著作権法違反となる行為はどんな行為? 摘発されたらどうなる?

2022年06月30日
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著作権法違反となる行為はどんな行為? 摘発されたらどうなる?

著作権法は、著作物利用に関するルールなどを定める法律です。

他人が創作した著作物を模倣したり、勝手にインターネット上で投稿・配信したりすると、著作権法違反に該当する可能性があります。著作権法違反を犯した場合、刑事・民事の両面から法的責任を負うことになるので注意が必要です。

今回は、著作権法違反に当たる行為の内容や、著作権法違反について生じる法的責任などを中心に、ベリーベスト法律事務所 立川オフィスの弁護士が解説します。

1、著作権法違反に当たる行為とは?

著作権法では、大きく分けて「著作権」「著作者人格権」「著作隣接権」という3種類の権利が認められています。

著作権法違反に当たるのは、主に何らかの形でこれらの権利を侵害する行為です。

  1. (1)著作権侵害

    「著作権」とは、著作物を財産的に利用する権利で、当初は著作者が専有しています。
    著作権は譲渡が可能であるため(著作権法第61条第1項)、著作者と著作権者が別になっているケースもあります。

    著作権法では、著作権をその利用形態に応じて、以下のように、その権利ごと(支分権)に規定しています。

    ① 複製権(同法第21条)
    著作物を複製する権利です。著作物の一部の複製も、複製となり得ます。

    ② 上演権・演奏権(同法第22条)
    著作物を公の場で上演し、または演奏する権利です。上演・演奏された著作物の録音や録画を再生することも含まれます。
    映画については上映権(同法第22条の2)、公衆送信については公衆送信権(同法第23条)の対象になるため、22条には含まれません。

    ③ 上映権(同法第22条の2)
    著作物を公の場で上映する権利です。映画など、視覚的な著作物が対象となります。

    ④ 公衆送信権等(同法第23条)
    有線放送や、著作物をインターネット上にアップロードするなど、公に向けて送信する権利です。

    ⑤ 口述権(同法第24条)
    言語の著作物を公に口述する権利です。

    ⑥ 展示権(同法第25条)
    美術の著作物または未発行の写真の著作物を、原作品によって公に展示する権利です。

    ⑦ 頒布権(同法第26条)
    映画の著作物(いわゆる映画だけでなく、ゲームソフト等も含まれると解されています)を、複製によって頒布する権利です。

    ⑧ 譲渡権(同法第26条の2)
    著作物(映画の著作物を除く)の原作品または複製物を譲渡し、公衆に提供する権利です。

    ⑨ 貸与権(同法第26条の3)
    著作物(映画の著作物を除く)原作品または複製物を貸与し、公衆に提供する権利です。

    ⑩ 翻訳権、翻案権等(同法第27条)
    著作物について、翻訳・編曲・変形・脚色・映画化などの翻案を行う権利です。

    ⑪ 二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(同法第28条)
    原著作者は、二次的著作物の利用に関し、二次的著作物の著作者が有する権利と同一の種類の権利を有するということを規定したものです。


    著作権者の許可を得ずに、上記の行為を無断で行った場合などには、原則として著作権侵害に該当します。

    ただし、以下に該当する場合には著作権が制限され、例外的に著作権侵害が成立しません

    • 私的使用のための複製(同法第30条)
    • 付随対象著作物の利用(同法第30条の2)
    • 図書館等における複製、記録、提供(同法第31条)
    • 引用(同法第32条)
    • 教科用図書等への掲載(同法第33条)
    • 学校教育番組の放送、教材掲載(同法第34条)
    • 学校その他の教育機関における複製、公衆送信(同法第35条)
    • 試験問題としての複製、公衆送信(同法第36条)
    • 時事問題に関する論説の転載等(同法第39条)
    • 政治上の演説等の利用(同法第40条)
    • 時事の事件の報道のための利用(同法第41条)
    など、同法第30条~47条の10まで規定されています。
    ただし、これらによって著作物を利用する場合には、利用形態に応じて出典を明示することが義務付けられています(48条)。
  2. (2)著作者人格権侵害

    「著作者人格権」とは、著作者に一身専属する人格的な権利で、著作者以外の第三者に譲渡することはできません(著作権法第59条)。

    以下の権利等が、著作者人格権として認められています。

    ① 公表権(同法第18条)
    未公表の著作物を公衆に提供し、または提示する権利です。

    ② 氏名表示権(同法第19条)
    著作物の原作品または公衆に提供・提示される写しについて、著作者の実名または変名(ペンネーム)を表示するかどうかを決定できる権利です。

    ③ 同一性保持権(同法第20条)
    著作物およびその題号(タイトル)を意に反して改変されない権利です。

    ④ 名誉・声望を害する方法での著作物の利用をされない権利(同法第113条7項)


    著作者人格権を侵害した場合、著作権法違反となります。

  3. (3)著作隣接権侵害

    「著作隣接権」とは、著作者や著作権者ではないものの、著作物の流通に関して重要な事業者等に認められた権利です。

    実演家・レコード製作者・放送事業者・有線放送事業者は、それぞれ以下の著作隣接権を専有しています。

    ① 実演家(著作権法第90条の2以下)
    • 氏名表示権
    • 同一性保持権
    • 録音権、録画権
    • 放送権、有線放送権
    • 送信可能化権
    • 譲渡権
    • 貸与権等

