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入札談合は逮捕される? 公務員は? 気になるポイントを解説

2021年06月21日
  • 財産事件
  • 談合
  • 逮捕
入札談合は逮捕される? 公務員は? 気になるポイントを解説

令和2年12月、医療用医薬品の入札に関する談合事件で、東京地検特捜部が独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪で医薬品卸大手の3社を起訴したという報道がありました。

国や地方公共団体が行う公共工事や公共調達においては、入札に参加する事業者の間で、価格調整が行われるといった入札談合が行われることがあります。このような入札談合については、重大な違反行為であり、課徴金や刑事罰の対象となるだけでなく、行政処分などさまざまなペナルティを受けるリスクがあります。

今回は、入札談合をした場合にはどのようなリスクがあるのかについて、ベリーベスト法律事務所 立川オフィスの弁護士が解説します。

1、談合とは

「談合」とは、競売や入札に参加した事業者があらかじめ示し合わせて、特定の業者に落札させるために、他の業者は一定価額以上の値をつけない(入札の場合は一定の価格以下の入札をしない)といった協定を結ぶことをいいます。これによって、高い価額での落札や持ち回りでの落札などを行うことができます。そのため、公正な競争を阻害し、利益を不正に分け合うものであるとして、禁止されています。

競争入札には、一般競争入札と指名競争入札、随意契約などの方法があります

一般入札では、どの企業でも自由に入札に参加することができるのに対して、指名競争入札では、発注者側が入札に参加することができる企業をあらかじめ指名することが可能です。

随意契約においては、地方公共団体が競争の方法によらないで、任意に特定の者を選定してその者と契約を締結します。法律上は一般競争入札が原則とされ、例外的に、他の方法で行うこととされています(地方自治法施工令、予算決算および会計令等)が、随意契約や指名競争入札による場合が多いといわれています。

指名競争入札では、入札に参加する事業者が公開されるため、あらかじめ参加事業者が集まって協議をしたり、順番に仕事を請け負えるように同盟を組んだりすることがあります。これによって、談合が生じてしまうのです。

2、どのような法律に違反するのか

民間事業者が談合をした場合には、その内容に応じて以下の法律に違反し、場合によっては刑罰を科されることがあります。

  1. (1)談合罪(刑法96条の6第2項)

    公共工事の入札や公共の競売において、公正な価格を害する目的で、または不正な利益を得る目的で談合をした場合には、談合罪で処罰される可能性があります(刑法96条の6第2項)。

    「公正な価格」とは、入札または競売において、公正な自由競争によって形成されたであろう価格のことをいいます(最決昭和28年12月10日)。「公正な価格を害する目的」とは上記のような意味の公正な価格を殊更引き下げ(競売)又は引き上げ(入札)ようとする意図を意味するとされています。

    「不正な利益」は、談合によって得る金銭その他の経済的利益のことです。落札価格が公正な価格の範囲内であっても、談合金などにより、不正な利益を得ようとする意思があれば、不正な利益を得る目的に当たると考えられています。

    談合罪は、公正な価格を害しまたは不正な利益を得る「目的」で行われた場合に限って処罰される目的犯です。そのため、不当に安く競落したために落札者において手抜き工事をせざるを得なくなることや、行き過ぎた自由競争の結果、業者間の共倒れの事態が生じることなどの悪弊を防止するために、一般の取引観念上是認できる協定を結ぶことは、談合罪の対象から除かれることになります。

    なお、談合罪の法定刑については、「3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金に処し、またはこれを併科する」と規定されています。

  2. (2)競売入札妨害罪(刑法96条の6第1項)

    偽計または威力を用いて、公共の入札や公共の競売において、契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をしたときには、競売入札妨害罪で処罰される可能性があります(刑法96条の6第1項)。

    「偽計を用いる」とは、他人の正当な判断を誤らせる術策を用いることをいいます。虚偽である必要はなく、偽計業務妨害罪(刑法233条)と同様に、計略や策略を講じるなど威力以外の不正な手段を用いることも該当します。たとえば、特定の入札予定者に予定価格を内報する行為も該当します(最決昭和37年2月9日)。

    また、「威力を用いる」とは、人の自由意思を抑圧するような力を用いることをいいます。たとえば、暴行や脅迫を加えて意思を抑圧することや、職権を濫用して意思を抑圧すること、地位・権勢を利用して抑圧することなどが該当します。

    談合罪は、自由取引の範囲で行われた談合が談合罪の対象であり、偽計・威力の手段を用いた談合については、競売入札妨害罪が対象となります

    なお、競売入札妨害罪の法定刑については、談合罪と同様に、「3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金に処し、またはこれを併科する」と規定されています。

  3. (3)贈賄罪(刑法198条)

    公務員に対して、賄賂を供与、またはその申し込みをしたり、約束をしたりした場合は、贈賄罪で処罰される可能性があります(刑法198条)。

    「賄賂」とは、公務員の職務行為と対価関係にある利益のことをいい、金品その他の財産的利益に限らず、およそ人の需要や欲望を満たす利益であれば、すべて賄賂になります。たとえば、謝礼金、菓子折りは当然賄賂にあたりますが、ゴルフクラブの会員権、異性間の情交、就職のあっせん、地位の供与なども賄賂にあたることになります。ただし、社交的慣習ないし儀礼の範囲内にある贈与については、職務行為と対価関係にあっても社会的に是認されるため、賄賂にはあたりません。

    談合にあたっては、公共工事などを有利な条件で受けるために、公共工事を担当する公務員に対して賄賂などの利益が供与されることがあります。このような場合には、賄賂を提供した側には、「贈賄罪」が、賄賂を受領した側には、「収賄罪」が成立することになります

    なお、贈賄罪の法定刑については、「3年以下の懲役または250万円以下の罰金に処する」と規定されています。

  4. (4)独占禁止法違反

    独占禁止法は、不当な取引制限(カルテル・談合)などを禁止し、消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的かつ健全な発達を促進することを目的とした法律です。

    独占禁止法は、「事業者は、不当な取引制限をしてはいけない」(独禁法3条後段)と定めています。そして「不当な取引制限」とは事業者が…他の事業者と共同して…相互にその事業活動を拘束し、または遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいいます(独禁法2条6項参照)。

    「他の事業者と共同して…相互にその事業活動を拘束し、または遂行する」ということの本質は、相互拘束があることと解されています。そして、相互拘束とは、反競争効果のある取り決めに基づいた行動をとることをお互いに認識し認容して歩調を合わせるという意思の連絡が形成される場合に認められます(最判平成24年2月20日参照)。

    入札談合については、典型的な独占禁止法違反行為のひとつですので、入札談合がなされたときには、独占禁止法上のペナルティを受けることになります

    ① 違反行為の排除措置(独占禁止法61条、7条)
    公正取引員会は、入札談合をした事業者に対して、行政処分によって排除措置を命じることができます(独占禁止法61条、7条)。排除措置の内容は、違反行為の個別具体的な形態に応じてなされるものであり、当該行為の差し止めにとどまらず、将来に向けた違反行為の反復を禁じる不作為命令などの予防措置も講じられることがあります。

    ② 課徴金(62条1項、2項、7条の2)
    入札談合を行った事業者に足しては、違反行為の排除に加えて、課徴金の納付が命じられることになります。入札談合は、受注予定者が決めた価格で落札できるように協力するものであり、対価に係るカルテルとして、課徴金の対象です。課徴金の額は、入札談合の実施期間における入札談合の対象となった商品などの売上額に一定の算定率を乗じて計算されることになります。

    事業者や企業が自ら関与した入札談合について、その違反内容を自主的に公正取引委員会に報告した場合には、課徴金が減免されるという課徴金減免制度が適用されることがあります。

    違反行為をした事業者のうち、1番目に公取委に当該違反行為に係る事実の報告・資料の提出を、他の事業者と通謀することなく単独で、調査開始日前に行ったものであって、調査開始日以後に違反行為を行っていないものについては、課徴金は減免されます(独禁法7条の4第1項)。

    同様に2番目に事実の報告・資料の提出を行った事業者は2割減額され、3番目から5番目の事業者は1割減額され、6番目以降は5分の減額となります。ただし、4番目以降の事業者は、公取委によって把握されていない事実を報告する場合に限ります(独禁法7条の4第2項)。

    調査開始日以前に提出する事業者が5社に達しない場合、調査開始日以後、祝休日を除く20日以内(課徴金減免規則5条、2条)に他の事業者の通謀することなく単独で、報告・資料提出した事業者は、調査開始前に報告・資料提出をした業者も含めて5番目以内であり、調査開始後に報告・資料提出した業者の中で3番目以内である場合、1割の減免を受けることができます(独禁法7条の4第3項第1号、3号)。なお報告・資料提出後に違反行為を行っていないこと、報告・資料提出は公取委に把握されていない事実を報告する必要があります。

    上記以外の事業者で、調査開始以後、祝休日を除く20日以内(課徴金減免規則2条、5条)に他の事業者の通謀することなく単独で、報告・資料提出した事業者は、報告・資料提出後に違反行為を行っておらず、報告・資料提出は公取委に把握されていない事実を報告している場合には、5分の減額を受けることができます(独禁法7条の3第3項第2号、第3号)。

    その他、公取委と協議の上、情報提供を行い、事実解明に積極的に貢献した場合などにはさらに課徴金が減額される場合もあります(独禁法7条の5)。

    ③ 刑事罰
    入札談合を行った者に対しては、5年以下の懲役または500万円以下の罰金に処せられます(独占禁止法89条1項1号)。また、両罰規定によって、入札談合を実際に行った者のほか、事業者および事業団体に対しても5億円以下の罰金が科されます(独占禁止法95条)。

    そのほか、法人の代表者や事業者団体の役員が入札談合の独占禁止法違反行為の計画を知りながら、その防止に必要な措置を採らなかった場合や違反行為を知りながら、その是正措置を講じなかった場合には、当該代表者や役員に対しても500万円以下の罰金が科されます(独占禁止法95条の2、95条の3)。

3、公務員が関与する談合の場合

前項は民間の事業者が談合に関与した場合のケースですが、公務員が談合に関与したときにはどのようなペナルティや罰則を受けることになるのでしょうか。

  1. (1)入札談合等関与行為防止法

    入札談合等関与行為防止法は、正式名称を「入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律」といいます。これは、国や地方公共団体の職員が入札談合に関与するという、いわゆる「官製談合」について、入札談合等関与行為を排除するための措置、当該行為をした職員に対する賠償請求、懲戒および入札などの公正を害した職員の処罰について規定しているものです

    入札談合等関与行為防止法が禁止する入札談合等関与行為には、以下のものがあります。

    • 談合の明示的な指示(入札談合等関与行為防止法2条5項1号)
    • 受注者に関する意向の表明(同項2号)
    • 発注に係る秘密情報の漏えい(同項3号)
    • 特定の談合の幇助(同項4号)


    入札談合等関与行為をした公務員は、以下のようなペナルティと罰則を受けることになります。

    ① 損害賠償請求(入札談合等関与行為防止法4条)
    各省庁の長等は、入札談合等関与行為をした公務員に対して、賠償責任の有無を調査のうえ、故意または重過失があるときには、速やかに損害の賠償を求めなければならないこととされています。

    ② 懲戒(入札談合等関与行為防止法5条)
    各省庁の長等は、入札談合等関与行為をした公務員について懲戒事由に該当するかどうか調査しなければならないこととされています。また、この調査の結果については公表しなければならないこととされています。懲戒するかどうかは、任命権者の裁量に委ねられていますが、入札談合等関与行為をした公務員に対する懲戒処分について基準を定めているところもあります。

    ③ 刑事罰(入札談合等関与行為防止法8条)
    公務員が、入札などにより行う契約の締結に関して、その職務に反して入札談合を唆すこと、予定価格その他の入札などに関する秘密を教示すること、またはその他の方法によって、当該入札などの公正を害すべき行為をしたときには、5年以下の懲役または250万円以下の罰金に処せられます。

  2. (2)収賄罪(刑法197条、197条の2、197条の3、197条の4)

    前述のとおり、談合にあたって賄賂を受け取った公務員に対しては、収賄罪が成立します。単純収賄罪の法定刑については、「5年以下の懲役」と規定されています(197条1項)。賄賂が、公務員の不正な行為の対価、あるいは相当な行為をしないことへの対価である場合は、加重収賄罪として、「1年以上の有期懲役」と規定されています(197条の3第1項、2項)。

  3. (3)その他

    入札談合に関与した公務員については、その態様によって民間事業者と同様に競売入札妨害罪や独占禁止法違反の罪に問われることがあります。

4、談合に関与した場合は弁護士に相談

談合をしたときには、各法律によって重い処罰規定が置かれています。また、刑事罰以外にも、行政処分や課徴金の納付などの制裁もありますので、民間企業にとっては、非常に重い制裁となるでしょう。

談合に関与した場合には、課徴金減免制度の適用など、早期に適切な対応をとることによって、その被害を最小限に抑えることが可能になります。そのため、談合に関与したときや官製談合容疑をかけられているというときには、早期に弁護士に相談するようにしましょう

5、まとめ

建設工事の公共事項などで談合を行った当事者に官公庁の役職員が含まれる「官製談合事件」のニュースをときどき耳にすることがあります。法律によって禁止され、処罰の対象とされていますがなかなかなくならないというのが実情です。

談合に関与した場合は、早期に弁護士に相談することが有効な手段となります。そのような場合には、ベリーベスト法律事務所 立川オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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