コロナ離婚したい! 離婚できるケース、慰謝料などを弁護士が解説
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立川市の公表している統計資料によると、令和元年度の離婚件数は、445件でした。平成27年から令和元年までの統計を比較すると毎年450件前後の離婚件数があることがわかります。
新型コロナ感染拡大を受けて、在宅ワークに切り替えることになったことや休日も外出することができず自宅で過ごす時間が増えたことにより、以前よりも夫婦が一緒に過ごす時間が増えるようになりました。
夫婦で過ごす時間が急に増えたことによって、外出やワクチンに対する考え方の違いなどによってイライラしたり、喧嘩をしたりすることも多くなったという家庭もあるかもしれません。場合によっては、「離婚をしたい」と考える方もいるでしょう。
今回は、コロナ禍で離婚を考え始めた方に向けて、離婚をすることができるケースや慰謝料などについてベリーベスト法律事務所 立川オフィスの弁護士が解説します。
1、コロナ離婚を考える原因とは?
コロナ禍で夫婦が離婚を考える原因にはさまざまなものがあります。以下では、コロナ離婚を考える代表的な原因をいくつか紹介します。
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(1)外出やワクチンに対する考え方の違い
新型コロナウイルスの感染拡大により、マスクや手洗い・うがいといった感染症対策が当たり前の世の中になってきました。日本政府からも外出自粛要請が出るなど気軽に外出することも難しくなっています。
しかし、新型コロナウイルスに対する衛生感や倫理観については人それぞれ考え方が違いますので、夫婦によっては温度差があるということもあります。たとえば、妻としてはワクチンを積極的に接種したいという考え方であるのに対し、夫はワクチン接種には反対ということもあります。また、小さな子どもがいるにもかかわらず、送別会だからという理由で飲み会などに出かける夫に対してストレスを感じる妻もいるようです。
このような新型コロナウイルスに対する夫婦間の意識の差が生じることによって、不満がたまっていくというケースがあります。 -
(2)在宅勤務が引き起こす息苦しさ
コロナ禍での新たな働き方としてリモートワークや在宅勤務を導入した会社も少なくありません。夫が会社員で妻が専業主婦という家庭では、コロナ禍以前は、日中は妻が一人の時間を過ごすことができていました。
しかし、在宅勤務によって夫が日中も自宅にいることになると妻が一人になる時間がないため、それによる息苦しさを感じることがあるようです。広い自宅であれば、別々の部屋にいることでそのような息苦しさも回避することができますが、それができない場合には常に監視されているかのような気がしてストレスがたまることもあるようです。
夫が定年で退職した後は、一緒にいる時間が増えることになりますが、今の時点でストレスを感じている状態では、とても老後を一緒に過ごすことができないと感じて離婚に対する気持ちが高まっていってしまいます。 -
(3)家事格差によるストレス
夫が自宅にいるにもかかわらず、家事を手伝ってくれないということも妻がストレスに感じる理由の一つです。
妻としては、「自宅にいるのであれば少しぐらいは家事を手伝ってほしい」という気持ちであるにもかかわらず、在宅勤務で自宅にいる夫は「自分は仕事をしているのだから、家事は妻がやってほしい」という気持ちがあり、お互いの認識の違いからすれ違いが生じてしまうようです。 -
(4)収入の減少
新型コロナウイルスの影響による解雇や休業で収入が減少したことで、お金をめぐって言い争いが増えて離婚を検討することになったという夫婦もいます。夫としては、働きたくても働けない状況であるにもかかわらず、妻からは遊んでいるように見られてしまい、些細なことでも喧嘩になることが増えてしまうようです。
また、収入の減少を補うために、それまで主婦であった妻が働きに出ることになると、妻には家事の負担と仕事の負担がのしかかることになりますので、それもストレスになるようです。
2、コロナを理由に離婚できるのか?
では、新型コロナウイルスの流行を原因とした上記原因を理由に夫婦が離婚をすることができるのでしょうか。
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(1)協議離婚であれば可能
夫婦が離婚をする方法には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の三種類が存在します。このうち、協議離婚は、夫婦がお互いに話し合いをして離婚をする方法ですので、お互いが離婚に合意すればどのような理由であっても離婚をすることができます。
そのため、コロナ禍で生活を共にしてみて価値観や考え方が合わないなどの理由であってもお互いが離婚に合意できているのであれば、離婚が可能です。 -
(2)相手が離婚に応じない場合には、コロナを理由に離婚は困難
相手が離婚に応じてくれない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。離婚調停は、調停委員という第三者が間に入って離婚に関する争いの調整を行ってくれますが、あくまでも話し合いによる解決手段ですので、お互いが離婚に合意できなければ、調停は不成立になります。
そうすると、最終的には、家庭裁判所に離婚裁判を起こすことになりますが、裁判官に離婚を認めてもらうためには、民法770条1項各号所定の法定離婚事由が存在することが必要です。法定離婚事由としては、以下のとおり定められています。- ① 不貞行為
- ② 悪意の遺棄
- ③ 3年以上の生死不明
- ④ 回復の見込みのない強度の精神障害にかかったこと
- ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由
上記の法定離婚事由の内容からも明らかなように、新型コロナウイルスに対する危機感や倫理観の相違、家事分担の不公平感、長時間一緒に生活するのが苦痛という理由だけでは法定離婚事由には該当せず、裁判官に離婚を認めて頂くことは困難だといえます。
ただ、新型コロナウイルスの流行によって、収入が減ったことについて、配偶者から、「無能」などの人格を否定するような言葉を言われたり、在宅勤務をしている際に「家にいるのが邪魔」などの暴言を吐かれる、などのモラルハラスメントを受けた、などのケースでは、上記の法定離婚事由に該当するものと思われますので、裁判での離婚も可能となるでしょう。
3、コロナ離婚の慰謝料はどうなる?
