法定休日とは? 日曜日とは限らない! 知っておくべき休日の定義
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「立川労働基準監督署 令和5年度 業務案内」によると、管轄している東京都立川市・府中市等の北多摩西部10市には約135万人が居住し、この管内で働く労働者数は51万5017人(令和3年経済センサス活動調査)おられるとのことです。製造業が多く占め、社会福祉施設なども増加傾向にあることがが公表されています。
休日は労働者の大切な権利ですが、企業や業務内容によって休日の日が日曜日であるとは限りません。そもそも、会社の休日が法的に「法定休日」と「所定休日」の2つに分類されることはご存じでしたでしょうか。
なお、法定休日は、1週間のうち1日だけです。たとえば土日が休みの会社では、土曜日と日曜日のどちらが法定休日に当たるかが問題となります。法定休日に当たるかどうかによって残業代の割増賃金率が変わるため、法定休日を正しく把握することは非常に大切です。本コラムでは、法定休日と所定休日の違いや、その他の休日に関する注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 立川オフィスの弁護士が解説します。
1、「法定休日」と「所定休日」とは?
日本では、土曜日・日曜日が休みなど、週に2日以上の休日を設定している会社が多いです。
労働基準法上、週に2日以上の休日が設定されている場合、原則としてそのうち1日が「法定休日」、それ以外の日が「所定休日」に分類されます。
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(1)法定休日と所定休日の違い
労働基準法第35条第1項により、使用者は労働者に対し、原則として毎週少なくとも1回の休日を与えなければなりません。
この労働基準法のルールに基づき、週1回付与される休日を「法定休日」と言います。
使用者が労働者に週2回以上の休日を与えている場合、労働基準法上の付与義務に上乗せして、会社独自のルールとして2日目の休日を付与しているという整理になります。
この場合、週1回の法定休日を除き、残りの休日は「所定休日」に分類されます。
労働基準法32条1項および2項においては、労働者の労働時間は、「1週間について40時間」かつ、「1日8時間」という定めがあるので、この規定をクリアするためには、使用者は従業員に求められずとも休日を週2回与えなければならないことになります。
そのため、労働者は、使用者から週2回の休日、すなわち法定休日と所定休日の両方を与えられていることがほとんどです。
なお、使用者は労働者に対して、週1回以上の休日を与える代わりに、4週間を通じて4日以上の休日を与えることも認められています(同条第2項)。
この場合、4週間の間に付与される休日のうち4日間が法定休日、それ以外の休日が所定休日です。 -
(2)週休2日以上の場合、法定休日はどのように決まる?
週2回以上の休日が設定されている場合、どの休日が法定休日に当たるかは、労働契約や就業規則の定めによって決まります。
たとえば土曜日・日曜日が休みの会社において、就業規則で日曜日が法定休日とされている場合、その定めに従って日曜日が法定休日となります。
これに対して、労働契約や就業規則に法定休日の定めがない場合、日曜日から土曜日の中で当該暦週において後順の曜日が法定休日となります。
たとえば土曜日・日曜日が休みの会社で、労働契約や就業規則によって法定休日が定められていない場合は、土曜日が法定休日です。
なお、4週間を通じて4日以上の法定休日を付与する場合にも、労働契約や就業規則の定めがあれば、その定めに従って法定休日が決まります。
労働契約や就業規則の定めがない場合には、4週間の中で定められた休日のうち、最後の4日間が法定休日に当たります。(例)
2022年5月29日から6月25日までの4週間について、以下の6日間が休日と定められている場合- 6月20日
- 6月21日
- 6月22日
- 6月23日
- 6月24日
- 6月25日
2、法定休日と所定休日の割増賃金率
法定休日と所定休日では、会社から労働者に支払われる賃金の割増率が異なります。
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(1)法定休日|35%以上
労働者が法定休日に出勤・労働した場合、会社は通常の賃金に対して35%以上割り増した賃金を支払わなければなりません(労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。
なお、休日労働が深夜労働(午後10時から午前5時までの労働)にも該当する場合、休日労働の割増率に深夜割増率が加算されるため、割増率は60%以上となります。 -
(2)所定休日|時間外労働に当たれば25%以上
これに対して、労働者が所定休日に労働した場合、休日労働の割増賃金率は適用されません。
もっとも、割増率が必ずしも0になるわけではありません。所定休日の労働であっても、1週間当たり40時間を超える場合には、時間外労働(法定外残業)として取り扱われ、通常の賃金に対して25%以上の割増賃金が発生します(労働基準法第37条第1項)。
なお大企業では、所定休日に労働した結果、1か月の時間外労働が60時間を超過した場合、超過部分の割増率は50%以上となります(中小企業にも2023年4月から適用)。
労働基準法の「大企業」の定義は細かく設定されていますので、ご自身が働いている会社が大企業にあたるか否かわからない場合は弁護士に相談しましょう。
また、所定休日の労働が時間外労働に当たり、かつ深夜労働にも該当する場合、割増率は50%以上(月60時間超の部分は75%以上)となります。 -
(3)休日に働いた場合の残業代の計算例
以下の設例を用いて、休日に働いた場合の残業代を実際に計算してみましょう。
<設例>- 残業代を除いた賃金総額は32万円
- 月平均所定労働時間は160時間
- 土曜日、日曜日が休み(法定休日は土曜日)
- 土曜日に8時間労働した
- 日曜日に8時間労働した(すべて時間外労働に該当)
- 深夜労働、月60時間超の時間外労働はなし
休日に働いた場合の残業代は、以下の式によって計算されます。
残業代=1時間当たりの基礎賃金×割増賃金率×休日に働いた時間数
※1時間当たりの基礎賃金=残業代を除いた賃金総額÷月平均所定労働時間
設例のケースでは、1時間当たりの基礎賃金は2000円(=32万円÷160時間)です。
土曜日は法定休日、日曜日は所定休日なので、休日労働が8時間、時間外労働が8時間行われています。
休日労働の割増賃金率は135%(=100%+35%)、時間外労働の割増賃金率は125%(=100%+25%)です。
上記の各数値を用いると、残業代の総額は以下のとおり計算されます。土曜日(法定休日)の残業代
=2000円×135%×8時間
=2万1600円
日曜日(所定休日)の残業代
=2000円×125%×8時間
=2万円
残業代の総額
=2万1600円+2万円
=4万1600円
3、振替休日や代休にも注意が必要
会社が休日に関する人事・労務管理を行う際には、法定休日と所定休日の区別に加えて、振替休日と代休の取り扱いにも注意が必要です。
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(1)振替休日とは?
振替休日とは、法定休日と労働日をあらかじめ振り替えたことにより、法定休日となった日(当初は労働日)を意味します。
たとえば、以下の設例を考えます。<設例>- 毎週土曜日が法定休日
- 2022年5月14日(土)を労働日とする代わりに、2022年5月13日(金)を法定休日とする振替を行った
- 振替を行ったのは2022年5月9日(月)
この場合、5月13日が振替休日(法定休日)、5月14日が労働日となります。
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(2)代休とは?
代休とは、労働者が法定休日に労働した後、代わりに労働日を休日に変更することを意味します。
たとえば、以下の設例を考えます。<設例>- 毎週土曜日が法定休日
- 2022年5月14日(土)に労働した代わりに、2022年5月17日(火)を休日とした
- 2022年5月17日(火)を休日することを決めたのは、2022年5月16日(月)
この場合、5月14日が法定休日の労働、5月16日が代休として取り扱われます。
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(3)振替休日と代休の残業代の違い
振替休日と代休では、休日労働の割増賃金が適用されるかどうかに違いがあります。
振替休日の場合、もともと法定休日だった日は、振替によって事前に労働日へと変更されます。
そのため、休日労働が行われたことにはならず、休日労働の割増賃金ではなく通常の賃金が支払われます。
これに対して代休の場合、事前に法定休日と労働日の振替が行われません。したがって、法定休日に労働したものとして取り扱われ、休日労働の割増賃金が発生します。
代休取得日については賃金が発生しないものの、会社は労働者に対して、法定休日の割増賃金との差額を支払わなければなりません。
お問い合わせください。
4、休日の取り扱いや残業代請求は弁護士にご相談ください
休日の取り扱いひとつを取っても、労働基準法のルールは非常に複雑です。
特に、割増率の計算は、残業代総額の計算結果を大きく左右します。法定休日と所定休日の違いや、振替休日と代休の違いなどを意識して分析しなければならず、正しい検討には専門的知識を必要とします。
さらに、会社に対して残業代を請求する際には、時間外労働や深夜労働の残業代も正しく計算しなければなりません。また、残業の証拠を確保したうえで、会社に対して根拠のある法的主張を展開することも大切です。
このように、煩雑かつ専門的な残業代請求を行う際には、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、労働基準法違反の有無・残業代の計算・残業の証拠確保などについて、状況にそった的確なアドバイスを行います。また、会社との交渉や法的手続きへの対応についても、弁護士に一任することが可能です。
休日の取り扱いに関するご質問や、会社に対する残業代請求などは、お早めに弁護士までご相談ください。
5、まとめ
法定休日は「日曜日」になるとは限りません。労働契約や就業規則の定めなどによって個別に決まる点に注意が必要です。たとえば、週休2日以上の会社でも、35%以上の割増賃金が発生する法定休日は原則として週1日のみで、それ以外の休日は所定休日となります。
従業員として働く方が会社から搾取されることを防ぐためには、法定休日と所定休日を正しく区別すること、その他休日や残業に関する取り扱いを正しく理解することが非常に大切です。もし何らかの疑問点がある場合には、弁護士への相談をおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 立川オフィスでは、労働問題についての知見が豊富な弁護士が、従業員の方に向けて、勤務先とのトラブルに関するご相談を随時受け付けております。休日や労働時間の扱いがおかしいとお感じになっており、会社に対する残業代請求をご検討されているのであれば、ベリーベスト法律事務所 立川オフィスにご相談ください。
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