財産分与に必要な預金や財産を隠されたら|離婚前の探し方と法的手段

2025年03月10日
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財産分与に必要な預金や財産を隠されたら|離婚前の探し方と法的手段

離婚時には、財産分与によってお互いが協力して築いてきた財産を分けることができます。しかし、財産分与を請求された方の中には、少しでも多くの財産を手元に残しておきたいという思いから預金や財産を隠してしまう方がいるようです。

もし財産隠しをされてしまったとしても、弁護士であれば調査することが可能です。本コラムでは、財産分与の基本から、共有財産となりうる預金などの財産を隠している疑いがある場合の調査方法について、離婚問題についての知見が豊富なベリーベスト法律事務所 立川オフィスの弁護士が解説します。


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1、財産分与の対象となる預貯金などの財産

財産分与の対象になるのは、夫婦の財産のうち共有財産にあたる部分です。以下では、財産分与の対象になる共有財産と財産分与の対象外となる特有財産について説明します。

  1. (1)共有財産とは|分与対象となる夫婦で築いた財産

    財産分与とは、婚姻期間中に夫婦がお互いに協力して築いてきた財産を清算する制度をいいます。財産分与の対象となる財産は、夫婦の協力によって維持・形成されてきた財産となります。このような財産のことを「共有財産」といいます。

    夫婦が同居を始めたときから、離婚又は別居に至るまでに築き上げられた財産が、共有財産に該当します。別居後に構築した財産は、共有財産にはあたりません。

    共有財産は、財産の名義ではなく、夫婦の協力によって維持・形成されてきたかという実質面で判断されます

    共有財産にあたる可能性がある代表的な例は、以下のものです。

    • 現金
    • 預貯金
    • 不動産
    • 自動車
    • 株式・有価証券
    • 保険(生命保険、年金保険、学資保険など)
    • 退職金
    • 企業年金


    負債については、住宅ローンや教育ローンなど、家族のために借りられたものは「マイナスの共有財産」として財産分与の対象となり、ギャンブルのためなど個人的な目的で借り入れをした借金については、財産分与の対象外となることが多いです。

  2. (2)特有財産とは|分与対象外の個人の財産 

    特有財産とは、夫婦の協力とは無関係に維持・形成してきた財産のことをいい、主に以下のようなものが特有財産に含まれます。

    • 独身時代に貯めた預貯金
    • 親から相続した相続財産
    • 親から贈与された財産

2、相手が隠す預金を法的に探す方法3つ

前提として、離婚調停や離婚裁判で財産分与を行う場合、「その財産が存在している」と主張する側に、財産の内容を示す責任があります。

たとえば、預金の財産分与を受けたい場合、「預金がたくさんあるはずだから口座と額を全部教えろ」と主張することでは足りず、「相手方は●●銀行に口座があるので、別居時の残高を示してください」と具体的な銀行名を示す必要があります。

すなわち、少なくとも口座を保有している銀行名がわからなければ、隠し口座に貯められている預金の分与を受けることは難しくなるのです。

相手が預金を隠している疑いがある場合には、以下のような方法で隠された預金を明らかにすることができます。

  1. (1)任意の開示を求める方法

    離婚調停など裁判所において財産分与の手続きをしている場合、前述のように、少なくとも相手方の保有口座銀行名を指摘する必要があります。相手方は、銀行名の指摘があった場合、当該銀行に保有している口座はすべて開示しなければなりません。

    ただし、提示しなかった場合の罰則等があるわけではないので、相手方がしらばっくれることは可能です。銀行名を開示したにもかかわらず、相手方が口座情報を明かさない場合、以下の手続きが存在します。

  2. (2)弁護士会照会を利用する方法

    相手が任意に財産を開示しない場合や開示した財産の他にも預金が存在している可能性がある場合には、弁護士会照会を利用することによって預金の存在を明らかにすることができる可能性があります

    弁護士会照会とは、弁護士が依頼を受けた事件について必要な調査を行うために利用することができる特別な照会方法であり、公務所や公私の団体に対して必要な事項の報告を求めることが可能です。預金を隠している疑いがある場合には、対象となる金融機関に対して、預金口座の有無を照会することによって隠されていた預金の存在を明らかにすることができます。

    ただし、金融機関によっては弁護士会照会に応じるかどうかを判断する際のガイドラインを設けているところもありますので、弁護士会照会に応じて回答するかは金融機関次第であるという点に注意が必要です

    また、弁護士会照会を利用して相手方の口座情報を調べる場合、少なくとも相手方が口座を所有している銀行名が分かっていることが必要となります。

    照会1件ごとに費用が掛かるため、手当たり次第に銀行に照会を掛けた場合、費用が膨大となってしまうことになります。

  3. (3)裁判所の調査嘱託を利用する方法

    調査嘱託とは、官庁や会社などの団体に対して必要な事項の報告を求めることができる手続きのことをいいます。

    調査嘱託は、裁判所から各機関に対して行われますので、弁護士会照会に比べて、回答に応じてもらえる可能性が高い方法といえます。

    ただし、調査嘱託を利用するためには、その前提として、裁判所に調停、審判、裁判が係属していることが必要になります。さらに、財産分与の場合には、離婚調停や離婚裁判、財産分与請求調停・審判などを家庭裁判所に申し立てる必要があります。