コロナ離婚をする場合には、相手に対して慰謝料を請求することができるのでしょうか。まずは、離婚と慰謝料の関係を整理していきましょう。
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(1)慰謝料についての基本的な考え方
離婚をすれば慰謝料を請求することができると考える方もいますが、すべての事案で慰謝料を請求することができるというわけではありません。
慰謝料が発生するケースは、相手に不貞行為、暴力・暴言、悪意の遺棄など離婚に至る原因となった行為があったことが必要になります。そのため、性格の不一致による離婚のように夫婦のどちらか一方に明確な離婚の原因があったわけではないケースでは、慰謝料を請求することはできません。
したがって、「一緒にいることが苦痛になったことの慰謝料」という名目で、配偶者に慰謝料を請求することは難しいことになります。 -
(2)コロナ離婚で慰謝料を請求できるのか?
新型コロナウイルス流行の影響を受けた離婚において、配偶者に慰謝料請求の余地があるとすれば、収入が減ったことについて暴言を吐かれた、あるいは、家にいることが邪魔などの人格を否定する発言を日常的に受けてうつ病になった、などの事案に限られます。
家庭内における暴言は、暴力と比べて、証拠が残りにくく、相手方慰謝料支払義務を逃れることが簡単です。
そのため、配偶者によるモラルハラスメント(暴言など)を理由に、相手方に対して慰謝料を請求する場合、客観的な証拠を残すことが重要になります。
モラルハラスメントの慰謝料請求をする際、証拠になるものは、代表的な例として- ① 録音
- ② 医師の診断書
- ③ 通院記録(カルテ)
- ④ LINE等のトーク履歴
- ⑤ 日記
などがあります。
配偶者から暴言を吐かれる場合には、スマートフォン等で全て録音することが賢明です。
また、配偶者からの暴言により、体調を崩した場合、直ちに心療内科等を受診し、医師に診断書をもらいましょう。
さらに、心の傷は、身体の傷と異なり、損害を数値化することが難しいですから、通院の履歴を残し、少なくとも治療費や病院までの交通費など、実費の支出が損害として発生していることを証拠として残しましょう。
加えて、昨今の調停や裁判では、LINEのトーク履歴が有力な証拠と扱われることが多いですので、LINEなどで暴言を吐かれた場合には、全てトークの履歴を保存しておきましょう。
最後に、日記は、自分自身が書いたものですから、証拠としての客観性は録音等に比べて劣りますが、自分自身が配偶者からどのようなことをされたかについて記録しておくことは、弁護士に相談する際に有益な資料になり得ます。
4、コロナを理由に子どもと配偶者の面会を断ることができるのか?
国による第1回・第2回の緊急事態宣言が発令された当時、新型コロナウイルスのまん延を理由に、一方配偶者が子どもとの面会交流実施を拒否する事例が多くみられました。
新型コロナウイルスの流行当初は、新型コロナウイルスのまん延を理由に一方配偶者が面会交流の実施を保留することについて、裁判所もやむを得ないとの姿勢でしたが、ワクチンの開発・接種実施が進んだ昨今においては、上記理由によって面会交流を保留することについて、裁判所が肯定的であるとはいえません。
新型コロナウイルスまん延を理由に面会を保留する場合、緊急事態宣言発令中などのほか、子どもに肺疾患があるなどの特別な事情が必要となるでしょう。
また、新型コロナウイルスが流行しているにもかかわらず、配偶者が飲み会や旅行に出かけたことや、配偶者が人の多い場所に子どもを連れて行ったことが、子どもに対する虐待であるとして、面会交流を拒否する旨の主張がなされる事案も数多く見受けられます。
しかし、それらの行為が虐待であると認定される事案は少なく、そのような理由によっても面会交流を拒否することは難しいでしょう。
5、離婚や慰謝料請求の相談は弁護士へ
コロナ禍での離婚や慰謝料請求をお考えの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)適切な離婚条件で離婚することができる
離婚をする際には、離婚をするかどうかだけでなく、親権、養育費、慰謝料、財産分与、年金分割などの離婚条件を決めなければなりません。どのような離婚条件で離婚するかによって、離婚後の生活に大きく影響してきますので、有利な条件で離婚をすることが非常に重要となります。
弁護士は、離婚の経緯、理由、夫婦の収入などさまざまな事情を踏まえて、最大限に有利な条件で離婚をすることができるように交渉を進めることができます。適切な離婚条件で離婚をするためには、離婚に関する専門的な知識と経験が不可欠ですので、弁護士に任せるのが安心です。 -
(2)相手との交渉をすべて任せることができる
コロナ離婚を検討している方は、相手と顔を合わせて話をすること自体に苦痛を感じている方が多いです。弁護士であれば、ご本人に代わって相手と交渉をすることができますので、交渉に関する精神的ストレスは相当軽減されるはずです。
また、慰謝料請求をする場合には、請求する側で、慰謝料請求の原因となる事実を立証しなければなりません。そのためには事実を裏付ける証拠が必要になりますが、証拠の取捨選択や収集にあたっては、弁護士のサポートが不可欠となります。
調停や裁判の手続きについても弁護士が適切に行ってくれますので、一人で離婚手続きを進めることに不安を感じている方は、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
6、まとめ
話し合いや一時的な別居を通して離婚を回避することができればよいですが、それでも離婚の意志が固いという場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。弁護士に相談をすることによって、離婚をすることができるかどうかだけでなく、どのような条件で離婚をすることができるかを教えてくれますので、離婚後の生活についての具体的なイメージを持つことができます。
離婚後の生活に不安がある状態では、離婚を決断することもできませんので、離婚や夫婦関係についてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 立川オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています