立支援施設に収容する処分です。
● 不処分
特段の処分を要せずとも更生可能と判断された場合に下される処分です。
なお、保護処分を下す必要がないと判断された場合は審判不開始となり、少年審判は開かれません。
3、少年事件で逮捕された場合の流れ
14歳以上の犯罪少年が銃刀法違反を犯した場合は、必要に応じて逮捕されます。逮捕後の流れを確認していきましょう。
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(1)逮捕・勾留による身柄拘束
警察に逮捕されると、ただちに48時間を限度とした身柄拘束を受けます。さらに検察官へと送致され、そこでも24時間を限度とした身柄拘束を受けたうえで取調べがおこなわれます。
検察官が「さらに身柄拘束が必要」と判断して裁判官に勾留を請求し、裁判官がこれを認めれば、原則10日間、延長請求によってさらに10日間の合計20日間にわたる身柄拘束を受けます。 -
(2)家庭裁判所への送致
ここまでの流れは成人と同じです。
事件の捜査が終了すると、成人事件であれば検察官が起訴・不起訴を決定します。しかし、少年事件では少年の特性に考慮した専門的な判断が必要となるため、検察官から家庭裁判所へと送致されます。
少年の場合は、家庭裁判所送致後、「観護措置」がとられることがあります。
観護措置とは、家庭裁判所が調査、審判を行うために、少年の心情の安定を図りながら、少年の身体を保護してその安全を図る措置です。
観護措置には、家庭裁判所調査官の監護に付する措置と(少年法17条1項)少年鑑別所に送致する措置とがあります(少年法17条2項)。 -
(3)少年審判における保護処分等の決定
送致を受けた家庭裁判所の裁判官は、事件や少年自身の調査を進めたうえで少年審判の要否を判断します。少年に対する保護処分が必要だと判断されれば、非公開のもとに少年審判が開かれて処分が決定されます。
4、少年が銃刀法違反の容疑をかけられて逮捕されたときの弁護士の役割
未成年の少年が銃刀法違反の容疑をかけられて逮捕されると、逮捕・勾留によって最長23日間にわたる身柄拘束を受けるおそれがあります。
さらに、事件の内容によっては厳しい処分を受ける危険もあるので、ただちに弁護士に相談してサポートを求めましょう。
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(1)逮捕直後のアドバイスや精神的なサポートに努める
逮捕直後から勾留が決定するまでの72時間は、たとえ家族であっても逮捕あれた少年との面会が認められません。このタイミングは重要な取り調べがおこなわれるため、どのような対応を取るのかはその後の手続きや処分に大きな影響を及ぼします。
弁護士は逮捕直後でも逮捕された少年との自由な接見が可能です。取り調べに対するアドバイスを提供するとともに、とつぜんの逮捕に大きな不安を感じている少年の精神的なサポート役にもなるでしょう。 -
(2)身柄の早期釈放を求めて捜査機関・裁判官にはたらきかける
たとえ不処分や保護観察になったとしても、逮捕・勾留によって社会から隔離されている期間が長引いてしまえば、学校や勤務先からの不利益な処分を受けてしまう危険があります。
できる限り早い釈放を求めるには、逃亡や証拠隠滅を図るおそれはない、家族による監督が行き届いているなどの状況を捜査機関や裁判官にはたらきかけなければなりません。
弁護士に依頼すれば、具体的な証拠をもとにこれらの点を主張できるので、勾留の回避や解除による早期釈放を実現できる可能性が高まります。 -
(3)付添人として少年審判に参加し処分の軽減を目指す
少年審判は、家庭裁判所の裁判官が少年に対して質問をするかたちで進行します。
いまだ精神的に未成熟である少年が、ありのままの事実を正確に証言し、自分の主張を認めてもらえるようにはたらきかけるのは難しいでしょう。
弁護士は、成人の刑事裁判における弁護人と同じように「付添人」として少年審判に参加できます。裁判官に対して少年が真摯に反省している状況を伝えるとともに処分の軽減を求めることで、不処分や保護観察といった有利な処分が得られる可能性が高まるでしょう。
5、まとめ
正当な理由なく刃物を携帯する行為は「銃刀法」に違反します。
14歳以上であれば逮捕・勾留による身柄拘束を受けるだけでなく、更生施設への収容といった厳しい処分が下されてしまうおそれもあるので、早い段階で弁護士に相談してサポートを受けましょう。
少年が銃刀法違反の容疑で逮捕されてしまった場合は、刑事事件・少年事件の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所 立川オフィスにご相談ください。経験豊富な弁護士が、少年の精神的なサポートと処分軽減に向けて全力でサポートします。
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