    ② レコード制作者(同法第96条以下)
    • 複製権
    • 送信可能化権
    • 譲渡権
    • 貸与権等

    ③ 放送事業者(同法第98条以下)
    • 複製権
    • 再放送権、有線放送権
    • 送信可能化権
    • テレビジョン放送の伝達権

    ④ 有線放送事業者(同法第100条の2以下)
    • 複製権
    • 再放送権、再有線放送権
    • 送信可能化権
    • 有線テレビジョン放送の伝達権


    著作隣接権者の許可を得ずに、上記の行為を無断で行った場合などには、原則として著作権侵害に該当します。

    ただし著作権と同様に、私的利用に該当する場合など、著作隣接権が制限される場合があります(同法第102条)。

2、著作権法違反を犯した場合に生じる法的責任

著作権法違反を犯した場合、刑事罰の対象になるほか、被害者から差止・損害賠償・名誉回復措置の各種請求を受ける可能性があります

  1. (1)刑事責任|刑事罰

    著作権法違反に対して科される刑事罰の内容は、以下のとおりです。

    著作権法違反の内容 刑事罰
    著作権・出版権・著作隣接権の侵害 10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、または併科(著作権法第119条第1項)
    著作者人格権の侵害、著作権・出版権・著作隣接権のみなし侵害など 5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、または併科(同条第2項)
    有償コンテンツの違法ダウンロード 2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、または併科(同条第3項)
    著作者死亡後の人格的利益の侵害 500万円以下の罰金(同法第120条)
    技術的保護手段(コピーガード)の回避装置の譲渡等 3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、または併科(同法第120条の2)
    著作者名の詐称 1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、または併科(同法第121条)
    外国原盤の商業用レコードの無断複製 1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、または併科(同法第121条の2)
    出所の明示義務違反 50万円以下の罰金(同法第122条)
    秘密保持命令違反 5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、または併科(同法第122条の2)

    法人についても両罰規定が設けられており、代表者・代理人・使用人その他の従業者による侵害行為があった場合、最大3億円の罰金が科されます(同法第124条第1項)。

  2. (2)民事責任|差止・損害賠償・名誉回復措置

    著作権・著作者人格権・著作隣接権のいずれかを侵害した場合、被害者から以下の請求を受ける可能性があります。

    ① 差止請求(著作権法第112条)
    著作権侵害コンテンツの回収・配信停止など、侵害行為の停止または予防などを請求されることがあります。

    ② 損害賠償請求(民法第709条)
    著作権・著作者人格権・著作隣接権の侵害によって、被害者に生じた損害の賠償を請求されることがあります。なお、損害額の推定規定が設けられています(著作権法第114条)。

    ③ 名誉回復措置請求(著作権法第115条)
    著作者人格権または実演家人格権を侵害した場合、著作者または実演家から、名誉・声望を回復するために適当な措置を請求されることがあります。


    特に損害賠償請求を受けた場合、賠償額が巨額に及ぶケースもあるので要注意です。

3、著作権法以外の知的財産法にも要注意

著作権法以外にも、知的財産権の保護を目的とする以下の法律が存在します。
商品やコンテンツを開発する際には、各法令に基づく侵害行為に該当しないように、綿密な調査・検討を行うことが大切です。

① 特許法
自然法則を利用した高度な発明を保護する法律です。

② 実用新案法
自然法則を利用した創作のうち、特許には至らないものを保護する法律です。

③ 商標法
商品やサービスに付されるネーミングやロゴなどを保護する法律です。

④ 意匠法
デザインを保護する法律です。

⑤ 不正競争防止法
営業秘密の不正使用など、不正な競争行為を規制する法律です。

4、著作権法違反でトラブルになったら弁護士にご相談を

著作権法違反の責任を問われた場合、刑事罰や損害賠償などによって甚大な損失を被ってしまうおそれがあります。著作権法違反の責任を否定したい場合や、少しでも穏便に事態を収拾したい場合には、弁護士のサポートを受けることが効果的です

弁護士は、知的財産実務に関する知識と経験をいかして、相手方との間で調整・交渉を行い、著作権侵害に関するトラブルの迅速な収束を図ります。依頼者に生じる損失を最小限に食い止められるように、弁護士があらゆる手段を用いて尽力いたします。

他人から著作権法違反の責任を追及された場合には、お早めに弁護士までご相談ください。

5、まとめ

著作権法では「著作権」「著作者人格権」「著作隣接権」という権利が認められており、いずれかの権利を侵害する行為などが著作権法違反に該当します。

著作権法違反の落とし穴は至るところに存在するため、商品やコンテンツの制作・開発等を行う場合や、他人から著作権法違反の責任を問われた場合には、弁護士へのご相談をお勧めいたします。

ベリーベスト法律事務所は、著作権その他の知的財産権に関する法律相談を随時受け付けております。ご自身が制作した商品やコンテンツなどについて、著作権法違反を指摘された場合には、ぜひお早めにベリーベスト法律事務所 立川オフィスへご相談ください

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