    また、預金の調査のために調査嘱託を利用する場合には、金融機関名だけでなく支店名も特定して行う必要がありますので、「どこかの金融機関に預金を隠しているはずだ」という程度の情報では調査嘱託を利用することはできません。

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3、財産隠しの証拠を自力で見つける事前準備

隠されている預金を特定するためには、預金を特定するための情報が不可欠となります。そのためには、以下のような事前準備をしておくことが大切です。

  1. (1)家の中から通帳を探し出す

    預金口座を開設する際には、金融機関からキャッシュカードと通帳が発行されますので、預金を隠している疑いがある場合には、家の中から通帳やキャッシュカードを探してみるとよいでしょう。

    相手から開示された預金口座以外の口座が見つかった場合には、相手が預金を隠している可能性もありますので、通帳のコピーや写真を撮るなどして証拠に残しておくようにしましょう。

    ただし、最近では、無通帳の口座やインターネットバンキングなどが主流になってきていますので、そのような口座を利用している場合には、家の中の捜索だけでは隠し預金の存在を明らかにすることは難しいでしょう。

  2. (2)郵便物を確認する

    金融機関からDMやお知らせのハガキが届くことがあります。郵便物の送り先の金融機関が預金口座を把握しているところと別の金融機関であったり、別の支店から郵便物が届いたりしたという場合には、把握している預金口座以外にも口座を隠している可能性があります。

    過去の郵便物を見返すなどして隠し口座のヒントになるような情報がないかを探してみるとよいでしょう。

  3. (3)通帳の取引履歴を確認する

    通帳の取引履歴を確認することによって隠し口座の存在が判明することもあります。

    たとえば、把握している預金口座から別の口座に現金を振り込んでいる履歴が見つかった場合において、振込先である口座が把握している預金口座の中に見つからない場合には、他にも預金口座を開設している可能性があります。

    そのため、相手方から過去何年分かの預金通帳を出してもらい、取引内容を精査するということも必要です。

  4. (4)相手方のスマートフォンの画面をチェックする

    最近は銀行や証券会社はアプリ化していることが多いです。相手方の携帯電話を無断で操作することは決して推奨できませんが、相手方が隣にいるときや、スマートフォンが置かれていて画面がオンになっているときに、さり気なく画面を見てみましょう。

    どこかの金融機関のアプリが入っているかもしれません。

4、財産分与トラブルを解決する弁護士活用メリット

財産分与でトラブルになった場合には、一人で解決しようとするのではなく専門家である弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)弁護士会照会や調査嘱託によって隠し財産を明らかにできる

    財産分与をする際には、その前提としてお互いに有しているすべての財産を明らかにする必要があります。相手が財産を隠すなどの行為に及んでいる疑いがある場合には、その財産を明らかにしていくことになりますが、個人ではできる手段が限られてしまいます。

    弁護士であれば、弁護士会照会という特別な照会方法を利用することができますので、それによって相手の隠し財産を明らかにすることができる可能性があります。また、金融機関が弁護士会照会に応じないという場合には、離婚調停や財産分与請求調停を申し立てるなどして、調査嘱託を利用することもできます。

    どのような方法で調停を申し立てたらよいのか、調査嘱託を利用するためにはどのような方法で行えばよいのかなどわからないことがたくさんあると思いますが、そのような複雑な手続きも弁護士に任せれば安心して新たな生活に備えることができます。

  2. (2)財産分与の対象財産の価値を適切に評価できる

    財産分与の対象財産が預金だけであれば、その評価は基準時における口座残高がそのまま評価額になりますので特に難しいことはありません。

    しかし、財産分与の対象に不動産が含まれる場合には、複数の評価方法がありますので、どの評価方法を採用するかによって評価額が大きく異なってくることもあります。少しでも多くの財産を手に入れたいという場合には、財産を適切に評価することが重要となります

    財産の評価方法には、当該財産に応じてさまざまな方法がありますので、適切な評価方法を選択するためには弁護士のサポートが不可欠となります。離婚後に経済的に不安なく生活するためにも、財産分与の問題は弁護士に相談するようにしましょう。

5、まとめ

財産分与において、配偶者が自分の取り分を増やそうと預金を隠す行為は残念ながら珍しくありません。しかし、本記事でご紹介した方法を活用すれば、隠された預金を探し出し、公平な財産分与を実現することは十分可能です。

通帳の調査や郵便物の確認などの自力調査は有効ですが、弁護士会照会や裁判所の調査嘱託といった法的手段の活用には専門知識が必要です。預金隠しの兆候に気づいたら、証拠を自分で集めつつも、早い段階で弁護士に相談することが確実な解決策といえるでしょう。

専門家のサポートを得ることで、隠された財産の発見だけでなく、適正な評価と分与割合の交渉まで一貫して進めることができます。公平な財産分与を実現し、新たな人生のスタートを切るためにも、疑いがある場合はためらわず弁護士への相談をおすすめします。財産隠しをされているときは、離婚問題についての知見が豊富なベリーベスト法律事務所 立川オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています