DNA鑑定したら実子ではなかった…養育費や嫡出の扱いなど離婚前に知りたいポイント
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立川市が公表している令和元年の統計年表によると、平成26年の離婚件数は466件でしたが、平成30年には423件に減少しています。平成26年から平成30年までの離婚件数の推移をみても徐々に減少していることがわかります。
しかし、同様に婚姻件数も減少していることから、全体としてみれば離婚をする夫婦の割合は依然として高いものといえるでしょう。
子どもが自分に似ていないことから、もしかしたら自分の子どもではないのではないかと考えてしまったことはありませんか。
そのような疑念を抱いたままでは、妻や子どもに対して十分な愛情が注げないかもしれません。自分の子どもかどうかをはっきりと確認するためにはDNA鑑定という方法があります。
もし、DNA鑑定をした結果、自分の子どもでないことが明らかになったときは、その後はどのようにすればよいのでしょうか。
今回は、DNA鑑定をしたら実子でなかったときに養育費や嫡出の扱いなどについてベリーベスト法律事務所 立川オフィスの弁護士が解説します。
1、養育費は支払う必要がある?
DNA鑑定によって実子であることが否定されたということは、生物学上の親子関係が否定されたということになります。
血縁関係のない子どもであるにもかかわらず、養育費を支払う必要はあるのでしょうか。
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(1)DNA鑑定の結果だけでは養育費の支払い義務はなくならない
民法772条1項は、婚姻関係にある妻が婚姻中に懐胎した子どもは、夫の子どもと推定すると規定しています。
そのため、婚姻期間中に妻が生んだ子どもは、法律上は夫の子として扱われることになり、夫と子どもとの間に法律上の親子関係が生じることになります。
そして、法律上の親子関係が存在している以上は、たとえDNA関係の結果、実子でないことが明らかになったとしても、その結果だけで養育費の支払い義務がなくなることはありません。
DNA鑑定によって、実子でないことがわかり離婚をしたとしても、何らの手続きもしなければ、法律上は、親子であることには変わりませんので、他人の子であっても養育費の支払いが継続することになってしまいます。 -
(2)養育費の支払いを拒むには法律上の手続きが必要
養育費の支払い義務が生じるのは、父と子どもとの間に、法律上の親子関係があるからです。
この法律上の親子関係を否定しない限りは、養育費の支払い義務がなくなることはありません。
DNA鑑定で実子でないことがはっきりしたのだから親子関係は当然否定されると考えるかもしれませんが、親子関係を否定するためには、法律上決められた手続きを踏んで行う必要があります。
親子関係を否定する手続きは、以下の二つです。その具体的な内容については、後述します。- 嫡出否認の訴え
- 親子関係不存在確認の訴え
2、自分の子どもではないことを公的に認めてもらうには
法律上の親子関係を否定する手続きとしては、嫡出否認の訴え、親子関係不存在確認の訴えがあります。
以下では、それぞれの手続きの内容について説明します。
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(1)嫡出否認の訴え
嫡出否認とは、嫡出子であると推定された子どもについて、その嫡出性を否認することをいいます。
民法772条の規定によって、婚姻してから200日経過した後、または婚姻の解消から300日以内に生まれた子どもについては夫の子どもと推定されることになります。
そうすると、妻が不倫相手との子どもを生んだとしても、法律上は夫の子として扱われることになります。これではあまりに不都合ですので、嫡出否認によって親子関係を否定することを認めたのです。
嫡出否認をするためには、「夫が子の出生を知った時から一年以内に提起しなければならない」(民法777条)とされています。
これが嫡出否認の最大のネックとされています。なぜなら、子どもが生まれてから何年かしてからDNA鑑定をしたところ、実子でないことが判明した事案では、1年の期間制限を徒過していますので、嫡出否認をすることができないからです。
嫡出否認をするためには、当事者が合意しているだけでは足りず、まずは、調停を申し立てなければなりません(調停前置)。
調停手続きでDNA鑑定が行われ、その結果、実子であることが否定され、当事者もそれを争わないということであれば、裁判所が審判によって嫡出否認を認める決定を出します。
当事者が争っている事案では、調停での解決はできませんので、嫡出否認の訴えを起こす必要があります。 -
(2)親子関係不存在確認の訴え
婚姻成立の日から200日以内に生まれた子どもは、戸籍上は夫婦の実子として記載されますが、民法772条の嫡出推定は及びません。このような子どもを「推定されない嫡出子」といいます。
また、民法772条の嫡出推定が及ぶ場合であっても、以下の場合には、推定の及ばない子として扱われることになります。推定の及ばない子とは、妻が婚姻中に懐胎した子でも、夫とは血縁関係がないことが明らかな場合の子をいいます。- 夫が行方不明場合
- 夫が長期間にわたり、海外に滞在していたり、在監中である場合
- 夫の生殖能力が医学的にない場合
推定されない嫡出子や推定の及ばない子との間の親子関係を否定する場合には、嫡出否認の訴えではなく、親子関係不存在確認の訴えを起こすことになります。親子関係不存在確認の訴えは、嫡出否認の訴えとは異なり、期間制限はありませんので、いつでも訴えを起こすこと可能です。
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(3)嫡出否認ではなく親子関係不存在確認の訴えを起こすことができるか
前述のとおり、嫡出否認の訴えをするためには、子どもが生まれたことを知ったときから1年以内に提起しなければならないとされています。しかし、DNA鑑定をしたのが1年を経過した後であったときには、既に出訴期間が経過していますので、嫡出否認の訴えを起こすことができません。
そこで、DNA鑑定によって生物学上の親子関係がないことが明らかであることを理由に出訴期間の制限のない親子関係不存在確認の訴えを起こせるのでしょうか。
これに関しては、平成26年7月17日の最高裁判決によって、以下のとおり、親子関係不存在確認の訴えの方法で父子関係を争うことはできないとされました。夫と子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり、かつ、夫と妻が既に離婚して別居し、子が親権者である妻の下で監護されているという事情があっても、子の身分関係の法的安定を保持する必要が当然になくなるものではないから、上記の事情が存在するからといって、同条による嫡出の推定が及ばなくなるものとはいえず、親子関係不存在確認の訴えをもって当該父子関係の存否を争うことはできないものと解するのが相当である
したがって、嫡出否認の1年の出訴期間が経過してしまった場合には、DNA鑑定によって生物学上の親子関係が否定されたとしても、法律上の親子関係を否定することはできません。
3、離婚までのプロセスと注意点
DNA鑑定で実子でないことが明らかになったときには、妻との離婚を考える方も多いと思います。
離婚までのプロセスと注意点については、以下のとおりです。
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(1)DNA鑑定で実子でないとわかった場合に離婚はできるのか
離婚をするには、まずは夫婦で話し合いをすることになります。話し合いで離婚がまとまらないときには、離婚調停を申し立て、離婚調停でもまとまらないときには、最終的に離婚訴訟を提起することになります。
協議離婚をするときには、どのような理由であってもお互いが合意すれば離婚をすることが可能です。しかし、裁判で離婚をするためには、法定の離婚事由がなければ離婚は認められません。
DNA鑑定で実子でないことが明らかになれば、妻は夫以外の男性と不貞行為をしたことが明らかですので、法律上の離婚理由を満たす場合が多いでしょう。また、妻の有責性も明らかですので、慰謝料の請求も可能になります。 -
(2)離婚が成立するまで婚姻費用の支払い義務がある
DNA鑑定で実子でないことが明らかになり、離婚するまで別居をすることになったときには、妻から請求があったときには、婚姻費用を支払わなければなりません。
もっとも、別居に至った原因が妻の不貞行為にあるのですから、妻側からの婚姻費用の請求が否定されたり、認められたとしても減額されることがあります。これは、自ら婚姻関係破綻の主な原因を作りながら、婚姻費用を請求することは、信義に反するためです。
もっとも、婚姻費用には、子どもの養育費分も含まれていますので、その部分については支払わなければなりません。
4、離婚の法律相談は弁護士へ
DNA鑑定で実子でないことが明らかになったときには、嫡出否認の訴えや離婚などの手続きを行うことになり、それぞれの場面で法律の専門的な知識が必要になってきます。
嫡出否認の訴えには、1年という非常に短い期間制限がありますので、実子でないことを疑いだしたときには、すぐに動き出さなければ親子関係を否定する手段がなくなってしまいます。
離婚にあたっても、DNA鑑定で実子でないことが明らかになった以上は、妻は有責配偶者となり慰謝料を請求することも可能です。基本的には、夫側が有利な立場で進めることができますが、やはり専門家のサポートがあった方が安心です。
信頼していた妻に裏切られ精神的負担も大きいはずですので、煩雑な法律上の手続きについては、弁護士に一任するとよいでしょう。
5、まとめ
DNA鑑定で実子でないことが明らかになった場合、当事者同士では、どうしても感情的になってしまい冷静に話し合いを進めることができません。そのようなケースでは、離婚に詳しい弁護士に依頼し、すすめていくとよいでしょう。
嫡出否認や離婚についてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 立川オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています